世界の移民政策、移住労働と日本

日本型移民政策とは何か?世界の移民政策に関するニュース、エッセイ、本の紹介など

移民政策と政府開発援助を混同するべきでない?!

2008年08月10日 | 日本の移民政策
移民政策と政府開発援助(ODA)。人の移動の管理と途上国の開発の援助。二つのまったく異なった施策がゆっくりではあるが、序々にお互いを意識始めているということは以前にも関連本の紹介や「日本型移民政策」そして、海外出稼ぎと経済発展という見地から書いた。この二つの政策が近接するということは具体的にはどういうことなのか?

この二つの政策を混同することに異論を唱える人々は、開発援助が移民政策を実施するためのツールとして用いられることを危惧している。自主・強制退去される国民を処罰なしに迅速に受け入れる体制ができる送り出し国、不法出国を阻止する活動を積極的に行う国などに対して重点的に援助がなされる可能性がある。また近隣諸国を対象とした国境警備強化などの技術供与プロジェクトにODAが使われる可能性もある。

一方で、人の流れ、とくに途上国から日本への労働力の移動が活発化することで、今まで地理的にも心理的にも遠い国で行われているという印象の強い援助活動がぐっと身近になる。近所に住む外国籍の人の母国が洪水で打撃を受ければほおっておけないと思うだろうし、またすでに行われているが、日本に住む外国籍の人々が母国の開発を手助けするような事業が更に進むだろう。そういう事業を日本としても支援していくことも考えられる。こうなってくると移民政策なのか援助政策なのか線引きが難しい。

また、外国籍の労働者が母国にする送金の総額は、一般的に途上国に流れる政府開発援助の額を数倍から数十倍上回る。日本からの送金が母国で有益に使われるよう、送金手数料の低価格化、外国籍の住民への働きかけなど日本国内でできる開発援助の一つのモデルとなる。移民や外国人労働者を受け入れたからこそ可能な開発モデルである。

まだ将来の移民政策を模索する段階にある日本にとって、こういった移民と開発の議論はすこし先の話かもしれない。議論が本格化する前に予習をしておくのもよいだろう。余談だが今では日本の援助を支えるJICAも戦後までは日本人の移住を支援する機関だった。こういう過去をみていくと、移民政策と援助政策の接点(=「人」に直接かかわる対外政策)というような構図も見えてくる。

イギリス国際開発援助省(DFID)移民と開発に関するポリシーペーパー

ヨーロッパ委員会の移民と開発に関するポリシーペーパー

移住と開発に関する世界フォーラム(政府間フォーラム) 今年はフィリピンのマニラで開催予定 フィリピンフォーラムのホームページ













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