ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

April In Paris Ⅲ

2013-12-04 07:25:18 | Weblog
たくさんのプレーヤーが録音を残し、ヴォーカリストも歌っているようなスタンダード曲は当然そのアレンジも多様で、作品の数だけ種類があるといってもいい。基本的に商品として録音を残そうとすると当然「個別化」を図ろうとする。だからひととはちょっと違った感じにするというのはプロとしては当たり前のことだ。で、アレンジと同様にコード進行にも手を加える。私がかけだしのころ、リアルブックはまだなかった。いろんな録音をコピーしてコードを探るのが基本だった。聞くレコードによってコードは全部違う。音楽知識がないと頭がとてつもなく混乱する。だいたいのコードをつけて先輩のアドバイスも聞いてなんとか演奏する。でも不思議なことにやっているうちにコード進行の正解がなんとなく分かってくる。いろんなアレンジの共通点も分かってくる。はじめはかなりでたらめのコードでやっていても良い曲はメロディーと和声が一体化しているので正しいものが見えてくるのだ。それはインプロヴィゼーションをやるおかげなのだ。その経験をしたあとベーシストのことを考えて低音をしっかり示したコード進行を譜面に書けば、みんなで正しい演奏ができる。いろんなコード進行といってもつきつめたら、増4度違いか、短3度の入れ替えか、ルートでない低音、転回形かそういうのが重なったものがほとんどだけど、初めて接する曲は即座にはなかなか解読できない。でも正しい演奏をするためのこういう過程を決して遠回りだとは思わない。むしろ音楽構造の理由を体で感じる貴重な体験だと思う。


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