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一念発起して起業しようと考えた時に、世界に名だたる企業に成長させようという目標もあれば、一族で子孫代々事業を営もうといういう目標もあるだろう。どちらも崇高な目標である。
後者のような運営をしている企業に注目し、いろいろと調べてみると、そのような伝統企業で構成される「エノキアン協会」という国際組織があることを知った。

エノキアン協会
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%8E%E3%82%AD%E3%82%A2%E3%83%B3%E5%8D%94%E4%BC%9A

エノキアン協会(エノキアンきょうかい、フランス語: Les Hénokiens)は、1981年に設立された経済団体で、家業歴200年以上の企業のみ加盟を許される老舗企業の国際組織。フランスのパリに本部がある。
エノキアンとは、エノク(Henok)に住む人びとという意味である。エノクとは『旧約聖書』に記された人物の名であり、また、世界初とされる都市の名でもある。人物としてのエノクはアダムの孫にあたり、365歳まで生き、ノアの大洪水の前の家長であった。多くの子孫を残し、神とともに栄えて、史上初の都市の名には彼の名が与えられたとされている。エノクには「始まり」という意味もある。協会名のエノキアンは、このような歴史と伝統、および繁栄にちなんでつけられた。
協会への加入資格は以下の4点である。
1. 創業以来200年以上の社史を持っていること
2. 創業者の子孫が現在でも経営者、もしくは役員であること
3. 家族が会社のオーナーもしくは筆頭株主であること
4. 現在でも健全経営を維持していること


現在40社で構成されており、国別の内訳は、イタリア14社、フランス12社、ドイツ3社、オランダ2社、北アイルランド1社、日本5社、ベルギー1社、スイス2社だそうだ。それでは実際にそのいくつかを見ていこう。

日本は老舗大国で1.の200年の歴史をもつ企業が3,000あると言われているが、2.~4.を満たす企業というのはなかなかなく、例えば世界最古の企業として有名な金剛組(578年創業・寺社建設)もこの条件を満たさない。

「法師」(有限会社善吾楼)は石川県粟津温泉の旅館で創業は718年。現存する世界最古の宿泊施設としてギネス認定されており、エノキアン協会の中でも最古の企業である。現在は46代目にあたるそうだ。是非訪ねてみたい温泉宿だ。

法師
http://www.ho-shi.co.jp/
http://www.ho-shi.co.jp/history.html



その他の加盟日本企業は「とらや」(1530年創業、「月桂冠」(1637年創業)、「赤福」(1707年創業)など和菓子や酒造の会社が名を連ねる。そしてもう1社がちょっと異質であり、「岡谷鋼機」(鉄鋼・機械商社、1669年創業)は、名証1部に上場している会社である。

岡谷鋼機株式会社
http://www.okaya.co.jp/
http://www.okaya.co.jp/company/about/

連結で4,340名もの従業員を抱え、海外18ヶ国に事業展開している。代表取締役社長は岡谷篤一氏で、創業者の子孫の方である。上場企業なので決算短信・有価証券報告書なども開示されている。340年の歴史を持つ企業の財務諸表にはとても重みがある。

日本以外は全てヨーロッパの企業であり、ワイン、ガラス製品、宝石などの企業が名を連ねるが、いくつか特徴的な企業を見てみよう。

スイスのピクテ銀行(Pictet & Cie、1805年創業)は、ヨーロッパ最大級の資産運用会社のプライベートバンクである、世界中の富裕層や王族の資産を預かり、預かり資産額は3840億米ドルにも及ぶという。日本でもピクテ投信投資顧問株式会社が事業展開をしている。

SEVEN HILLS (ニュー・ラグジュアリーの為の高級ポータルサイト) Business & Money
http://www.sevenhills-premium.com/business/bank/pictet.html

ベルギーのD'Ieteren(1805年創業)も特筆すべき規模を誇り、ベルギー国内でのVolkswagen, Audiなどの車の販売に加え、AvisやBudgetといったブランドでレンタカーを112ヶ国で展開し、また28ヶ国で事業展開する世界最大のガラス修理会社でもある。60億ユーロもの売上があるという。

D'Ieteren
http://www.dieteren.com/Splash/en-en.aspx
http://en.wikipedia.org/wiki/D%27Ieteren

そして、おそらくエノキアン協会の中で最も変り種と言えるのは、イタリアのベレッタ社(Fabbrica d'Armi Pietro Beretta S.p.A.、1680年創業)だろう。業種は軍需産業、事業内容は銃器の製造・販売だ。

ファブリカ・ダルミ・ピエトロ・ベレッタ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%BB%E3%83%94%E3%82%A8%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%BF
Beretta
http://www.beretta.it/

ベレッタ社の設立は公式な記録では1680年であるが、それ以前からベレッタ家は銃器の製造を行っていた。最も古いものでは1526年にヴェネツィアがマエストロ・バルトロメオ・ベレッタ(ここでの「マエストロ」は名前ではなく“親方”の意で敬称)に対しマスケット銃を注文したという記録が同社に保管されている。
ピエトロ・ベレッタ(1791年-1853年)はベレッタ社の中興の祖と言われる。ピエトロはベレッタ社の生産設備を近代化し軍用、民間用のマーケットで成功に導いた。
第一次世界大戦中、ピストル不足に悩むイタリア軍からの発注でM1915を開発。これをきっかけにイタリア最大の拳銃メーカーとなる。
1934年にはM1934がイタリア軍の制式拳銃として採用される。第二次世界大戦ではイタリア軍に武器を供給したが、イタリア政府降伏後、一時的にドイツに接収される。終戦後、残った部品を集めM1934の生産を再開した。
1956年のメルボルンオリンピックのクレー射撃でベレッタ社の銃が初めて金メダルを獲得。その後オリンピックや世界選手権で数多くのメダルを勝ち取っている。
1985年にはアメリカ陸軍がコルトM1911A1の後継拳銃にM92FをM9として制式採用する。




アメリカ陸軍が他国製でありながら採用しているくらいなので、その性能は折り紙つきと言えるのだろう。銃はルパン三世のワルサーP38ぐらいしか知らなかったが、思いがけず知識を加えることになった。
どのような業種であれ、200年を超えて継続する企業には、こだわりと柔軟性のバランスの良さを感じる。エノキアン協会に加盟する企業には深い尊敬の意を表したい。


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