夕暮菜日記

私的日記、教育、社会、音楽、等々について

泡瀬干潟、鞆の浦

2009年10月16日 04時36分45秒 | 社会
まずは泡瀬干潟。
以下、沖縄タイムス(2009.10.15)より転載。

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泡瀬干潟埋め立て公金差し止め 控訴審判決
 沖縄市の泡瀬干潟を埋め立て開発する東部海浜開発事業に反対する市民ら516人が、県知事と沖縄市長に事業への公金の支出差し止めを求めた訴訟の控訴審判決が15日、福岡高裁那覇支部で言い渡された。河邉義典裁判長は、「現時点で経済的合理性を欠く」として知事と市長に公金支出の差し止めを命じた一審・那覇地裁判決を支持し、調査費および人件費を除く一切の公金支出を差し止めた。
原告側は「生物多様性の宝庫」の泡瀬干潟が守られると喜んだ。
県とともに埋め立て事業を進めてきた国は、新政権になり共事業の見直しを進めている。今月、泡瀬干潟を視察した前原誠司沖縄担当相は「1区中断、2区中止」の方針を明示。控訴審判決を踏まえて、県や市に事業の再検証を求めている。判決は事業を推進したい市や県にとって厳しい結果となった。
同事業は、中城港湾新港地区の港湾で浚渫(しゅんせつ)した土砂で泡瀬沖合を埋め立て、第1区域と第2区域に分けて、計187ヘクタールの人工島を造る計画。これに対し、市民グループらが「埋め立てで貴重な干潟の生き物が失われる」と主張し、事業の中止を求め、2005年5月に市と県を提訴。
昨年11月の一審・那覇地裁判決は、07年12月の東門美津子市長による事業計画の見直し表明を受けて、「現時点においては経済的合理性を欠き、公金支出は違法」として、県知事と市長に一切の公金差し止めを命じていた。
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当然ではあるが、めでたい判決である。
沖縄県、沖縄市は上告などしてこれ以上、住民や地球環境をいたぶるべきではない。

次は鞆の浦。
以下、47NEWS(2009.10.15)より転載。

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鞆の浦訴訟で広島知事が控訴 「景観の定義あいまい」
瀬戸内海の景勝地・鞆の浦(広島県福山市)の景観保護をめぐる訴訟で、広島県の藤田雄山知事は15日、県と福山市への埋め立て免許交付差し止めを命じた広島地裁判決を不服として控訴した。
「一審判決が認めた景観利益の定義があいまいで、免許交付する知事の裁量権も不当に狭く解釈している」との理由。福山市などと協議を重ねた末に「漠然とした景観保護のために事業が止まれば、ほかの公共事業にも影響が出かねない」として、広島高裁で争う方針を決めた。
県と市は港の一部を埋め立て、湾を横切る全長約180メートルの橋の建設を計画。広島地裁は1日、「鞆の浦の景観は文化、歴史的価値があり、国民の財産ともいうべき公益。事業で重大な損害が生じる恐れがある」と反対派住民らの主張を認め、景観利益保護を理由に大型公共事業を差し止める初の司法判断を下した。
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広島県が控訴したわけだが、その理由は「景観利益の定義があいまい」「他の公共事業にも影響が出かねない」だそうだ。
こんな記事も転載しておく。
以下、SHIKOKU NEWS(2008.10.03)より転載。

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鞆の浦の景観保護を勧告/イコモス、国や広島県に
広島県と福山市が進めている瀬戸内海の景勝地・鞆の浦(とものうら)の埋め立て架橋事業について、国際記念物遺跡会議(イコモス)が計画中止や景観を損ねない代替案を再検討するよう勧告。国土交通省や県、市に文書を送ったことが3日、分かった。
イコモスは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関。カナダ・ケベックで10月開かれた総会で「港と町と周辺の風景は、一体として国際的な重要性を持つ」と、前回の2005年に続いて勧告を決議した。
日本イコモス国内委員会によると、同じ文化遺産を対象に2回続けて保護を勧告したのは異例。
イコモスのグスタボ・アローズ委員長は11月12日付の文書で、広島県や福山市に計画の再検討を要請。金子一義国土交通相には、事業を認可しないよう求めた。
架橋計画は県が6月に認可申請し、中国地方整備局が審査中。福山市は「地元の大多数は架橋を望んでいる」とコメントしている。
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広島県知事は、自分が国際的に恥をかいていることを自覚してもらいたいものだ。

さて、この2つの裁判の構図を、以下のようにまとめてみた。

     | 事業反対派の守りたいもの    |   事業推進派の守りたいもの
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泡瀬干潟 |    生物多様性       |   公共事業による経済効果
     |                |
鞆の浦  |    歴史的景観       |   公共事業による経済効果


人としての『格』の違いが争われているのは明らかだと、私には思える。

ただし、こうまとめるのも実は片手落ちである。
泡瀬干潟を守る連絡会の主張は、
『日本の宝、泡瀬干潟を後の世に受け継ごう! どこにでもある人工ビーチ(埋立地)で二流の観光地を造るよりも、生物多様性日本一の干潟で沖縄市固有のどこにもない本物の観光地へ!』だし、
鞆の浦の埋め立てに反対している人は、空き家を活用したり、坂本龍馬がらみの街おこしなど、地道だが、文化と歴史に根ざした街おこしを実行している。
反対派が、経済を軽視しているわけでは、決してないのである。
『右肩上がりの経済』が、幻想であることが明らかになってしまった今、反対派の考える実直な道こそが現実的だと知るべきである。
もう一つ当然のことを指摘しておきたい。
『公共事業による経済効果』というのも、実は幻想に過ぎないということ。
こういった公共事業を直接受注するのは、東京に本社を置く大手ゼネコンだ。
そして実際に工事を行うのは、孫請けか、ひ孫受けの零細業者だ。
税金から支払われた工事費は、この時点で、東京の大手ゼネコンに支払われた額の1/3~1/4程度になっているはずだ。
大企業には経済効果はあるが、地元にはほとんど金は落ちないのだ。
工事が完成すれば、経済効果があるというのもウソ。
現に、泡瀬干潟に隣接する工業団地の分譲率は3.6%だそうだ。
ゼネコンを儲けさせるためには、甘い計画に税金をつぎ込むことも、彼らは辞さないのだ。
そして、干潟や歴史的景観を失い、経済的にも、深刻に沈没する。

二流の観光地だらけの安っぽい日本を、子孫に手渡したいと、私は思わない。

鞆まちづくり工房
泡瀬干潟を守る連絡会

以下はWEB署名。
もちろん私も署名した。
泡瀬干潟と浅海の埋め立て中止を求めるWEB署名(第3期)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
無駄な公共事業だと思います。 (ゆうこ)
2009-10-17 16:57:59
緑虫さん、こんにちは。
私も、「泡瀬干潟と浅海の埋め立て中止を求めるWEB署名」に、
署名しました!

緑虫さんの、
> 二流の観光地だらけの安っぽい日本

というところ、すごくうなずいてしまいました。
富士山五合目で、
(梅宮辰夫さんの)「たっちゃん漬け」の派手な看板を発見した時の
気分を思い出しました。
ゆうこさん、いつもありがとうございます。 (緑虫)
2009-10-18 02:54:51
鞆の浦も、泡瀬干潟も、自身の健康も、どれもおろそかにせず、大切に扱いたいものですね。

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