A Single Woman

洋画、本の完全ネタバレレビューブログ ※作品を観る前、読む前の閲覧厳禁※

ボーイズ・ドント・クライ Boys Don't Cry

2012年11月30日 | 映画
 1999 アメリカ Boys Don't Cry 118分(PG-12)


 ■あらすじ■

 ネブラスカ州リンカーンに住むブランドン(ヒラリー・スワンク)は、身体的には女性ながら本人の性自認は男性であり、服装や日頃の行いからみても実際にそのようにしか見えない人物である。
 軽犯罪を犯したために街を出る必要に迫られたブランドンは、フォールズタウンという街でジョン(ピーター・サースガード)とトム(ブレンダン・セクストン3世)という二人のならず者に出会う。ブランドンはジョンの愛人の娘ラナ(クロエ・セヴィニー)と恋に落ちるが、ある事件がきっかけでブランドンが身体的に女性であることが明らかになってしまう。


※※以下ネタバレを含みます※※


 ☆ 感想 ☆

 キンバリー・ピアース監督作品。鑑賞したのは結構前なんですが、ブログを始めたので感想を書きます。普段は娯楽系映画しか観ないのですが、自分が変われた気がした、私のターニング・ポイントになった映画です。鑑賞して絶対に損はしないけど、損をした気分にされられます…。私のトラウマ映画、正直もう見たくない映画第1位です。

 というのも、この映画は1992年にアメリカのネブラスカ州リンカーンで実際に起きた『ブランドン・ティーナ(本名:ティーナ・ブランドン)殺人事件』を元に制作されました。なので、見終わった後に凄く戸惑いました。たった100分なのに完成度が高くて映画の脚本自体はよく練られてるなー、と感慨深く感じたのですが、これが実話であるという無視出来ない事実に感動した、だなんていうと本当のティーナ・ブランドンさんに失礼な気がして気が咎めました。見終わってすぐは、あまりに衝撃な結末に涙で溢れるというよりは唖然としました。しかし、程なくして寝る前になると最後のジョンとトムが乗り込んでくるシーンがフラッシュバックしたり、ブランドンさんの境遇を思い、1ヶ月近く不眠症になりました。それくらい私にはトラウマになった映画です。

 同時に、ヘイトクライム(憎悪犯罪)やLGBTの方々や活動に関わっている方々についてもっと考えたい、と自分の中でターニング・ポイントになった映画でもあります。

 印象に残っているシーンは、ブランドンの本当の性がバレて、ジョンとトムに姦淫されます。そのことをラナとラナの母に話すと、ラナの母は周りに嘘をついていたブランドンが許せないけど、姦淫したジョンやトムのことは訴えるべきだとブランドンに言います。そして警察に行くのですが、事のいきさつを話し、《警「なぜ女性なのに男性の格好をしてるの?」 ブ「性同一性障害なんだ。」 警「それはどういうこと?」 ブ「…。」》となったシーンです。彼は必死になって男性として生活しようとしていたのに、完全否定された瞬間です。もちろん警察にも悪気はありませんが、これにはかなり傷ついたと思います。

 ラナさんという女性は彼が女性であるという事実を知ってからも彼を愛します。ブランドンさんは、ただ好きな女性と普通に男性として生活し、一緒に歳を取りたいと思っていただけのはずです。しかし、今から20年前の田舎町を選んだというのが彼に大きな悲劇を生みました。今年のアメリカ大統領選挙でも田舎のほうではロムニー派が多数だったことから分かるように、まだアメリカの田舎は保守的ですから、当時なら相当だと思います。唯一幸せだと言えることがあるのならば、ラナさんが最後までブランドンさんを男性として見て、男性として愛したことだと思います。この二人はとても勇敢です!

 この映画を境に『クィア・アズ・フォーク(Queer As Folk)』や『アナザー・カントリー(Another Country)』、『モーリス(Maurice)』、『シングルマン(A Single Man)』などの映画を観ました。それに映画やドラマを観ていると思っているより多くクィアの方々が出演、またはそういった役を演じていることにも気付きました。(ちなみに私はマット・ボマー(Matt Bomer)の大ファンです。彼の告白には全く驚かなかったどころか、その勇気ある告白に、寧ろより好きになりました。最近マットがゲイであるがためにスーパーマンの映画の企画が無くなったという記事を観て、ガッカリしました。他にもマットは『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(Fifty Shades of Gray)』の映画化でクリスチャン・グレイ役の最有力の一人ですが、彼がゲイであることを制作側は気にしている、といった記事もありました。彼は役者です。プライベートと仕事が混同している演技を見せたことは無いです。だから役者としてどうか、といった判断をしていただきたいと思います。)クィアという運命に生きる人々が、残酷で冷たい世間を目の当たりにします。その中でもやはり『ボーイズ・ドント・クライ(Boys Don't Cry)』ほど悲しく、胸が裂ける思いになる映画はありません。

 鑑賞し終わった後、正直かなり打ちのめされます。ですが、辛く冷たい世間を目の当たりにしながらも自分たちの気持ちを貫く勇敢なブランドンさんやラナさんの姿やこのような起きてはならない犯罪があった事実を忘れないためにも、一生のうちに一回は観ていただきたい映画の一つです。


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