ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

20世紀少年<最終章>ぼくらの旗

2009-09-08 10:49:02 | 映画(数字・アルファベット)
2009年・日本・東宝
監督:堤幸彦
公式HP



漫画は未読。1、2と見たのでほぼ惰性で見たが、
シリーズで一番の駄作だと思う。

とにかく長すぎるのだ。
原作ファンは3部作では「20世紀少年」は描ききれていないと不満を漏らしているようだが、
原作に何の思い入れもない者からすれば、いくら省略されたり、変更されたりしてようが、十分に長すぎる。
これだけ無駄に長くて描ききれていないのであれば、原作自体が無駄に長すぎる
駄作なのではないかと少し疑ってしまう。

特に最終章では話をまとめようとしすぎて、こじんまりとしてしまっているのが良くない。
全編がクライマックスだとは良い言い方だが、それではやはり面白くない。
登場人物たちはほとんど皆、主体的に行動を起こさない。
そして、今までの反省会を延々と続けてしまう。
ボーリング場でも教会でも同じところに座ったまましゃべり続けるばかりで
画に変化がなく、映画としての面白さは皆無である。
それ以外の行動的なシーンも検問の突破のシーンに代表されるように
基本的に緊張感はゼロで、全く盛り上がらない。
謎解きの面白さがあればまだ耐えられたかもしれないが、
第1章からと同じパターンで「お前、アイツか」で引っ張るのを繰り返すので、飽きてくる。
その上、ともだちの正体が外見などから絞られすぎて、原作を読んでいなくてもわかってしまった。
さらに、試写会でもカットされたラストの10分間でどんでん返しがあるのだが、
こちらは逆にわかりにくすぎて、驚きも何もなく、蛇足に思った。
8時間近くある割にはほとんどこのラストについての伏線はなく、唐突に感じられるが、
「謝る」そして「許す」ということの大事さをメッセージとして伝える上では必要だったのかもしれない。
また、「20世紀少年」の企画が通ったのもこのような現代に通じるメッセージ性があったからなのかもしれない。



「20世紀少年」最大の謎はともだちの正体でも何でもなく、
噂の60億円がどこに消えたのかと言う点にある。
はっきり言ってこれは大作感を出すためのハッタリだったのではないか。
もし、本当に60億円かかったのだとしたら、堤監督は相当、金の使い方が下手だと思う。
もしかしたら、そんなにもいらないのに60億円をドカッと与えられて、
監督は無駄遣いするのに必死だったのかもしれない。
豪華キャストもそれほど豪華だとは思えないし、テレビ・タレントが多くて、安っぽい。
地球防衛軍の正体には作品内で一番の笑いが起きていたが、苦笑に近いものだった。



最終章と言う割にはCGが使われた派手なシーンは少ないが、
ともだちタワーやUFOなどの出来は第1章などに比べると格段に良かった。
ラーメンの湯気や地球をグルグル回すなどセンスがないところにCGを使っているのは堤監督らしい。
この作品の一番の収穫は間違いなく豊川悦司の熱演とかっこ良さにある。
ほとんどが実力の半分以下の演技でやる気のなさを見せる一方で、
一人なりきりすぎて、浮いてしまっているほどだ。
カンナを演じた平愛梨は演技力はないが、眼力はあるので、しばらくは活躍していけそうだ。

ストーリーとしてみれば十分に楽しめるが、映画としてみれば完成度は恐ろしく低く、
映像的な興奮を味わえるシーンも皆無に等しい。
ハリウッド大作のような問答無用の楽しさが邦画の大作には欠けている。

〈55点〉

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