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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(61) オバマはどこまで不本意男化するか?(090702、青学-2)

2009年07月05日 | 浜矩子語録
妖艶なエコノミスト・浜矩子は2日、青山学院大学・青山キャンパスに立った。
青学設立135周年・経済学部設立60周年・同窓会設立10周年記念事業の公開講演会に招かれたのだ。演題は「グローバル恐慌をどう生き抜くか」副題は「世界と日本のこれからのシナリオ」である。

グローバル恐慌をどう生き抜くか?浜矩子は、
「そのための世界と日本のこれからのシナリオにタイトルをつけるとすれば、新たな夜明けか?永遠の暗闇か?」だと言い、「まさにこれから先が、新たな夜明けに向かって行く歩みになるのか?永遠の暗闇に突入する展開になってしまうのか?ということを規定する要因は、「3つのどこまで」だと断言する。
第一番目の「どこまで」は、「自分さえ良ければ病はどこまで蔓延するかで」であった。
そして、第二番目の「どこまで」は、「オバマ大統領はどこまで不本意男化するか」であるとして、次のように語った。

~・~・~ 不本意男ということで私が言わんとしているのは、「不本意ながら」と言いながら、「私の本意ではございませんが」と言いながら、だんだんだんだん、まずい方向に引っ張られていってしまう人、という意味でございます。
実は私は、オバマ大統領が就任した当初から「不本意男化していってしまうのではないかな」と、気にしておりました。
彼の就任演説は素晴らしいものでしたから、人によっていろんなことが聞こえてきたのではないかと思いますが、私の耳に特に響いてきた一説は、「今や我々は子供じみた振る舞いから決別するべき時が来た」ということでございます。
この言葉は青山学院大学を卒業された方であればすぐにお分かりになると思いますが、聖書からの引用句でございます。新約聖書の中に「コリント人への手紙」という聖パウロの残した言葉がありますが、コリント人(ギリシャ人)に布教をして歩いた聖パウロが、キリスト教に改宗した人たちに残した書簡の前書(コリント人への手紙は第一と第二があり、その、コリント人への第一の手紙)にある一説だったと思います。
ここで聖パウロが言わんとしたことは、キリスト教徒でなかったときの振る舞いを子供じみた行動と比喩して、「今やキリスト教の信者になったのだからして、新しい振る舞いをしなければいけませんよ」と言ったわけですが、そのことを引用してオバマさんが何を言いたかったかというと、明らかに、ジョージ・W・ブッシュ時代の一国主義、市場原理主義、新保守主義。ネオ・コンサーバティズムと言われた、ある意味ではこれら全部ひっくるめて「自分さえよければ病の相当に症状の重いやつだ」と言っても構わないようなものと決別してゆく、「アメリカは、そういうところから遠ざかって行く」ということを彼は言ったわけなのです。
このことは、今登場するアメリカの大統領としてはなかなか素晴らしい見識だなと、私は思ったわけです。
そこが彼の本意であることは素晴らしいことなのでありますが、その本位から、だんだん彼が「不本意ながら」と言いながら遠ざかっていくことが怖いなと思ったわけですが、残念ながらすでに、バイアメリカン条項というものを打ち出したことで、オバマさんの「不本意男化」の第一歩が踏み出されてしまったと言わざるを得ません。

と思っていたところ、先月の1日、GMの破たんの際、その一環として、米国政府がGMの60%の株式を取得し、「GMはガバメントモータースだ」と盛んに報道されましたけれども、この発表の記者会見でなんとオバマ氏が、「我々(米国政府)はGMの不本意な株主となった」と言ったのです。
私が最初から心配していたその言葉を、本人がいみじくも使ってしまった。
英語では リラクタント と言いますが、ご本人の口から reluctant という言葉が出たので、「ざま~みろ」と、私は言いませんけれども「おやおや」という感じを持ちました。

GMという巨大企業を国有化するやり方は、オバマさんとしては決してやりたくはなかった、とは思います。
国有化するということは政府の保護下に入れるということですから、これは愛国清算となってくるのでございましょう。
同時にもっと問題になる側面が今回の(GM)の処理にはあるのです。
それは何かといえば、政府がGMの60%の大株主になったことで、責任上もモノ言う株主になったわけで、「どんな車を造れ」「誰を雇え」「誰から金を借りろ」と、GMのファイナンス子会社に対しても「誰に金を貸せ」というようなことを言っていくことになるわけです。
GMに限ったことではなく、AIGも然り。
このように、「不本意ながら、不本意ながら」と言いながら、オバマ政権の経済政策は次第しだいに統制経済化という方向に動いていく兆候がちらりと見えてきた。この辺も気になるところでございます。

統制経済というやり方はオバマ大統領にとって非常に不本意なはずですが、「不本意ながら」と言いながら、やっぱり引っ張られていってしまいそうな雰囲気が見られ訳でございます。ヨーロッパでもこの傾向はみられます。
経済的戒厳令のようなものをやらざるを得ない状況ではあるが、その方向にいったん扉を開けてしまうと、閉じることは大変難しい。そういう危うい時期にきているわけです。
以上が、オバマはどこまで不本意男化するか?というテーマのお話でした。~・~・~
以下、次節

(3つのどこまで)
第一節 (60) 自分さえよければ病はどこまで蔓延するか?(090702、青学-1)
第二節 (61) オバマは、どこまで不本意男化するか?(090702、青学-2)
第三節 (62)  元の木阿弥化はどこまで進むか(090702、青学-3)
第四節 (63) 地球経済開けゴマ 魔法の言葉(090702、青学-4)

浜矩子語録目次Ⅱ

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