背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

【県庁おもてなし課】二次創作できることになりました

2011年04月24日 06時12分26秒 | 雑感・雑記
あささまの添削済み完全版です




「喬兄、ちょっとお醤油取って」
民宿【きよとお】の台所。つまり、喬介と佐和、そして父和政の家の台所でもある場所。
お客の夕食の支度に追われる佐和は、何気なく喬介に声を掛けた。
喬介は調理には戦力にならないため、台所にいても野菜を洗ったり筋を取ったり、皿を並べたりという補助に徹せざるを得ない。それならまだいいが、ノートパソコンを立ち上げてテーブルで仕事をしているときもあって、忙しさのピークを迎えると佐和の癇癪が炸裂することもままあった。
「こんなとこで仕事しなや。自分の部屋でしい」
きつい言葉で台所を追われるのも一度や二度ではない。
喬介としては少しでもお前の傍にいたいから来てるんだよと言いたいところだが、余裕の無い佐和の足を引っ張ってもなと思い直し、そんなときは「はいはい」と素直に撤収することにしている。
今日は締め切りがまだ迫っていないのか、パソコンは持ち込んでいない。
醤油ね、と調味料のラックから言われたとおり瓶を抜いた喬介だったが、それを佐和には手渡さず彼女の後ろに突っ立ったままでいた。
「何?さっさとしいや」
おたまで鍋の灰汁を掬いながら肩越しに窺う。そんな佐和を見下ろし、喬介は言った。
「ペナルティやないか」
「え」
佐和が目を見開く。そして頬が紅潮した。
「うそや、あたし言うた?」
「言うた。喬兄、って醤油頼むときまた言うたで」
眼鏡の奥で目を細める。佐和ははっきりと分かるほど動揺した。
おたまを両手で握り締め、
「あ、あれは急いじょったき、なんも考えんと、口が勝手に、」
「ペナルティはペナルティや。おてつき、もらわんと」
言い訳を継ごうとする佐和の額に喬介はぴとりと醤油さしを当てる。
「う」
動きを封じられて佐和が上目で喬介を睨む。顔が真っ赤だ。
小さいころから言いくるめられるたびにこんな顔をしたっけなと思わず喬介の頬が緩みそうになる。それをかろうじて堪えてしかつめらしく言った。
「俺を【喬兄】って呼んだらどんな罰やったか。憶えちゅうやろうな」
「うう」
おたまを持つ手を震わせて、佐和が俯いた。
そしてがばと顔を上げ、どんと喬介に体当たり。
「わっ」
不意を突かれて後ろによろける。醤油さしを落としてはいかんと、変なところに気がいった隙を衝かれ、佐和が懐に入り込んだ。
背伸びして、――強引にキス。
まるでビンタを張るような。ぶつかり稽古のような口づけを送る。
面食らっているうちに佐和の唇が離れ、ぷいと顔を背けて夕餉の支度にまた取り掛かる。
でも、その耳が熱い。朱に染まったままだ。
「これでえいがやろ。早う醤油頂戴」
喬介は苦く笑うしかなかった。
後ろから佐和をそっと抱きしめ、腕に囲った。
びく、と身体に力が入る。そのぎこちなさもまた初々しい。
「今のキスって言うがか。頭突きやがまるで」
「キスよえ。キス以外の何でもないやん」
完璧、照れている。俯いてしまう。
つい先日まで妹だった佐和が、今は恋人に変わった。
それに一番対応できていないのは、たぶん当の本人。
「喬、……介はずるいわ。あたしのことは昔から佐和、で呼び名を変えんでもにえいがやき」
またペナルティを食らわないように、とっさに言い換えた。
「そうか? そのうち変わるがやで」
喬介は佐和の髪に鼻先を埋めながら言う。
「え? なんて」
「お前、奥さん、家内」
答えると、ぼぼぼぼぼ、と佐和がまた顔から火を噴く。
「お、おく、かっかないて」
よくもまあこんな反応よくと呆れたくなるほどストレートだ。リトマス試験紙に液薬をたらしてももっと時間がかかるだろうに。
喬介は笑って佐和のあごを上向かせた。肩越しに奪う。
「……っ」
長めのキスを落とし込んでやると、佐和が腰砕けになった。
身体を喬介にあずける。
「……今のペナルティやないに。なんで?」
吐息に混じらせて尋ねる。喬介は真顔でこともなげに言う。
「男が好きな女にキスするがに理由がいるがや?」
そうして佐和の髪に唇をつけた。
「……いけずや。喬」
いじわる。そう詰る声に官能が立ち込めている。
「すまん」
喬介は欲望の熱い塊が背中を焦がし始めるのを感じて、すっと佐和を手放した。
男女の関係になるのは、祝言を挙げてからと心に決めている。誰にでもなく、自分に誓った。これは清遠の家に身を寄せ、家族として暮らした幸福な数年、あの日々を汚さないためだ。けじめ、に近い。
それまでは、どんな欲求だって堪えてみせる。今までだって狂おしいほどに自分を押し殺してきたのだから。
何年も何年も。
あとたった数日なんて、一瞬の光みたいなものだ。
あと少しで、この女が俺の女になる――。
腕を離されて心もとない表情で佐和が喬介を見上げている。猫が、じっと飼い主を見つめるようにまばたきもせず。
そんな佐和の頭に、こつんと瓶を乗っけて、
「ほら。醤油」
喬介は微笑った。

(つづく)


いやあ、さすがって感じですね。第一稿とぜんぜん違う! と自分でもびっくりです。
ネイティブのこの滑らかな台詞回しを見てください。(私の話よりも)
快く添削を引き受けてくださいましたあささまに心から感謝を。
ありがとうございます。
そして、私もこれから土佐弁を愉しんで苦しんで書いていきたいと思います。


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (まききょ)
2011-04-24 21:59:55
読みたいです!!
やっぱりあのCPですよねww
土佐には知り合いもいなくて全くお役にはたてませんが…読める日を楽しみにしています♪
返信する
こ、こんなんできました (あだち)
2011-04-25 05:41:30
>まききょさん
ためしに書いてみましたが、
う~ん……久々にツボカップルきた!って感じですね。イツキとさやかのときのように、妄想が無限に広がります(汗)
でも文中の土佐弁きっと変…
こんな文でも添削協力よろしくお願いできる方、ヘルプでございます。
返信する
違和感… (まききょ)
2011-04-26 00:38:02
無いです笑
多分土佐弁が全く分からないからでしょうねぇ…笑
かなり続き読みたくなりました…!!!!
原作読みながら、誰かこのCPでSS書いてくれないかなぁ…って本気で思ってたので、余計に…!!
返信する
難しいですよね (たくねこ)
2011-04-26 20:29:32
土佐弁、読みながらもこのイントネーションでいいのかなぁと思ってました
西へ行けばいくほど方言は難しくなるので
ううむ、です。

読めるのを楽しみにしてます~~~
返信する
Unknown (あだち)
2011-04-27 04:18:58
>まききょさん たくねこさん
あささんに直してもらったらこんなに自然な言い回しになりました。すごい、嬉~!
でも、たくねこさんの「西に行けば行くほど」っていう話は納得。関西以降はちんぷんかんぷんですみません。
これから二次が書けると思うと自分でも楽しみです!
返信する
Unknown (あさ)
2011-04-27 20:43:18
私もざっくり直したので、読み返すほどに「こっちだったかな?」と迷います。
また高知は横にただっ広いので、東端と西端では発音が違います。
いやもうコールセンターでの仕事をこなせる方を尊敬しますねぇ。
返信する
すごい! (たくねこ)
2011-04-27 23:24:14
滑らかになりますね~。
続き、むっちゃくちゃ、関西弁で言うと
ごっつ楽しみです!
返信する
ありがとうございます (あだち)
2011-04-28 04:55:59
>あささん
まだおかしなところがあれば、教えてくださいね。手直しはいつでも可能です。笑
おかげさまで皆様に胸を張って公開することができました。今後、おもてなしの二次ができましたらお願いすると思いますので、その際はよろしくお願いします。

>たくねこさん
全く別の話みたいですよね。第一稿と比べると(^^;明日から連休なのでぼつぼつ書いていけるといいなと思います。公開は夜の部屋と思うので、そのときは告知しますね。
返信する
キタ━━(゜∀゜)━━ (MIO)
2011-05-03 14:48:26
待ってました!
私も喬介にツボッたんですが、方言の壁の高さに「二次書きたくても諦めちゃう人が多そうだなあ」と、喬佐和カプ作品の出現を半ば諦めていたんですヨ。

ですので、あささんというご協力者様のご尽力であださん作品で喬佐和が拝めるなんて、めちゃめちゃ嬉しいです♪
あささん、あださん、有り難うございましたv
返信する
添削・監修者あっての二次創作 (あだち)
2011-05-04 07:27:14
>MIOさん
あささんのお名乗りがなければ 私もあきらめておりました。
けれども快くお引き受けくださってほんとありがたいです。
もう8割がたできてますので、後ほど夜の部屋にて公開していきたいですね。裏の「おもてなし」(笑)

あ、今気づいたけど、有川先生お膝もとの高知出身の二次作家さんに腕をふるってもらえれば! なお! よいのでは! 待望してます~
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