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わたしを旅行につれてって

2017-07-22 01:31:20 | 寺嶋由芙
「古き良き時代から」やって来たアイドル寺嶋由芙は、ついにホイチョイ・プロの境地に至ったようだ。


表題曲は元SUPER CARのいしわたり淳治が作詞を担当。
作曲は望月ヒカリ。「松田佳実」名義でキーボーディストとして活動されていた方で、最近「望月ヒカリ」名義で作曲家活動を開始されたということらしい。

望月は自身のブログで、本曲について、「80's の香り漂う、夏らしい1曲」と書いているが、この「80年代」こそが、本曲のキーワードだ。
曲名自体が、1987年公開のホイチョイ・プロによる映画『私をスキーに連れてって』のパロディであり、PV冒頭に映るダイヤル式テレビもまた、本作のコンセプトが80年代にあることを示している。さらなる駄目押しとして、3曲目でカバーされているのは80年代のアイドル、早見優の楽曲だ。本EP全体を通じて、80年代リバイバルがひとつの通奏低音になっていることは疑い得ないだろう。

目を転じてみると、本曲は楽曲面では、松田聖子を意識しているように思われる。とりわけ初期の松田聖子は、夏をうたった楽曲を多く発表しており、「80年代アイドル」、「夏」ときたら、残る三段噺のお題は「松田聖子」しかないといっても過言ではない。本楽曲が松田聖子楽曲を意識している一例を挙げれば、イントロ部分、音程を駆け上がるストリングスは、松田聖子「青い珊瑚礁」へのオマージュだろう。

歌唱者である寺嶋自身はPVで、麦わら帽子に水色のワンピースという、なんとも「アイドル」な格好で、楽しそうに歌い踊っている。同じ格好で写っている通常版ジャケットの表紙について寺嶋は、夢眠ねむ・成瀬瑛美との対談の中で、「こういうキメキメ系が嬉しいけど、照れちゃうから」と述べているが、確かにそれほどにこの格好は「キマって」いる。思うに、最初はBiSのテラシマユフとしてデビューした彼女が、そのけっして短いとは言えぬ道のりの果てに辿り着きたかった場所のひとつが、ここ――80年代の、この青い砂浜の上――だったのではないだろうか。


2曲目「夏’n ON-DO」(なんという曲名だ……)は、タイトル通りの音頭。
音頭だろうとなんだろうと、さらりと歌いこなしてしまうところに、寺嶋の芸達者っぷりが伺える。
怒髪天の増子直純が作詞、同じく怒髪天の上原子友康が作曲を担当。合いの手として、でんぱ組.incの成瀬瑛美が参加している。


3曲目「夏色のナンシー」は、筒美京平作曲による早見優の代表曲のカバー。シンセサイザー多用のテクノ路線を踏襲した、原曲に忠実なアレンジである。


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