世界の移民政策、移住労働と日本

日本型移民政策とは何か?世界の移民政策に関するニュース、エッセイ、本の紹介など

金融危機と海外出稼ぎ

2008年12月13日 | その他世界の移民政策
金融危機の影響がさまざまなところで私たちの生活にも影響をおよぼしているが、
世界的な経済の停滞が、移住労働者にも悪影響を及ぼすのではないかという危惧が高まっている。

そもそも外国人出稼ぎ労働者はその雇用形態(短期契約や間接雇用)から、一般的には、不景気の際には真っ先に首を切られると考えられている。日本でも職を失った日系ブラジル人が職安に駆け込んでいるという記事があった。

この大規模な経済危機によって、世界中の2000万人の労働者が職を失うとするのがILOの予測だが、アジアの出稼ぎ労働者を取り巻く状態はどうなっているのだろうか。

出稼ぎ労働者を一番抱える中東産油国、建設プロジェクトなどがストップしたり、新たなプロジェクトが延期されるなどの影響から大量の出稼ぎ労働者が職を失うと危惧されたが、フィリピン労働省は、中東諸国はその潤沢な資金の存在もあり、大量解雇は見られないという。ただ、フィリピンからの建設系出稼ぎ労働者は技術者が多く、労働者の中でも比較的待遇のよい地位にあることから、同様の事態がインドやバングラデシュなどからの非熟練労働者に当てはまるかはわからない。

金融危機が移住労働に与える影響を考えるとき、労働者がひとくくりにできないように、その影響も多様であるように思える。医療や介護に従事する労働者がすぐに解雇されるとは考えにくい。逆に製造業や観光業に従事する労働者はその影響を受けやすいだろう。また受け入れ先によっても差がみられる。台湾の製造業の一部で倒産によって職を失った外国人労働者がいるとおもえば、労働者不足に悩むカナダの一部の州では来年数十万人規模の受け入れを予定している。

失業の可能性とともに危惧されるのが、外国人労働者がさまざまな社会の不満のはけ口として標的となることだ。人種差別や右翼的活動と景気は往々にして大きく相関している。経済危機というだけで、実際の需要と関係なく労働者受け入れスキームを閉鎖するようなことも避けなければならない。受入国の経済に貢献している外国人出稼ぎ労働者をこれらの差別から守るためにも、受入国が予防策をとる必要があるだろう。

この世界規模の経済低迷が労働者送金にどのような影響を及ぼすかというところも気になるところだが、世銀もまだ明確な見解を出すことを避けている。そもそも労働者送金は経済サイクルに逆行する素質を持っている(生活が厳しい時こそより高額の送金をする)といわれる。アジア経済危機のときがまさにそうであだった。しかし今回は世界規模の不景気だ。労働者の母国のみでなく受入国でも不況の風が吹くとき、はたして労働者が送金をすることができるか。予測が立たないのは不況が世界全体を取り巻いているからである。










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3 コメント

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需給問題? (xtc4241)
2008-12-17 11:26:28
こんにちは(いま17日11:15頃です)

3ヶ月前にはこんな世の中になるなんて思いもしなかった。それは誰しも同じでしょう。

移民の前に、日本の非正規社員の雇用が問題視されています。それはある意味仕方ないことでもあります。

しかし、経団連や大企業は、自分たちのことしか考えていない。自分とその株主のほうにしか、顔を向けていない。
そこで働く労働者、特に非正規社員は単に調整弁機能だと思っているんですね。外国人労働者を含めて、需給問題だけのモノとしか、見ていない。

逆に言うと、根本的な人間の生き方を考え直す、いいチャンスかもしれないと思う今日この頃です。
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Unknown (Unknown)
2008-12-29 11:17:27
質問です。
管理人さんは「移住労働者」と「海外出稼ぎ労働者」と「外国人労働者」の3つを使っていますが、それぞれ違いますか???
それとも同じですか??

言葉が違うから微妙に意味も違うのかと思いまして、質問させてもらいました。
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migrantの日本語訳 (ブログ管理者)
2009-01-03 21:18:23
コメントありがとうございます。移住労働者、海外出稼ぎ労働者、そして外国人労働者という言葉についてのご質問ですが、移住労働者(migrant workers) とはつまり、自分の出生国または国籍国以外の国で働く労働者のことをさします。移住労働者という単語はニュートラルで普遍的な用語であるとおもいます。

逆に外国人労働者という呼び名は、同じ意味ですが、おもに受入国が移住問題を議論するときのみに使う用語ですよね。つまり外国人が労働者として国内に入ってくると言う現象をさします。これは移民送り出し国では使わないモノサシです。送り出し国は主に海外出稼ぎ(overseas employment、厳密には海外雇用と言うほうが良いのでしょう)という表現を使って自国民の海外就労を語ります。

つまり受入国の視点なのか、送り出し国の視点なのか、というスタンスの違いで同じ移住労働でも呼び名が違うということです。同じ現象でもその捉え方が国ごとに違うわけで、その現状認識の誤差やスタンスの違いが見えてきます。このギャップがさまざまなビジネスチャンスであったり、摩擦であったり、人権問題の原因であったりするともいえます。

この受け入れ・送り出し国間の負のギャップを埋めることがこのブログの目的でもあります。現在は日本語で書いていますので、できるだけ日本(人)の視点に即した単語を使えたら、と考え、ご指摘の通り、migrant workersの類義語を多用しています。




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