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白熱電球~スワンとエジソン
自然・科学
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2010年09月25日
今年の春に東芝が白熱電球の生産を中止するなど、電機メーカー各社がLED電球生産へのシフトが進められている。消費者としては、LED電球の低消費・長寿命は皆認識しているものの、まだまだ高価であることから、すぐにLED電球への移行が進むとは思えない。とはいえ今後10~20年くらいかけてLED電球を普及させていかなければならないだろう。
さて、その白熱電球の発明者はイギリスのジョゼフ・スワンである。決してトーマス・エジソンではない。
白熱電球は蓄音機・映画とともにエジソンの三大発明とされているが、そのいずれも先行発明・類似発明があったし、裁判沙汰にもなったという。
志村幸雄氏による
『誰が本当の発明者か』
(講談社)は、発明にまつわる様々なエピソードをまとめておりとても興味深い。
その本の中の白熱電球に関する記述を抜粋してみよう。
白熱電球の実質的な発明者は、英国生まれの化学者ジョセフ・スワンである。
白熱電球の課題は、少ない電気で安定して発行するフィラメント材料を見つけることであった。スワンは、木綿糸を苛性ソーダに浸して繊維に弾力性を持たせ、これを乾燥した後、炭化させてフィラメントとした。またこれをガラス管に封じ込める際には、徐々に真空にしながら加熱してフィラメントの内臓ガスを放出させるなど、徹底した排気処理を施した。
これにより白熱電球の寿命が40時間に延び、本格実用化への足場が築かれた。スワンは1878年にその成果を公開・発表している。
エジソンが白熱電球の開発に着手したのはスワンの発明の翌年の1879年だ。
ある日、エジソンは卓上の扇子を見て、竹がフィラメントの材料になるのではないかとひらめいた。そして竹の産地として知られる日本、中国、マレーなどに人を派遣して竹を採取した。エジソンは日本の京都の竹を細く削ってヘアピン型に曲げ、黒鉛るつぼ中で炭化させた。こうして1880年に真竹を使った白熱電球の製造に成功した。
エジソンは1878年にニューヨークにエジソン電灯会社(GEの前身)を設立し、白熱電球の生産はもちろん、発電から送電までの事業化をはかっている。
エジソンとスワンは特許争いをいく度か繰り返したが、エジソンは争うよりも協力するほうが互いの利益になると判断しエジスワン社という会社を設立し共同事業化を図った。しかし、エジソンが電球の口金を自ら考案したねじ込み式にしようとした際には、スワンは強く抵抗し、自己流の差し込み式で押し通した。以来、英国ではスワン式電球が使われ続け、白熱電球の発明者はスワンと信じられている。
スワンが白熱電球の発明者と呼ばれても少しもおかしくないが、そうならなかった理由は何だったのか。
まず、スワンが薬品工業を経営する余暇に趣味的に研究をしていたことが挙げられる。彼は研究成果を特許にすることも考えていなかった。一方でエジソンは発明に精力的に取り組み、その成果を確実に特許化した。
またエジソンはマーケティングの天才で、マスコミの操縦にも長けていた。白熱電球の発明の際にも、新製品の電球を全身にまとって道行く人を驚かせたと思えば、国内はもちろんヨーロッパの主要新聞の記者を招待して大々的な発表会を開いたりもしている。1889年のパリ万博では、1万個の白熱電球と1500個のアーク灯を組合せた光のショーを繰り広げ、パリっ子の目を奪った。
こうしてエジソンがスワンを呑み込み、電球の発明者としての栄光を独り占めにしたのである。
他にもWeb上に参考になる記事がある。
電気の歴史に関する余話 電球の発明者をめぐる法廷闘争
http://www.geocities.jp/hiroyuki0620785/lamp/edison.htm
スワンはエジソンと和解しているとはいえ、エジソンが電球の発明者であるという後世の認知はスワンにとって不条理極まりない話だ。
しかし、この本によると同様な事例は数多くあり、ゆえに発明の歴史が「人と金と裁判の歴史」といわれるということを紹介している。
白熱電球は21世紀中には世の中からなくなってしまうかもしれないが、その発明を巡るスワンとエジソンのエピソードは正しく後世に伝えよう。
発明の世界において、エジソンは何かと「えらい」人だったようだ。そんなのは常識だ。いつだって忘れてはいけない。
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