レポピ - Piano Lesson Report

埼玉県上尾市&桶川市にある「たかすぎ音楽教室」(ピアノ・声楽・ソルフェージュ・楽典)のレッスン風景をつづります。

カルメンの「ハバネラ」

2007年01月30日 | レッスン

純さんのお宅にピアノ・レッスンにうかがいました。

使用しているテキスト、橋本晃一編「シニア・ピアノ・レパートリーA」(ドレミ楽譜出版社)が昨年末におしまいになり、つぎは同シリーズの「B」に取りかかりました。曲の難易度はあがりましたが毎回3曲ほどを見ていただき、1~2曲はマルになります。これは毎日コツコツと練習をつづける成果です。

ご家族の方とお会いするたびに、「毎日、ポロンポロン弾いているみたいですよ」、「こんなにつづくとは思っていませんでした」と驚いていらっしゃいます。
でも音楽は、一生つきあえる友だちですから。

今日はビゼーの歌劇「カルメン」から、有名な「ハバネラ」を見ました。
ニ短調で書かれています。調号は「シ♭」です。途中で同主調(おなじ主音をもつ長短調の関係)のニ長調に譜面ごとかわります。調号は「ファ」と「ド」にシャープです。

純さんは音符を正確に読むことができ、調号にも柔軟に対応できます。ただし今回は「レ」の音をめぐる長調と短調が登場し、おたがいによく似ているにもかかわらず鍵盤上はかなり異なる転調であるため、とくに後半のニ長調の「ファ♯」をうっかり落として弾いてしまいます。たびたび弾きおとしてしまう調号は音符をマルでかこみ、視覚的な注意をうながしておきます。

リズムの心配は杞憂だったようです。
2分の2拍子で、4分音符+8分休符+8分音符+4分音符+4分音符「ター・ンタ・タン・タン」の伴奏リズムがつねに左手で鳴っています。こうした舞曲に特徴的なリズム型の反復はメロディとのかねあいから、かなり弾くのがやっかいになることがあります。右手と左手が、まったく独立した動きになることがあるからです。
純さんはよくリズムを理解し、右手の動きにつられてリズム型がくるうこともありません。

右手のメロディは、最初に半音進行です。恋多き情熱的なカルメンの歌ですから、その妖艶さを半音階の下行形であらわしています。
「レ-ド♯-ドのナチュラル-シのナチュラル-シ♭-ラ-ソ♯-ソのナチュラル」と、上の「レ」から下属音「ソ」までさがってきます。指づかいは「5-4-3-4-3-2-1-5-4-3」となります。「3-4」、「1-5」といった2箇所の指かえがポイントになります。大切なことは手や鍵盤を見て、指かえをしないこと。おなじ音(鍵盤)にべつの指をおきかえるだけなので、指さきの感覚だけでやってしまいます。

半音階を弾くとき純さんに気をつけてもらいたいのは、指さきをすこし立てることです。鍵盤と手のひらのあいだが近づけばちかづくほどピアノは弾きづらくなります。指さきも外へながれて、ジャンケンでいう「パー」の手になってしまいます。「パー」の手は、指さきが放射状に外側へむき、まっすぐ位置している鍵盤をとらえづらくなります。またとくに半音階の場合、もっともちいさな幅で各指が黒鍵の上を通過することが多くなります。そうしたとき、ひらたい手だと、指が黒鍵の溝にはまりこんでしまい、移動しづらいのです。

純さんが弾きにくがっていたのは、メロディの最後の「ソ♯-ソのナチュラル」という箇所でした。指づかいでは「4-3」、鍵盤の色では「黒鍵-白鍵」となります。3の指を「ソのナチュラル」にのせたいのに、すぐ近くの「ファ♯」の黒鍵がじゃましてうまくゆきません。これは指さきをすこし立てて、手のなかを丸くたもち、鍵盤と手の距離をとることでかなり解消されます。

左手の伴奏形は前半も後半もかわりませんが、調性が異なるために弾く音が若干かわり、そのため後半ではかなり幅ひろく手を動かす必要が出てきます。
最初の「下のレ-ラ-上のレ-ラ」は前半とおなじです。
「下のレ-シ-上のミ-シ」はやっかいです。はじめの「5-2」の指がとどきません。ここはとどかせようとがんばりすぎず、もっともコンパクトな動きで、最短距離をとおるつもりで「下のレ」から「シ」へジャンプします。「シ」に着地した2の指を基軸として、手首を高音域の側にふると、1の指で「上のミ」にとどきます。帰りは2の指の軸をぶらさずに、もと来たコースをたどっていきます。指どうしの幅だけで処理しようとせず、2の指の軸を利用して手首を回転させながらひろい音程を行ったりきたりするのです。
たいへんですが、慣れると手首をすこしひねるだけで1フレーズまるごとが弾けるようになります。

ニ長調の後半にはいって、カルメンのソロとコーラスの合いの手が交互に登場して、応唱のかたちをとります。カルメンのソロの部分は「p ピアノ」が指定されています。コーラスは「f フォルテ」です。ピアノの譜面には歌詞が書いてありませんし、おなじような音符がならんでいるので原曲を知らないと、この部分の「p-f」のコントラストの意味がわかりにくいかもしれません。

純さんには、ざっと状況を説明しました。ソロとコーラスの区別がつきやすいように、楽譜のコーラス部分を鉛筆で四角くかこみました。ブロック単位で表現をパッときりかえます。

曲が仕上がるまでに、あと1・2回のレッスンが必要だと思いますが、最初の段階としてはじゅうぶんだと思いました。あとは技術的なポイントをよくさらって、とくに左手の伴奏が自動的に弾けるようになると、かなりスムーズに弾けるようになると思います。(こうき)

レッスン日 2007年1月29日(月) 11:30


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