ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Centerpiece Ⅱ

2013-07-27 06:03:05 | Weblog
この曲のメロディーは極めてシンプルだ。1、3、5・・・奇数小節のメロディーは全部一緒、そのあとに2種類のメロディーがあって、4小節で完結する。それが3回。こういうパターンのブルースの曲は無数にある。何気なく聞こえるけど、これがインプロヴィゼーションのインスピレーションを呼び起こす。ブルースという音楽の不思議だ。アドリブもどんな要素でも使える。要素というのは、主にスケールのことだけど、ペンタトニック、ヘクサトニック、ブルーノートを含んだ7音音階、もちろん12音全部自由に使える。そして使う側の演奏者の考えさえしっかりしていれば、全てが正当化される。そして一方で絶対的な小節数、中心になる音、いわゆる「キー」が存在する。その決まりがあって即興で合奏ができる。ジャズの演奏ではごく普通のことだけど、こうやって考えてみると、ブルースという素材をジャズに取り入れたいわば大発見のすごさが分かってくる。ハーモニーの面でも、12音の中で苦労して組み立ててきた和声のルールの上にブルーノートという要素が加わって選択肢の数が上乗せされている。実際に演奏している時の感覚はブルースといったら「なんでもあり」という感じだ。そして人間をリラックスさせてくれる。ブルースの構造や精神がそうさせているのだと思う。ブルースを演るときはブルースのその包容力に甘えればいいのだ。


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