”ご縁日記”木挽棟梁をめざして

出会いに偶然はないと聞く。これまで出会った方々からどんなメッセージを受け、私はどのように進むのだろうか?

木を美味しく食す“レシピ”づくり

2007-07-03 15:40:28 | 斜め34度からの視点

このところ木材や建築業界以外の方とお話しする機会が増えた。NHKなどで国産材が見直されているという報道もあったからか、業況はいいでしょう?と概ね問いかけられる。中国経済の急激な伸びによる木材需要、ユーロ高、違法伐採の取り締まりなど、輸入木材の相場が上がっているという情報が飛び交っているからのようだ。また、国産材の新生産システムという補助事業に80億の予算がつき、その恩恵を受ける全国11の林業集積地には景気のいい話もあるらしい。ちなみに九州は、大分・熊本・宮崎・鹿児島の4地域が認定を受けた。

世界で一番安価な「杉」という木材がこの経済大国日本にあるのだから、そこにビジネスチャンスを夢見る人が増えているのも頷ける。起業家の卵と呼ばれる人たちも国産材に目を向ける人が増えていると聞く。マイナーなこのブログを読んで頂いている中にも、そんな方がいることだろう。国産木材業界は、マクロで考えれば、いい方向に向かっているに違いない。いやそう信じたいものである。でも、なぜなのか木材業界は沈滞ムードだ。木材の製品流通現場にいる人たちの顔色は一様に悪い。皆口をそろえて、ベタ凪だ、これ以上悪くなることはないと願いたいよ・・・と俯き加減なのである。このギャップは何なのであろうか。確かに今は梅雨ということもあるだろう。建築材としてその多くを用いられる木材は、季節に影響を大きく受ける資材なのだから。

「食」と「住」でも書いた西日本新聞社の佐藤弘さんの視点はおもしろい。農業停滞の根っこは、日本人が「米」を食べなくなったからだ、という見方は実にシンプルで爽快だ。と同時に、抵抗する自分がいるのも事実である。ここに核心があると思う。私も含め「ご飯党」と自認している人は結構多いはずだ。お前が米を食わないから日本の農業がダメになったんだ、ともしも問い詰められたら、どれだけ自分が日ごろ米を食しているか、きっと言い訳することだろう。終いには開き直るに違いない。コンビニの陳列ケースもおにぎりと弁当で埋め尽くされているじゃないか!日本人は米が大好きなんだよ。なにトンチンカンなこと言ってるんだっ!

米と同じように、木を嫌いだ、という人は少ない。そして皆、身の回りに木がたくさんあると思っている。床、家具、建具など、たとえマンションであっても、視界に木材のない空間など無きに等しい。つまり皆十分に食べていると思っているのだ。いや、なるべく食べようと心がけさえしている。でも足りないのである。佐藤さんは、人間の歯の数を武器に我々にこう語る。野菜を砕く門歯が2本、肉を噛み切る犬歯が1本、穀物を潰す臼歯が5本。つまり、人類は、野菜:動物性タンパク質:穀物=2:1:5の割合で食べるように体の仕組みが出来ていると。なるほど、そう言われると米を食す量は足りないのかもしれない。最近激増したサプリメントを服用するくらいなら、米ばかりを食したほうが、きっと健康になるに違いない。そう思えてくる。雨ニモ負ケズで「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲ食ベ」と綴った宮澤賢治もいるしなぁ・・・では、木はどうなのか?歯のようにわかりやすい特徴を、体の中に見つけられるのだろうか?残念ながら私の知識にはない。がしかし、木青連フォーラムで、有馬先生より紹介されたデータは、参加者に波紋を呼んだようだ。(あくまでマウス実験のデータです・・・ということをお断りしておく。)

今から20年ほど前、有馬先生は静岡大学にて、つがいのマウスをコンクリート、鉄板、木でできた其々の箱で飼育する実験をした。真夏の次期は、三つの箱共に出生率、死亡率は変わらなかったらしい。ところが、解剖してみると衝撃的な事実がわかった。卵巣、精巣共に木箱のマウスに比べ、鉄箱、コンクリート箱のマウスは半分くらいしか発達してなかったらしい。これが何を意味しているのか。少子化問題を考える際、こんな視点からのアプローチがあってもいいのかもしれない。

話が交錯するが、歯の数の割合を聞いても、食生活を一新するかといえば、残念ながらそうでもない。頭では納得しても、習慣や嗜好はそう簡単に変えられるものではない。とはいえ、白飯が死ぬほど美味いお店であったり、森や木の精気を満身に浴びれる場所があれば、ぜひ行ってみたいと思うのは私だけだろうか?米と同じように、木を食べる量が少ないと直感してはいるが、だからといって木材をたくさん売ることばかり考えるのは本末転倒だ。なにごとも適度なバランスがあるはずだから。そこをわかりやすく語れるようになりたいものだ・・・でも目下の課題がある。

地球の健康のために、地域の健康のために、そして人の健康のために今、

木を美味しく食す“レシピ”づくり」が求められている。

皆さん一緒に考えていただけませんか?


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