東京に向かうスカイマーク008便、3人席の真ん中にすわったわたしの後にやってきたのは、ふわふわジャケットを羽織った茶髪女子(左)と小顔ストレートロングの茶髪に大きな丸いサングラス&白いコートにオープントウのフェラガモ履いた20代半ばのモデルみたいなおねえさん(右)です。ふたりともこぎれいだったけど、この説明の長さとわたしの関心度はぴったり比例していて、わたしはそのぴかぴかキレイな右ねえさんが気になって気になって、窓の外見るそぶりでこそこそ。サングラス越しの顔ってまぶたの状態がわかりにくくて遠慮と好奇心のハザマで苦戦する。しぜん、古い赤ワインみたいな朱色のつやつや靴をおもに見ていた。眠る態勢をととのえるおねえさんはじきにその靴を脱ぐんだけど、じゃっかんハンマートウの足をつつんでるストッキングがなんかもー上等で、これまたどれくらいの時間をかけたのか、わたしはみょうにすてきな肌色ストッキングの足先をじーと見ていた。ここまで書くとわたしはただのへんたいですが、まぁその間に手帳をひらいたり機内誌を読んだり(両側のふたりは何をひらくこともなくひたすら眠りこけ、左ちゃんは思い出したようにポカリを飲み《上空高くなるとペットボトルはあけにくそうだった》食べ残しのじゃがりこのカップに指をつっこんでいた)いったん眠りに落ちてあわてて現にかえってきたりし、寝入ってしまった右ねえさんの、キレイにしか見えない顔はパーツいかんではない、その不思議をしっかりたんのうした。
着陸前に右ねえさんの眠りは背もたれを倒した深い深い淵のなかにあって、きゃびんあてんだんとがいくらオヤスミノトコロシツレイシマスオキャクサマオキャクサマしまいにはぽんぽんとんとんたんたんてんてんたたけどつつけど爆睡。んじゃってんで制服嬢はボタン、わたしが右ねえさんの背もたれに手をやってよいしょと椅子の背を起こしたら、右さんムチウチみたくビクンとしたけど目覚めにはいたらずこんこんと眠っておった。
ガタンと着いた頃にはわたしも満足し、後も見ずたったか降りて京急線にゆられて目指す新橋、の手前、急に乗客の少なくなった車内ではたと目をやれば、斜め前に座っていたのはさっきの右ねえさんであった。あらぐうぜーんとよく見ると、その隣には、これまたモデルにしか見えない装いの甘いマスクの優男。甘いマスクの優男としか表現のしようがないその若いおにいちゃんは、もうわかりやすく右ねえさんに夢中であり、不必要に右ねえさんにさわってはきゃっと手を離し、もう絵に描いたように右ねえさんの一挙手一投足にふわふわ浮かれて幸せそうなのだった。のわりに右ねえさんのテンションはロー、とてもロー。彼氏じゃないのか?車を持たないあっしーくん?空港まで出迎えるって時間も体力も若さがあるうちのたのしさですけど、右ねえさんの表情はいっこうに晴れずシビトのような静けさであった。ビジンっちゃそんなもんかネーと考えていると、ふたりは新橋のひとつ手前で席を立ち、優男はできすぎなくらいにかっこよく彼女の荷物を肩にいくつもしょって颯爽と降りてった、で、右さんはその後ろからあのきれいなフェラガモ足を左一歩、右を一歩と出……?????
右のヒールが忽然となくなっていた。右ねえさんは、そんな、右のヒールがまるごとないなんて話はまるでナイみたいなふうに、左と同じ高さに右足つま先立って、おりてった。飛行機に最後に乗り込んできたくらい急いでいたからああなったのか、それとも足のアクシデントがあったから遅くなったのか、それとも、彼との待ち合わせを電話で打ち合わせているうちに出発の時間が刻々と迫りあわてて駆けてすっころんで――彼女が機上の人だった1時間半に、優男は完璧な身づくろいと待ち合わせに間に合うようにスケジューリングしていたのだなぁどんなにいそがしくても好きな相手には時間を割くもんなぁ幸せな恋人たちだなぁ熱愛時間が済んだらあのふたりはどんなことしゃべるのかなぁなんてあわててほかのいろんなこと考えてみたくらい、見ているわたしは驚いて、でもやっぱりキレイな人はなにしたってキレイだとおもった。わたしも半年くらい前、全力疾走してたら茄子くらいの太さの5センチヒールをぼっきり折っちゃったことある。でもあの靴は黒かったもんな。え?
着陸前に右ねえさんの眠りは背もたれを倒した深い深い淵のなかにあって、きゃびんあてんだんとがいくらオヤスミノトコロシツレイシマスオキャクサマオキャクサマしまいにはぽんぽんとんとんたんたんてんてんたたけどつつけど爆睡。んじゃってんで制服嬢はボタン、わたしが右ねえさんの背もたれに手をやってよいしょと椅子の背を起こしたら、右さんムチウチみたくビクンとしたけど目覚めにはいたらずこんこんと眠っておった。
ガタンと着いた頃にはわたしも満足し、後も見ずたったか降りて京急線にゆられて目指す新橋、の手前、急に乗客の少なくなった車内ではたと目をやれば、斜め前に座っていたのはさっきの右ねえさんであった。あらぐうぜーんとよく見ると、その隣には、これまたモデルにしか見えない装いの甘いマスクの優男。甘いマスクの優男としか表現のしようがないその若いおにいちゃんは、もうわかりやすく右ねえさんに夢中であり、不必要に右ねえさんにさわってはきゃっと手を離し、もう絵に描いたように右ねえさんの一挙手一投足にふわふわ浮かれて幸せそうなのだった。のわりに右ねえさんのテンションはロー、とてもロー。彼氏じゃないのか?車を持たないあっしーくん?空港まで出迎えるって時間も体力も若さがあるうちのたのしさですけど、右ねえさんの表情はいっこうに晴れずシビトのような静けさであった。ビジンっちゃそんなもんかネーと考えていると、ふたりは新橋のひとつ手前で席を立ち、優男はできすぎなくらいにかっこよく彼女の荷物を肩にいくつもしょって颯爽と降りてった、で、右さんはその後ろからあのきれいなフェラガモ足を左一歩、右を一歩と出……?????
右のヒールが忽然となくなっていた。右ねえさんは、そんな、右のヒールがまるごとないなんて話はまるでナイみたいなふうに、左と同じ高さに右足つま先立って、おりてった。飛行機に最後に乗り込んできたくらい急いでいたからああなったのか、それとも足のアクシデントがあったから遅くなったのか、それとも、彼との待ち合わせを電話で打ち合わせているうちに出発の時間が刻々と迫りあわてて駆けてすっころんで――彼女が機上の人だった1時間半に、優男は完璧な身づくろいと待ち合わせに間に合うようにスケジューリングしていたのだなぁどんなにいそがしくても好きな相手には時間を割くもんなぁ幸せな恋人たちだなぁ熱愛時間が済んだらあのふたりはどんなことしゃべるのかなぁなんてあわててほかのいろんなこと考えてみたくらい、見ているわたしは驚いて、でもやっぱりキレイな人はなにしたってキレイだとおもった。わたしも半年くらい前、全力疾走してたら茄子くらいの太さの5センチヒールをぼっきり折っちゃったことある。でもあの靴は黒かったもんな。え?