トムのお気楽日記

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書評 「不自然な死」ドロシー・L・セイヤーズ

2005-09-23 04:49:09 | ミステリー
Unnatural Death  Dorothy L.Sayers
日本では人気、評価ともに低いセイヤーズだが、P・D・ジェイムズ(彼女も人気は高くない)にハマった自分が、彼女が影響を受け、リスペクトしているセイヤーズを読もうと取りあえず1册借りてきた。
「不自然な死」はセイヤーズの3番目の長篇で、ジェイムズが言うところの「パズルからノヴェルズへ」に照らし合わせるとパズル小説(本格推理小説)と言っていいだろう。
この作品はフーダニット(誰が犯人か)ではなくハウダニット(どうやって殺したか)、あるいはフワットダニット(なぜ殺したか)がテーマの作品。犯人は、かなり最初に明らかになるが(実は、それが違うという仕掛けをするケースも多々あるが)その動機、方法はなかなか興味深い。
方法については日本の某男性作家(自分は大好き)が戦後直ぐに同じやり方を書いているが、1927年の作品でセイヤーズが人気があまりない事を考えると、偶然一致したのか?
あと表紙(創元推理文庫)は見ない方がいいかも。
動機については1925年に改正された法律の解釈が大きな部分を占め難解に感じるが、読んでいるとスラスラと頭に入り、分かりやすく説明してある。
あるトリックについては、リアリティにやや欠けるかもしれない。
探偵役のピーター卿は、この作品では魅力的な人物には書かれていない(後年のノヴェルになった時はどうなのだろう?)
また、イギリスの推理作家特有の引用僻(シェイクスピア等)は好きではないが慣らされたw
非常にストーリーテリングが上手く、結末も意外性に富み、推理小説としてはかなり良い作品だ。

ジェイムズのセイヤーズ評では、この作品にはそっけないが、「不自然な死体」(Unnatural Causes)は明らかにこの作品を意識した題名だし、痕跡を残さず自然死と見せかける殺人というのも両者に共通している。なんだかんだ言っても、この作品の影響力は強いのだろう。

87点