1602年(慶長7年)豊前藩主・細川忠興(三斎)が開窯した古上野釜の口窯産の斑釉茶碗であります。(三斎はこの後家康によって移封され肥後に移ります)
さて、本品は見てわかるように腰の張りが力強く十二分に古格を感じる碗相であります。
釜の口の茶碗の伝世品は極めて珍しいものです。
さて常の如くひっくり返してみましょう。
高台は撥状に強く張り出しています。
全体がグリグリとしなんとも云えぬ風情があります。
高台内は藁灰が総釉となっております。
赤く見えるところは釉掛かりが薄く土の火色が出ている部分です、とても美しい。
人の心の有り様を示す人品という云い方があります、
人品下がるのは充分注意ではありますが、
人心の投影物である茶碗にも品格のあるやなしが問われます。
さてここで九鬼周造の言葉。
「人間は偶然に地球の表面の何処か一点へ投げ出されたものである。
如何にして投げ出されたか、何処に投げ出されたかは知る由もない。
ただ生まれ出でて死んでいくのである。人生の味も美しさもそこにある。」