背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

「空飛ぶ広報室」二次 ~夜のむこう~(ネタバレあり)

2012年08月06日 04時29分17秒 | 雑感・雑記
お久しぶりです。
管理人です。すっかり放置してすみませんでした。
留守中足を運んでくださって、拙作を読んでくださったり、コメントを残してくださったり、拍手をしてくださったり、本当にありがとうございました。
有川先生の新作を拝読して、久しぶりに二次創作のスイッチが入りましたので、更新させていただきます。
図書館戦争の劇場版も見ていないし、実写化決定したことも遅まきながら昨日知ったという取り残され感いっぱいの管理人ではありますが、ほそぼそとファンを続けていこうと思っていますので、よろしくお願いします。
それでは「空飛ぶ広報室」二次を以下からどうぞ。
(ネタバレありますので、原作を読んだ方のみお願いします↓)

なお、夜の部屋にてCD-R「Four Seasons」から手柴もの【夏・花火】を
期間限定公開(8月中)します。よろしければどうぞ。
※新規パス希望にはすみませんが対応しておりません。ご了承ください。

※夜のむこう※



成田発ホノルル行きの便に乗っても、どこか現実味がない。
自分が、好きな男と一緒に海外旅行へ出かけようとしているということが。誰かよその女の身の上に起こっている遠い出来事のような心地さえする。
隣を見れば槙がいて、いまさら現実味がないも何もないはずなんだが。
――これってカンペキ、今まで恋愛をさぼりすぎてたツケだよねえ。
そんなことを思いながらしきりと隣の横顔に視線を当てている柚木に、「どうしました?」と槙が尋ねる。
慌てて目線を引き剥がして、「ん、なんでもない」と前のシートに背もたれに向き直る。
「眠かったら寝てもいいんですよ。着いたら朝ですから」
「着いたらハワイなんだよね、ホントに」
聞いて槙が目だけで微笑う。
「当たり前でしょう、そこ以外に行ってたら問題だ」
「だってさ、なんだか信じらんないんだもの」
少し拗ねた口調で言って、柚木がシートに深く沈む。
「あんたとこうしてハワイ旅行ってのがさ」
「婚前旅行がハワイって、ベタでしたか」
しれっと言う槙。
「……」
柚木はその言葉の真意に数秒のタイムラグをもって気がつく。
「え? ……こんぜん、って」
ことは。え?
結婚が前提ってことで。え? ええ?
とたんに頭が沸く。かろうじて声を出さずに済んだのは、夜のフライトで機内が静かだからだ。
爆弾を投げた槙は面白そうに柚木の様子を窺っている。
こ、の。
柚木はとっさに槙の左耳を摘み上げる。ぎりりと。
「いてっ。何するんです」
「あんた、性格悪イ。いつからそんな性悪になった。大学のころはあんなに可愛かったのに」
「さあ、大学のころから十何年も好きな女にすげなくされてたら嫌でも性格悪くなりますよね」
思わず耳をねじり上げる手の力が緩む。
「……すげなくなんか」
「してないとでも? オッサンの皮かぶって防護万全にして。ひとに手も出させない状態にしておいて?」
畳み掛ける槙。分が悪い。こうなると。
たまらず柚木はぶんむくれた。
「~~だから、ゴメンって!」
そこはもう謝ったじゃないずいぶん前に!と弁解モード。
槙は「生殺しでしたよ。こっちは。ハワイに着いたら、今までの分、元を取らせてもらいます」と愉快そうに笑う。
「元?」
「はい」
実は、二人はキスまでしかしていない。官舎に戻る途中、軽く唇を触れ合わせるだけの。いまどき中学生でもしないような、呆れるほど清廉なおつきあいだ。
同僚のからかいを受けつつ確保した五泊七日のハワイ旅行。この期間、これまで封印してきた想いのたけを柚木にはぶつけるつもりでいた。彼女が泣いて懇願してもホテルからは出さない勢いで。いっそのことベッドに縛り付けてでも。
愛しぬくと決めている。
柚木はそんな槙の言葉の甘い意味に気がついているのかいないのか、「元を取るとかみみっちい男ねあんたも」といつもの如く口が悪い。
「放っておいてください。そういうみみっちい男がいいんでしょ先輩は」
「ふん!」
「……柚木先輩」
ふと、声が真顔に返る。照れてあさっての方向を向いていた柚木が首を巡らすと、
「向こうに着いたら、呼び方を変えても?」
【先輩】って外していいですかと槙は静かに言った。
「……んなの、わざわざ聞かなくても」
照れてしまって、まともに目が見られない。柚木はアームレストに視線を落とす。
「今外して」
「典子」
ストレートに呼ばれ、目の前が揺らぐ。
ものすごい破壊力だ。心臓の鼓動が一気に倍になる。
たまらず槙の肩に額を押し当てた。
「……反則よ、あんた。タガはずれてるんじゃない」
いろんな意味でと付け足すと、かすかに笑う気配。
顔が見たいけど、とても見られない。
「あなたと旅行に来られて舞い上がってるんですよ」
「……向こうに着いたらね。部屋でいいからあたしと踊ってくれる?」
大学の卒ダンできなかった分。オクラホマミキサーでいいからと囁く。
槙は柚木の顔を上げさせて、くちづけをした。――それはそれは優しく。
「ビーチで踊ってあげますよ。好きなだけ」
そしてそっと手を握る。
柚木は花がほころぶように笑い、きゅっと手を握り返した。
「……だから……」
「え?」
「いえ、何でも。本当に少しでも眠ってください。興奮するのは分かるけど」
「ん」
素直に柚木が槙の肩を借りる。手はつないだまま。
やがて寝息が聞こえ始める。健やかで規則的な。
槙は心の中で一人ごちる。
だから、何度も言ってるんですよ、柚木先輩。
俺にはどうやったって、あなたはオッサンには見えないんだって。可愛い女の子にしか見えなくて困るんだって。
いつも半信半疑でいるけどさ。
槙は窓の外に目をやる。四角く切り取られた夜の向こうに、透き通った淡いピンクのハワイの曙光が見えるような気がした。


(fin.)

気が向きましたら、夜の部屋にてこの続きでも。
(ただ今、新規パス希望に対応できておりません。ご了承ください)


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4 コメント

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(´∀`*)ウフフ (たくねこ)
2012-08-08 15:02:24
お久しぶりです!ちょこちょこ来ては脳内安達さんを補充してました。そしてこのCPできましたか!もちろん、ツーステップで夜の部屋に行ってきま~~す。 いろんな意味で補完、ありがとうございますっ!
返信する
ありがとうございます (あだち)
2012-08-10 13:34:56
たくねこさん

お久しぶりです。久しく留守にしましたのにあたたかなお言葉、本当にありがたく頂戴しました。いつも励ましていただいて感謝の言葉もありません。。。。なんとかかんとかやっていきたいと思いますので、生あたたかく見守っていただけると嬉しいです。どうもありがとうございました。
返信する
Unknown (まききょ)
2012-11-26 21:40:37
お久しぶりです(*≧∀≦*)空飛ぶ広報室を読んだら、読みに来よう。と決めてたので、遅くなりました。
読む前に安達さんは、このCPを書いてらっしゃるだろう!!と思って来ました(^w^)是非続きを夜でー!!読みたいですー(*≧∀≦*)
話は変わりますが、連休に広島に行き、護衛艦に乗ってきました☆潜水艦も見てきました♪安達さんの海の底SSを思い出しました(*´∇`*)
返信する
まききょさんへ (あだち)
2012-12-09 18:54:15
お久しぶりです! 生存しております、管理人ですv笑
思い出してくださってうれしいです。私の有川CPの好み、熟知していらっしゃると見ました。笑
夜も、ぼちぼち更新しないとなと思っています。。。
クリスマスも近いですしねえ。槙と柚木で復活でしょうか・・・
気長にお待ちいただけるとうれしいです。ありがとうございました。
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