
ヘルスケア産業の動向について学ぶため、仙石慎太郎博士を講師にお迎えして、「ヘルスケアビジネスから見た食と健康」についてお話いただきました。
①私は東京大学大学院理学系研究科で分子生物学を学び博士号を取得した後、McKinsey&Company Inc., Japanにて4年間ヘルスケア領域のコンサルティング業務に従事しておりました。その後、独立系ベンチャーキャピタルのマネージャー、東京大学大学院薬学系研究科講師などを経て、2008年1月から京都大学産官学連携センター准教授に就任予定です。
②ヘルスケア産業の中には、体調維持・向上・疾病予防、治療、介護といったサービスが含まれています。それぞれが、70兆円、30兆円、10兆円という試算もあり、その場合合計で100兆円を超える巨大な市場であるといえます。その中に、開発・製造・提供・販売・情報サービスといった業務があり、日本はそれぞれの領域でアジアをリードするような仕事がもとめられております。
③医療の高度化や高齢化に伴う医療費の膨張を受け、現状としては、健康保険組合は赤字を抱え、支払い能力が限界に来ています。そのなかで、予防医療の推進、すなわち32兆円という医療費の一部を予防領域に括りだせば良いのかという議論が産官学連携で検討されています。
④医学的に見れば予防→医療という一連のサービスも、産業論的には大きく異なります。狭義の医療産業は、公共性重視の規制型産業ですが、それに対して予防健康産業は自主性重視の市場主導型産業です。前者はBtoBtoC(製造者と提供者の取引を通じて、サービスが一般消費者に提供される)であり、後者はBtoC(製造者が直接一般消費者にサービスや製品を提供する)の事業モデルです。
⑤健康・医療領域で体内に取り入れる製品の一群は、大きく医薬品と食品に分類され、前者は厚生労働省、後者は農林水産省が主たる監督官庁です。健康食品やサプリメントは「いわゆる健康食品」などと称され、日本では一般の食品と同じ分類です。米国のFDA(Food and Drug Administration)に匹敵する包括的な行政面の管理は成されていません。
⑥医薬品はさらに医療用医薬品とOTC医薬品に分類され、OTC医薬品(Over the counter、薬局で医師による処方箋がなくても購入できる薬剤)はさらに、一般用医薬品と医薬部外品に分類されます。食品は保健機能食品といわゆる健康食品と一般食品に3分され、保健機能食品は特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品に分類されます。我々がコンシューマー・ヘルスケアと呼んでいるのは、保健機能食品といわゆる健康食品を合わせた領域で、2兆円の市場規模です。
⑦「いわゆる健康食品」というのは、これが公の名称で、サプリメントもこの分類に含まれます。健康被害などのトラブルが最も多いのもこの領域です。その一方で、なかには医薬品をも上回る有効性・安全性を持った製品も存在します。例えば紅麹(Red Yeast Rice)という健康食品は、スタチンと比較して、LDL(悪玉コレステロール)の減少とHDLの増加が顕著で、かつTG(中性脂肪)の血中濃度の低減効果が確認されています。もちろん食品なので、筋融解症などの深刻な副作用もありません。
⑧コンシューマー・ヘルスケア製品の適正な流通と使用のためには、医師・歯科医師・薬剤師をはじめとする医療・医薬の専門家のさらなる参画が不可欠です。これらの方々に積極的に参画いただくための取り組みの方向性としては、学術的見地からの関連情報の整理統合と権威付け、医療・医薬専門家に対するラーニング機会の提供、開業医や保険薬局による生活者・患者に対する情報提供、などの取り組み案が仮説的に検討されています。医師・歯科医師の方々にとっては、今後さまざまな参画と活用の機会があると思い、生活者・患者にとって大きな福音になると考えております。
⑨このように現在のサプリメント・健康食品産業は玉石混交の状態が続いていますが、我々はこれまでの研究・教育の取り組みとして、誠実に良い製品を提供されている優秀企業に着目し、これら企業のケーススタディーや公開講座を行ってまいりました。このたび、その成果を「食と健康に本気な企業たち」(かんき出版, 2006)として出版いたしました。ご講読頂ければ幸いです。
①私は東京大学大学院理学系研究科で分子生物学を学び博士号を取得した後、McKinsey&Company Inc., Japanにて4年間ヘルスケア領域のコンサルティング業務に従事しておりました。その後、独立系ベンチャーキャピタルのマネージャー、東京大学大学院薬学系研究科講師などを経て、2008年1月から京都大学産官学連携センター准教授に就任予定です。
②ヘルスケア産業の中には、体調維持・向上・疾病予防、治療、介護といったサービスが含まれています。それぞれが、70兆円、30兆円、10兆円という試算もあり、その場合合計で100兆円を超える巨大な市場であるといえます。その中に、開発・製造・提供・販売・情報サービスといった業務があり、日本はそれぞれの領域でアジアをリードするような仕事がもとめられております。
③医療の高度化や高齢化に伴う医療費の膨張を受け、現状としては、健康保険組合は赤字を抱え、支払い能力が限界に来ています。そのなかで、予防医療の推進、すなわち32兆円という医療費の一部を予防領域に括りだせば良いのかという議論が産官学連携で検討されています。
④医学的に見れば予防→医療という一連のサービスも、産業論的には大きく異なります。狭義の医療産業は、公共性重視の規制型産業ですが、それに対して予防健康産業は自主性重視の市場主導型産業です。前者はBtoBtoC(製造者と提供者の取引を通じて、サービスが一般消費者に提供される)であり、後者はBtoC(製造者が直接一般消費者にサービスや製品を提供する)の事業モデルです。
⑤健康・医療領域で体内に取り入れる製品の一群は、大きく医薬品と食品に分類され、前者は厚生労働省、後者は農林水産省が主たる監督官庁です。健康食品やサプリメントは「いわゆる健康食品」などと称され、日本では一般の食品と同じ分類です。米国のFDA(Food and Drug Administration)に匹敵する包括的な行政面の管理は成されていません。
⑥医薬品はさらに医療用医薬品とOTC医薬品に分類され、OTC医薬品(Over the counter、薬局で医師による処方箋がなくても購入できる薬剤)はさらに、一般用医薬品と医薬部外品に分類されます。食品は保健機能食品といわゆる健康食品と一般食品に3分され、保健機能食品は特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品に分類されます。我々がコンシューマー・ヘルスケアと呼んでいるのは、保健機能食品といわゆる健康食品を合わせた領域で、2兆円の市場規模です。
⑦「いわゆる健康食品」というのは、これが公の名称で、サプリメントもこの分類に含まれます。健康被害などのトラブルが最も多いのもこの領域です。その一方で、なかには医薬品をも上回る有効性・安全性を持った製品も存在します。例えば紅麹(Red Yeast Rice)という健康食品は、スタチンと比較して、LDL(悪玉コレステロール)の減少とHDLの増加が顕著で、かつTG(中性脂肪)の血中濃度の低減効果が確認されています。もちろん食品なので、筋融解症などの深刻な副作用もありません。
⑧コンシューマー・ヘルスケア製品の適正な流通と使用のためには、医師・歯科医師・薬剤師をはじめとする医療・医薬の専門家のさらなる参画が不可欠です。これらの方々に積極的に参画いただくための取り組みの方向性としては、学術的見地からの関連情報の整理統合と権威付け、医療・医薬専門家に対するラーニング機会の提供、開業医や保険薬局による生活者・患者に対する情報提供、などの取り組み案が仮説的に検討されています。医師・歯科医師の方々にとっては、今後さまざまな参画と活用の機会があると思い、生活者・患者にとって大きな福音になると考えております。
⑨このように現在のサプリメント・健康食品産業は玉石混交の状態が続いていますが、我々はこれまでの研究・教育の取り組みとして、誠実に良い製品を提供されている優秀企業に着目し、これら企業のケーススタディーや公開講座を行ってまいりました。このたび、その成果を「食と健康に本気な企業たち」(かんき出版, 2006)として出版いたしました。ご講読頂ければ幸いです。