地域自治組織とまちづくり委員会

都市内分権のための地域自治区と住民組織としての「まちづくり委員会」の組織の作り方についての研究と情報交換

第一部 飯田市の地域の概観

2006-05-11 22:17:21 | Weblog

(1) 飯田市の地域の概況

飯田市の地域は今まで、18の地域で構成されていたが、昨年の南信濃村、上村の2村の合併で、20地区となっているが、新たに編入された2村は「特例自治区」となっているので、ここでは、検討の対象から除き、行政タイプとして組織された18地区についてのみ、住民世帯数の概要を見たい。
戦後の合併前の飯田市は5地区に分かれ、地区公民館が作られているが、支所は置かれず、本庁の地域振興係が他の地区の支所の役割りをしている。
他の地区は合併前の旧町村を単位として、市役所支所と地区公民館が行政機関として置かれて来た。さらに、上郷、鼎などの大きな地区は、合併以前の公民館活動の実情を引き継ぎ条例で決められた「条例分館」が組織され、補助金が支給されている。
このようにして、合併前の町村の組織を引きついでいるため、その組織と活動の形態は多様である。
それを前提にして、各地区の世帯数を見ると。
            (平成16年度概数)
橋北(旧市)1,656   橋南(旧市)1,365
羽場(旧市)1,365   丸山(旧市)1,487
東野(旧市)1,346   座光寺   1,477
松尾     4,123   下久堅    960
上久堅     552    千代     652
竜江     1,000    竜丘     2,156
川路      717   三穂       434
山本    1,631   伊賀良    4,279
鼎     4,855   上郷    5,029

となっており。
これを見ても判るように各地区の世帯数は、三穂と上郷では、12倍近い世帯数の差がある。当然、人口差も同じで、高齢化率も相対的に小さい地区ほど高い。一方、自治会加入率及び、組合加入率は世帯数の大きい地域ほど低い。
特に、組合加入率はアパートの多い地域程低く、上郷地区の組合未加入率は30数%近く、一部の単位自治会では40%に近い。
自治組合を通じて配布されている広報などは、基本的には組合加入者以外には「リサイクルカレンダー」、公民館「かんぽう」以外は配布されず、広報などの必要な住民は、支所まで取りにくるか。ホームページで見るようにとされており、住民に対する行政の情報伝達について、とくに、高齢者世帯への差別が生じている。
地域間格差は、地域の歴史、文化、産業構造により生まれたものであって、止むを得ない面があるとはいえ、新らたに発足する地域自治組織の一翼を担う住民組織のあり方が問われることになろう。
新組織の「まちづくり委員会」(仮称)は、その地域の歴史、文化、産業、地域の伝統的実情に根ざしたものとしたものとはいえ、今回の地域組織の組織化を、これらの組合未加入問題を改革する機会とすることが必要となろう。

(2)上郷地区の自治会の現状

そこで、私も住民の一員で、飯田市で 一番大きな地区の上郷地区の自治会の現状を見てみよう。
    (16年度末 自治会総会資料より)

上黒田自治会   組合加入者    418
          組合外      103
          合計自治会員数  521
            協力事業所     42

下黒田東自治会   合計自治会員数  556

下黒田北自治会   合計自治会員数  785
          協力事業所     26

下黒田南自治会 
組合加入者    480
               組合外       200
              合計自治会員数  680                         協力事業所     28 

別府上自治会  
組合加入者    209
              アパート      15
              合計自治会員数  224

別府下自治会   組合加入者    307
              組合外、アパート 97      
                   合計自治会員数  404
              協力事業所    108

北条自治会    組合加入者   239
              組合外、アパート138                         合計自治会員数  377
                   協力事業所     30

飯沼南自治会  組合加入者   240
              組合外、アパート 65
              合計自治会員数  305
              協力事業所     44

丹保自治会    組合加入者   209
              組合外、アパート 74                         合計自治会員数  283
              協力事業所     11

南条自治会    組合加入者   202
              組合外、アパート 17
              合計自治会員数  219

          上郷地区総自治会員数 4,350                           総協力事業所   289     
  (上郷総世帯数 5,029 組織率 86.7%)

(3)飯田市の行政の部課が事務局を勤め、市の支援を受ける、住  民組織連合会組織の概要
(名称は通称、連合会か協議会か不明なのは協議会とした)

飯田市自治協議会連合会(庶務課地域振興係)
飯田市中央公民館、地区館長会(教育委員会)
飯田市環境衛生組合(環境保全課)
飯田市社会福祉協議会(福祉課)
飯田市自主防災会(防災交通課)
飯田市交通安全会(防災交通課、飯田警察署)
飯田市防火防犯委員会(防災交通課)
飯田市消防団(防災交通課、消防署)
飯田市民生児童委員協議会(福祉課)
飯田市保護司協議会(福祉課)
飯田市少年補導員協議会(防災交通課)
飯田市保健推進員協議会(福祉課?)
飯田市青少年健全育成会協議会(?)
飯田市人権擁護委員協議会(?)
飯田市体育指導員協議会(教育委員会)
飯田市遺族会連合会(?)
飯田市日赤奉仕団(防災交通課)
日本赤十字社飯田市地区(防災交通課)
共同募金会飯田支会(福祉課?)
飯田市婦人団体連合会(?)
飯田市老人クラブ連合会(?)
 (この他にボランテア協議会などがあるが、詳細は要調査)

これらの組織がいわゆる縦割り組織と言われるもので、会長など、役員が固定化し、「上意下達」の意識が強く、一部の組織は形骸化し、事業も現場と結びついていないため、社会の変化に拘わりなく、前年事業をその儘に踏襲している組織もある。
したがって、地区の下部組織も、地域の問題に自主的に取り組むよりも(上郷のように古着リサイクル活動などもあるが)、とちらかと言えば、上からの指示を待っている例が多い。
また、上部の役員も上からの提案が意見なしに決定されることが会議の成功と考える意識が強く、下からの意見を汲み上げようという意識は少ない。
そのため、総会などは、方針伝達行事化しており、これは、上部から下部まで共通している。
縦割り組織の弊害はここにあり、そのため、上からの指導を住民は上からの押し付けと考え、自然に、参加者が少なくなって行き、役員になると会議ばかりで忙しく、なり手がなくなる。
また、自治組合のような基礎組織の組長(公民館部員、衛生担当)などは年齢などに関係なく順番で決めるようになる。その結果意欲のある若い人がいても、組長になることはなく、80過ぎの高齢者のみの世帯では順番で回ってくる組長などの役を出来ないから、組合を抜けるという例も起こってくる。
飯田市公民館長会では、この問題を「住民の地域帰属意識が薄くなった」としているが、ここにも、上意下達意識が問わず語りに見られる。地域住民としての意識が希薄になったのではなく、地域活動システムの硬直化が主な原因となっている。
この点で、飯田市自治基本条例(案)が、高齢者世帯の自治活動への参加のあり方への配慮を求めているのは、評価されるが、実際には掛け声だけで、現場では依然として、従来の慣例を変えようとはしていない。
地域自治区による分権と「まちづくり委員会」への縦割り組織の再編を、単なる組織いじりにすることなく、住民の意識、特に役員の意識改革が重要となるのではないか。
最近の新聞によれば、飯田下伊那の人口はどんどん減少しているという。
市長のいう、自立度を高め、若者が定着できるような地域、都会に出て都市生活に馴染んだ若者が夢と希望を抱いて帰れるような地域をどう創るかという、飯田市の今後の課題は重く、複雑であり、地域のあり方の改革と意識の改革が必須の条件となろう。     
   



1 コメント

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Unknown (hakoshige)
2014-05-28 08:55:55
はじめまして。同じ飯田市に住むものです。

数年前この地に引っ越し町内会(組合)に入会する事になりました。入会後しばらく約款が配られなかったのですが入会から2年越しで約款を入手できました。しかしそれをみてビックリ!。

いまだにこの地では町内会参加を実質家単位でしているではありませんか。また輪番制の住民代表が集まり決議すればそれが町内会ルールになる。検閲などのシステムが全くないではありませんか。地区によっては入会は強制と宣言している所もあるとかないとか。

リニアが開通等の喜ばしい話題もありますが、こんな不毛な事を続けていたならストロー効果と相まってどんどん若者が出て行ってしまうのではないかと思ってます。
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