電動バイクeGOと改造EV「eBOBBER」

ヤマハ Virago 250ccを電動EVに改造するプロジェクトにハマッテいます。

回生エネルギーが予期せぬ事態を??

2011-06-12 12:11:21 | 電気スクーター EV

電動バイクeGOは回生エネルギーをブレーキに利用しています。 あるお客様のeGOで実際に頻発したことから、回生エネルギーが予期せぬ問題を起こすことが解りました。 ガソリンバイクの電動化を検討されている方には興味ある問題と思いますので、その顛末を参考までに下記に説明します。

バッテリーの寿命はEVの経済性を大きく左右する問題です。 鉛バッテリーでは400回~600回の充放電で寿命となります、一回の走行距離が20kmとすれば、8000km~12,000kmで寿命となり電池交換が必要です。 リチウム電池は1,000回程度の寿命があるといわれていますが、それでも累積走行距離が20,000km程度で電池交換となります。 高価な電池を出来るだけ長持ちさせることがEVユーザーにとっては重要です。 充電器にはバッテリーが満充電になると自動的にフロート充電モードになって過充電を防ぐ機能があります。 ある電圧以上に過充電すると、バッテリーの寿命に悪影響を与えます、又は、内部にガスが発生して変形したり、最悪の場合には温度上昇によって発火する危険性があります。 

あるお客様のeGO(回生ブレーキの機能あり)でバッテリーの問題が頻発しました。 お客様の自宅は標高差約200mぐらいの小高い丘の上にありました。 一晩、充電して満杯となったeGOで毎朝通勤に利用されていた訳ですが、3ヶ月もしないうちに、夜帰宅して充電を始めると「焦げ臭いにおいがする」との相談がありました。 ひょっとして温度上昇でガスが発生してしているのではないか・・・・慌ててご自宅へ伺い、バッテリーを確認したところケーシングに膨張が見られたので、内部にガスが発生しているのは間違いありませんでした。 バッテリーの不良が原因かも・・・・と思い、バッテリーを新品に交換して少し様子を見てもらうことにしました。 さらに、3~4カ月後に問題が再発しました。 安全面の懸念があるのでそのままeGOを使って頂く訳にもゆかず、ショップへ車両を持ち帰って詳しく調べることとしました。 試験走行、充電、試験走行、充電・・・・を数日間繰り返したところバッテリーの過充電の現象は不思議なことに再発しませんでした。

アメリカのeGO本社に故障原因の照会をしたところ、「バッテリーの過充電は回生エネルギーで引き起こされている可能性がある」との回答がありました。 即ち、夜間に充電のあと、朝出勤する時にはバッテリーは満杯の状態になっています。 長い坂道(約700m)を回生ブレーキでスピードをコントロールしながら坂道を下ってゆくという利用方法を一週間のうち5日は繰り返しておられました。 下り坂ではモーターが発電機の役割を果たしてそのエネルギーをバッテリーに回収します。 バッテリーが満杯でなければ余裕があるので回生エネルギーを貯め込んでくれますが、このケースでは、走り出す時点で既にバッテリーは電気を受け入れる余地が全くない満杯の状態で、そこへ回生エネルギーがどんどん制限なく取り込まれるということになっていました。 充電器を介している場合には、満充電に近くなれば自動的にフロート充電に移行し、満杯になれば電気をカットする安全機能が働きます。 回生エネルギーはモーターから直接バッテリーへ逆流することから、安全装置がないまま、バッテリーにどんどん電気が流れ込んで過充電となってしまった訳です。 過充電を何回も繰り返すとバッテリーは大きなストレスにさらされて内部にガスが発生します。 

このケースでは走り出しからズーッと下り坂で回生ブレーキを使うという非常に稀な環境でeGOを利用になっていました。 弊社の過去7年間の経験でもこの一件だけの珍しい問題でした。 

お客様に平地へ引っ越しして下さいとお願いする訳にもゆかず、この問題を解決する方策はeGOを引き取る以外にありませんでした。

リチウム電池は電圧をコントロールすることがその健全性を担保するために特に重要です。 EV用のリチウム電池には、BMS(Battery management system)が必須です。 HVC(High voltage cutoff)を超える電圧になると、又は、LVC(Low voltage cutoff)を下回る電圧、いずれの場合にもバッテリーの健康を大きく阻害します。 

ヤマハの電気スクーターには回生ブレーキの機能がありません。 この問題に出会う以前は、「なぜ回生ブレーキの機能がないのか?」と不思議に思っていましたが、上記に説明した問題があるので、それがたとえ非常に稀なケースでも、敢えてヤマハは回生ブレーキを採用していないのだと思います。 


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3 コメント

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Unknown (電気系エンジニア)
2012-08-14 02:48:00
エンジニアとしては、通常の充電では満タンになると充電中止を行うのに、そもそも回生ブレーキでは過充電保護回路を通らず、過充電になってしまうという構造そのものが設計不良ですね・・・・
バッテリーの過充電は爆発事故の恐れもあるので回路的な対策が必要ですね・・・

プリウスやエスティマハイブリッド等の自動車の場合、
バッテリーが満タンの場合は回生ブレーキを使ってもバッテリーに充電しません。
いわゆる回生放棄という動作です。これによりバッテリーを保護しています。

ところが、現時点のプリウスも、eGO程に致命傷では無いものの、いつくかの問題を抱えています。

それは、バッテリー満タン時にはバッテリー保護の為に回生放棄を行うので、回生ブレーキが利かず、通常のブレーキのみになるので普段よりもブレーキ力が弱くなります。

もちろん、その分ブレーキを強く踏んでくれれば問題ないのですが、回生放棄された際にいつもと同じ感覚でブレーキを踏むと、普段より制動距離が長くなります。

理想的には
回生ブレーキ用発電機→バッテリー保護付き充電器→バッテリー
という回路構成とし、保護機能により回生を放棄する場合は、その分の電流を抵抗に流してやる事で電気エネルギーを熱に変えて捨ててやる作業すればよいのですが、プリウス等ではそこまで行われていないようですね。
まぁ、このような対策を行う場合
抵抗はブレーキディスク並に発熱するはずなので、放熱がネックになりますが・・・
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Unknown (masaike)
2012-08-16 10:39:43
専門的なコメントを頂き有難うございます。バッテリーの管理はなかなか奥が深くて複雑です。電気回路については僕は素人なのでケースバイケースで回生エネルギーを放棄する様なバッテリー保護の方法は難しそうで判りません。回生エネルギーはブレーキとしては重宝なのでそれを状況によって回避するのはロジックとしてどうすればよいのか???
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Unknown (Unknown)
2019-05-05 16:15:18
回生ブレーキ放棄というそうですが、そのようなケースはマレなんでしょうけどないとは限らないので、対策はなされているのかもしれませんね。 放棄したら通常のメカブレーキに移行しても強く踏まなくでもよいようには設計されていないのかな。ドライバは回生だろうとメカだろうと、意識することなく使えるブレーキでありたい。

 長い登坂道路の下り坂の場合、長時間ブレーキペダルは踏むことなくエンジンブレーキだけで済ませることも多いので、完全EV車の場合回生ブレーキを突然放棄されたら危険だろうな―。長時間だとメカブレーキは強力に発熱するだろうし。
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