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黛信彦の時事ブログ

迫り来る食料小国の危機! SP

2008年03月10日 | 政治・政局
3月9日、TV朝日サンデープロジェクトで、『迫り来る食料小国の危機!』と題して、家計を直撃する食品値上げラッシュは何故起こるのか、対策はあるのかが問われた。

●穀物価格は『需要ショック』
丸紅経済研究所所長・柴田明夫氏が言う。
「最近までの、米国シカゴの穀物相場は、70年代から、旱魃があれば上がり、治まれば下がるというように、10年単位で周期的な変動を繰り返してきた。即ち、エルニーニョやラニーニャ現象、ミシシッピ川の大洪水のような産地の大雨などが原因で相場が上下したが、長い目で見ると消費者価格は安値で安定していた。又、最近は世界的な異常高温による旱魃もあるが、穀物生産量は増加している。

しかし、『需要ショック』と言われる、新たな需要には追い付けない供給不足が、穀物相場を押し上げている。

需要ショックの要因は先ず、中国、インドなどの人口が増加していることと、それらの国々の食生活の変化にあり、穀物食品の直接需要増は勿論だが、肉・卵などの需要増によって、たとえば卵1kg生産するのに3kg、牛肉に至っては10kgの穀物を必要とするというように、卵や肉の生産者が飼料需要する、間接消費量が増加してきている。
又、バイオ燃料の進化によるエタノール製造増加でも、穀物消費量が増大している。

●食料戦争、輸出規制
TV朝日・寺崎貴司アナがパネルで、穀物の輸出規制に関する世界の動向について次のように説明した。

・小麦生産世界第1位の中国は、07年12月に穀物輸出促進の制度を打ち切り、1月から、小麦、とうもろこし、米、大豆、とその加工食品に輸出関税を
・同じく第2位のインドは、07年10月、小麦・米・乳製品の輸出を前面停止。
・第4位のロシアは07年11月、小麦と大麦に輸出関税を導入。
・アルゼンチンは、06年11月、とうもろこしに輸出規制し、07年3月からは小麦も輸出規制を始めた。
・そのほか、ウクライナ・カザフスタン・セルビア・ベトナムも穀物の輸出規制を行っている。

田原総一郎は、「食料戦争で、金があっても手に入らない次代になってきた」と。
又、中川昭一元農水相は、「中国は、花粉の輸出まで制限している」とも語った。
このように、食料小国日本は、危機に瀕する状況である。

●食料自給率と日本の農政
東大名誉教授・月尾義男氏は、「60年代には80%もあった自給率が39%まで下落した原因は、日本は経済原則、すなわち安ければ輸入すればよいという農業政策をとってきたこがあげられる。今後、食料安全保障政策として根本から変えていかないと解決しない。」と指摘した。

ワタミ社長・渡邉美樹氏も、『日本の農政は、農家を守るが農業を潰している』と、農政のあり方を問う。「例えば穀物三品(米・麦・大豆)で、米にだけ生産・価格調整をかけ、米を保護することで米の生産者を弱くしている。又、農地が流動化されず大規模農業ができない。企業参入したいがさせない、競争をさせない、ということで農家を守る。しかし農業は衰退してゆく。

更に、JAの存在が、農業に経営不在現象を起こしている。JAは兼業農家の味方だが、専業農家にとっては、今は必要ないと思っている。新しい農協のしくみが必要だ。本来行われなければならない競争をさせないことによって日本の農業は衰退している。
農家を守ることで、国民は高いものを買わされることになる。などと述べた。

●マクギャバンレポートと自給率アップ
月尾氏は、「日本の食料自給率は、米を主体にすれば、90%までになる」とし、「嗜好の押し付けはできないが」、77年、フォード大統領が米国人の食生活の改善策について諮問した際、「日本の元禄以前の食生活が良い。玄米に五穀を入れて食べていた。副食は旬の野菜と海草及び近海の小魚。これが世界の理想の食事だ」との、マクギャバンレポートを引き合いにし、これが、アメリカの寿司ブームと世界的な日本食ブームを生んだと説明。

3月9日の産経新聞も『米を食え』『いもを食え』との特集記事を組んだ。

●農業こそベンチャーだ
農水相のデータによれば耕作放棄地は年々増加し、05年では38.6万ha、埼玉県の面積とほぼ同じ面積がある。80年から05年の25年間で、実に3倍に増加したが、その原因は農業従事者の高齢化と労働力不足が原因である。

埼玉県上尾市の永堀吉彦氏は、上尾・桶川・さいたまの三市で、耕作放棄地87箇所45haを開墾して、年間を通じて小松菜を出荷している。
永堀氏は、「自分が、自信をもってトマトを作っても市場で安くなる。原因は、農業市場で「今日は来るけど明日は来ない」と思われる不安定な供給では買い叩かれる。安定供給が高値に通じる。ならば出荷量を拡大したい。そのチャンスを耕作放棄地に求めた。」と語った。

永堀氏は、それをビジネスチャンスにして、農地をどんどん拡げている。農業生産法人・株式会社ナガホリを設立、社員4名、パート150人を擁して、小松菜の生産量日本一を目指す。

そして「農業こそベンチャーだ、農業はこれからだ。しかし、農業再生への切り札と見られる耕作放棄地をビジネス化する難しさは、耕作放棄地を再生させるノウハウが難しいことであり、国はやる気のある若者や大規模農家を支援しないと、自給率はもっと下がる。」と言う。

新潟県上越市の株式会社頚城建設・小池保信社長は、03年から米作りをしている。有機無農薬栽培というブランド米を作り、農協を通さず独自の販路で利益率を上げている。

小池氏は「本業で公共事業受注が減る中、雇用維持したいという前提で、どうせやるなら付加価値をつけた米作りをしたい、と考え上越市(旧頚城郡)の棚田10枚を開墾して手がけた。」と言いつつ、「不安は米価の下落していることと、耕作放棄地を何とかしなければと国は動いているが、せっかく私たちが参入して耕作放棄地を借り受けて開墾しても、いつか減反を迫られるかも知れない」と、不安も抱いている。

●農家個別補償という考え方について
安部内閣までの開放路線は、日本の農業の改革をもたらすものと期待されていたが、昨夏の参院選で民主党が「農家個別補償」を大々的に訴えた。多くの農業従事者の票は、自民党から民主党に流れて、自民党惨敗の一つの原因ともなった。

ワタミ社長・渡邉美樹氏は、ワタミファームで実際農業生産を行っていることから、企業参入や農地・農業行政についても、色々と意見をお持ちのようである。
それに照らすと、弊ブログは、「農家個別補償論は、農家を救うが、農業を潰す」という結論に至る。

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