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なんなんでしょう、この無言の圧力は?---「ブログ普及委員会」発足

2005-12-06 | インターネット関連
かつてPCメーカーで消費者用コールセンターに務めていたESさんの話。
一次受けのオペレーターの手に余る質問を、ESさんら専門員が回答していたという。技術者であるESさんに回って来る質問は、しかし、テクニカルなことばかりじゃなかった。

「意外と多いのが『PCを買ったけれど、自分は何をしたら良いのか?』って質問だったんだよねー」
「本当っすか」
ESさんはうんと頷いて、「PCを買うこと自体が目的になっちゃってたのか、最新機種を購入した人に多くてさ、そういう時はネットに接続できる環境であることを確認して、Yahoo!やGoogleで趣味のことを検索するガイダンスをしてたよ」
「なるほど」と私が納得する。んが。
「ところが」とESさんが続ける。「『趣味はない』ってケースが、これまた意外なほどあったんだよね」
「ひゃー・・・。質問した人にとっては、おそらく大海原にぽつんと放り出されたようなものなんですねー」
「いや、自分のいるところが、大海原だって思えているならまだいいよ。”どこかに流れつくことをしなきゃいけない!”と考えられるからね。ところが実際は、それさえも分からない人の方がダンゼン多い。最近は(PCの販売店である)売り場の方がそれを心得ててさ、デジカメとプリンタ複合機をPCと一緒にデモンストレーションして、撮った写真をすぐにプリントアウトしてこうやって使うんですよって提案してたりするの。”何に使うか”まで提案してるんだよね」
「あー、年賀状プリントとか、そうですよね」と私が他の例を出してみると、
「そうそうそう」とESさんが同調した。「分からないけど、周りがやってるからとりあえず自分も手を付けたっていうことかな。他にも『電話帳(ハローページ)みたいに、近辺の人のメールアドレス全てを収めたアドレス帳はないか』って言う人もいたよ。『ご友人の方から直接お聞きください』って答えたけど、さ」

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昨日のニュースで、『ブログ普及委員会』の発足を知った。
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眞鍋かをりが委員長を務める「ブログ普及委員会」が発足

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委員長の眞鍋が「なりきりTommy」で人気を博した眼鏡姿で登場したこちらのページが、話題になってる。
だけどブログではなく、全てFlashの動画コンテンツなのは、なぜ?
・・・動画を作りたかったんだろうけど。

今年の『ヒット商品番付』で東の大関※1に選ばれた「ブログ」。
これについて、このサイトのメインコンテンツと思われる『眞鍋式ブログ講座(基礎編)』では、”今までブログにコメントも残した事がなく、ブラウジングしたこともほとんどない、だけどこれから始めてみよう”という、まったくのブログ未経験者向けに書かれた内容らしい。
生徒に扮した未経験者の質問に、先生(委員長?)に扮した眞鍋が回答するというミニドラマを見ることができる。なんとなく閲覧してみる。

すると・・・。



その回答、ダメでしょお!!




と、気になる、やりとりが幾つもあった。

たとえば。
「Q.人気のブログになる自信がないんですけれども、どうすればいいですか」
「A.友だちや家族に向けた内容でもいいんです」
→ブログによっては閲覧者の制限をかけられるものもあるけど、そうでなければ公開してよい内容に限定しないとダメでしょう。

「Q.日記を見られるのが恥ずかしいんですけど、どうすればいいですか」
「A.覚えておきたい情報とかでもいいんです」
→公開してよい内容であれば構わないと思う。間違っても”近辺の人のメールアドレス帳”なんてダメだよ。・・・そもそも、恥ずかしいというのなら、あえてブログを作成する必要もないと思うけど。

「Q.ブログを始める最初の一歩がどうしても踏み出せません。どうしたらいいですか?」
→あえてブログを作成する必要もないと思うけど。

・・・なんだろう。
”普及”と言うより、「ブログを作成しなさい」って言う見えない”圧力”がちらつく感触がある。

眞鍋委員長は、技術的にとても簡単だということと、ブログを書くことで得たことの中でもメリットしか話してない。知合いへのメールのつもりで書いた記事が、一般公開されるということは、実はとても危険なことなのに。

ブログ未経験者と大雑把に括られたこの委員会の生徒さんには、ESさんが面食らった質問をした人たちも、想定してるのだろうか。
テクニカルな質問についてここで回答することはほとんど意味がないのだから(ブログによって規約や立ち上げ方は異なる。複数のブログを運営してても、この違いに戸惑う人は多いと思う)、もう少し記事の内容に焦点を合わせて、せめて「個人情報は書いちゃだめですよ」ってことだけでも、注意を喚起するべきじゃないのかな。

それから。
演出のせいかもしれないけど、そもそもブログを書く気がないのに、学校の宿題のようにブログを立ち上げさせようという、この感じが気になるけど、


ブログを作らないと言う、選択肢もあるよ!!


普及させるにしても、「やりたいけど、どうしていいか分からない」って人向きの内容にしてほしい。基礎編を見た限りだけど、”周囲につられてPCを買ったけれど何をしていいのか分からない人”まで、ネットの大海原に放り出すだけの無責任な内容に見えるんだな。

先日、連載を一旦終わらせた「日経BPデジタルARENA『ブログで自滅する人々』」は、回を重ねるごとにその勢いは弱まってしまった感が否めない。だけど第6回(最終回)でのこの文章を言いたいがための連載だったのかな、とも思う。

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・・・筆者個人の考えとしては、トラックバックやRSSフィードなどによって、似たような嗜好性を持つサイト間で、自然に「ゆるやかなコミュニティ」が形成されてゆくことが、(ブログの)大きな特徴のひとつだと考える。現在ブログと呼ばれるものの最初の一歩となったのが(奇しくも「あめぞう」と同じく…)リンク集だったと言われていることを考えれば、「積極的かつ容易に『他』とつながる機会を増やす、開かれた仕組み」こそがブログの真骨頂、というのが筆者の理解だ。

そうでなければ、それこそチラシの裏※2や紙の日記帳に書くなり、強固な認証システム付きのサーバーを立てて知人だけを招待するなりしていればいいわけで、www上で「公開」することや、「積極的に『未知である他』とつながる機会を増やす仕組み」であるブログというシステムを利用すること自体が間違っている。・・・
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閲覧者を制限できない”公開”の場で、内緒話をするのはキツイ冗談だと、私は思う。実際は検索やRSSリーダーなどによって、関係者ほどそのブログを見つけやすかったりするし。

ところで眞鍋委員長への質問に、「Q.人気ブログになる自信がないんですけれど、どうすればいいですか」というのがあった。委員長の座についていなかった半年前は、彼女は雑誌でこんなことを語ってた。

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「IT利活用で変わる社会」ITリーダー「ブログの女王」眞鍋かをり

・・・お客さんが多いと、やっぱりその分ちゃんとするというか、何かそういう「ちゃんとしてる感」というのがなくなっちゃうと見るほうも嫌ですよね。

ものすごい客の来てのないラーメン屋さんみたいなホームページもあるじゃないですか。もう寂れちゃってて、店の人も客も、いるんだかいないんだかみたいなところもあれば、ほんとにそういう意味で言うと、ブログってお店みたいなものかなと思うんですけど。・・・

『経済産業ジャーナルNo.409 2005年5月』
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曰く、「ブログはお店屋さんみたいなもの。ちゃんとしてる感がなければ、お客さんは来ない」と。
自分の言葉で語っているこちらのコメントの方が、「友だちや家族に向けた内容でもいいんです」となんて適当な事を言ってるよりも、ずっと委員長らしい発言だと思うし、実際そうなんだろうと納得できる。

お店を営業したい人って、売りたい商品やサービスを具体的に思い浮かべているから、やりたいし出来るんでしょ。
「何を売ったらいいの?」という人に対して、無理に運営を任せるような、そういう普及方法だとすぐに寂れてしまう店をたくさん作ってしまうだけなんじゃないかな。

※1 東の大関:
昨日発表された「ヒット商品番付 : Business Watch : SMBCコンサルティング」で、「ブログ」が東の大関に上がった。

※2 チラシの裏:
広告の裏紙の白紙のこと。
もしくは"「メモ帳」を下回る低機能テキストエディタ"の「チラシの裏」のこと。文書の保存さえできない(笑)。


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