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別館片隅

オールジャンルにテキスト書き殴り。中途半端上等。文法超無視。
コメントはご自由に。

skinship(塚リョ)

2007-09-04 00:34:32 | 庭球(リョ塚以外)
ビジネスの場で取引先の相手と握手をするように
もしくは、朝の通学路でクラスメートを見つけて「おはよう」と肩を叩くように
極端に言えばラインダンスを踊る際に隣の人間と腕を組むように


それはひどくさり気なく
何でもないように触れあわせるのだけれど

いつしか唇同士を触れあわせることもそのさり気ないことに含まれていることを
越前はふっとした瞬間、気恥ずかしさを覚えるのだった。




彼と交わす何度目か知れないキスの後
唇を離したその後に、今さっきまで触れていたのだと実感すると、とても恥ずかしい思いに駆られる

手が触れあうのとも、肩が触れあうのとも違う
触れあう、という行為だけ見れば全て等号で結ばれるけれど、唇が触れあうことだけは他と意味が変わってくる

今、目の高さよりも少し上にあるその唇が、
自分の唇に触っていたのだとリアルに想像すると目尻が仄かに朱色を帯びた


そうした羞恥を感じ、僅かばかり越前の睫が伏せられると、手塚は不思議そうな顔をして彼の顔を覗き込む
目の前まで降りてきた彼の唇に悔しそうな視線をやり、そして越前は自らそこへと唇を押し当てた





ああ恥ずかしい









悔やみすら エゴ

2007-07-30 23:55:37 | 
よもやついてくるなんて

思っていただろうか



犬の散歩に出るだとか 街までふらりと買い物に出るだとか
長い休みを利用して少しばかりの遠出をするだとか
都会へ出ていくだとか 隣国へ引っ越すだとか

そんなスケールの話じゃあない


次元の違う世界
空が頭上にあって、大地が足下にある。
1日は24時間。1時間は60分。1分は60秒。
朝陽は東から上り夕陽が西に沈む 
基本的な構造は同じ けれど違う世界。
比喩ではなく物質的な次元の違いを知る人間はそうそういないだろう。


そんな場所まで
ついてくるなんて
思っていただろうか…?



穏やかに寝息を遊ばせている弟のベッドの縁に腰掛け、彼を見下ろす。
眼下の彼は薄い月光にその寝顔を照らされていた。
悔恨など、その顔には僅かも無い。
悔恨は、この胸の内にこそある。彼には秘めているけれど。兄のこの胸にはある。



大切な人と次元を離れてまでこんな場所にまでついてくるなんて
1%も思っていなかった



「嘘だ」

エドワードは知っていた。
自分の胸中を知っていた。
知っていて いや、知っていたからこそ?

「俺は、」

ずるい人間だ と涙の交じった声を小さく落とした。

引き離せば彼の想いも弟の想いも通じなくなることを










エドワードは知ってしまっていたのだ。


遺物

2007-05-04 17:47:49 | 庭球(リョ塚以外)
火が唐突に点いた。

外は雨の降る。昇降口の軒先。
時刻は夕方も終わりの頃。
リョーマがここにいる筈はなかった。
けれど、注視していたが為によく見覚えていた彼の後ろ姿が、そこにあった。

暗い雨雲を憂鬱そうに一度見上げた後、リョーマは傘も差さずに外へと一歩を踏み出した。
彼の項にかかる襟足の髪が僅かに宙へと翻る。

軒先を脱しようとしていたリョーマの肩を掴んだことに手塚自身が気付いたのは、その行動を起こしてからだった。

眼下で彼が振り返る。
突然肩を掴まれたにも関わらず、リョーマに驚いた素振りは無い。
けれど、相手が手塚だということを見上げて知るや、前髪に隠れた眉が怪訝そうに歪んだ。


それまで後ろ姿だったものに顔が現れたことに起因して、火は唐突に消えた。
意気地の無い、と手塚が自身に舌打てるのはこのことを振り返る時になってからだろう。
現況の手塚はただリョーマの肩に手を掛け、服飾店の軒先で突っ立っているマネキン宜しくただ呆然としていた。

「手塚部長?」

表情に倣って、リョーマの声も訝しい調子を孕む。
手塚は漸くリョーマの肩から手を退いた。
けれど不審そうに見上げてくる彼へと応える言葉が思い浮かばない。
リョーマと向き合い乍ら、その場でただ立ち尽さざるを得なかった。

ぱらら、ぱぱぱらら。然して強くもない雨脚がそんな音を上げながら水たまりで波紋を作る。
その音がやけに耳へとこびり付いた。

何をしようとして、彼を引き止めたのか。それが手塚には思い出せない。
思い出すどころか、そもそもそんなことを考えていたのかすら怪しい。

リョーマは先の一言以来、何も口にしない。
手塚も黙りこくったまま。
だから雨音がいやに響いて聞こえるのだと気付いた。




















という小噺の冒頭くさいものが気付けばデスクトップに落ちておりました
おひさしぶりですどうもこんばんは。

ループ (te+y)

2006-09-11 22:07:33 | 歌劇
不定期に、というと堅っ苦しい。
彼の態度から察するに、『思い付いた時に』。

そう。思い付いた時に、tは先に寝ているeの前髪を上げ、額にキスを落としてからベッドに入る。
既にeとyとが眠りについている3人用のベッドへ。
tがそうすることに理由も意味も本当に何も無い。
ただ『何となく』そうしたくてそうして、勝手にやっている。
何も知らず隣で眠るeの寝息はとても平穏なもの。
それを聞きつつ、tは瞼を閉じて眠りに落ちていったのだった。






隣でtの寝息が上がり始めた頃、eの瞼がそろりと上がる。きょろりと瞳が動き、tを見た。
そして腹上にかけたブランケットから手をもぞりと出し、己の額へと指先を宛てがう。
この人は何がしたいのだろうと寝顔のtをまじまじと見詰め乍ら思い、額上に当てた指でこそばゆそうに触れられた部分を擦った。
まさか彼は気付いていないだろう。
自分がこうして起きていたことなど。
彼がした悪巧み(?)に気付いていることなど。

…もっと明るいうちにすればいいのに。
そう思考を進ませれば、eの顔は少し火照った。
「…俺も結構バカかも」
両隣の寝息の挟間でeはそうして己の思考を嘆く息を吐き出したのだった。




彼は気付いていないだろう。
yが実は寝たフリをしながらこっそりと起きていることなど。
宙に投げ出された様に見えた独白も、tからeへなされた密やかなキスも、その一部始終を知っている人間がすぐ隣にいることなど。
きっと彼は朝が来ても気が付かないだろう。
yは零れそうになる笑いを必死に飲み込み、懸命に穏やかな寝息(っぽいもの)を立て続けた。

外側だけをなぞったROMANCE(引用元は某爆竹のROMANCE)(塚リョ)

2006-08-23 22:53:45 | 庭球(リョ塚以外)
馬鹿な吸血鬼はのこのこと花嫁(生贄)が横たわる部屋へやってきた。
開かれた窓からひらりと。
来るな、と強く祈っていた自分の願いなど、彼は知らない






今夜はとびきりに月が美しい。
月光も燦々と美しく。手塚は室内で深く息を吸って、肺に月の光を蓄えた。
夜はいい。
月光はやさしい。
太陽はこわい。

自分用に誂えられた花嫁へと振り返る。
彼の産毛を光らせるのは優しい月の光だけに許される。その光る様もとても美しくてつい見蕩れる。
彼は囲いの無いベッドの上に安置されている。そしてそこで静かに寝息を立てている。
月に照らされながら。
宛ら、月夜の花嫁。
うっとりとした気持ちに侵されながら、手塚は彼の元へと近付いていく。
毛足の長い複雑な模様が施された絨毯に爪先から踵まで沈む。

彼を花嫁に望んだのは己。
ある日の晩に見てそう決めた。
今回の花嫁は彼しかいないと。彼も見初めた自分のことを知っている。
ただの人間だと勘違いして、とても綺麗な人だと褒めてくれ、ひたりと顔に手で触れた。
あの時の、彼の表情を忘れない。体温の無い肌に触れて、手塚の正体に気付き、驚愕した彼の顔を。
「吸血鬼…」と漏らした彼の声はもう冷たかった。
この国に住む人間ならば、誰しも手塚の存在を知っている。
毎年、領地のどこかで生け贄を住民に要求し、その人間の生き血を吸って生き長らえている手塚のことを。
そして手塚も知っている。彼等が自分のことを疎ましく思っていることを。
けれど、誰も手塚には逆らえないことも知っている。彼らは怖いのだ。吸血鬼が。
だから大人しく生け贄を渡してくる。
手塚が気に入らないのは、彼等が自分の『花嫁』を『生け贄』と呼ぶこと。
毎年、愛しき者の血しか手塚は摂らない。
今年は、つり目で猫毛の、彼。
どれ程、彼が戦慄で硬直していても、手塚は既に今年の花嫁を彼にすると決めていたから、彼の顔色など気に留めない。

もう腕を伸ばせば、彼の頬に触れられる。
しかし、その距離で手塚は歩みを止め、ふと自分が降り立った窓辺を振り返った。
窓の外には、早くも彼を迎えに来た天使達の姿。
これから彼の血と自分の血とが交わる神聖な行為が始まるというのに、なんと不粋な。
どうせ、彼等の目は月夜が無いと見られない。
それならば月を消してしまえば良い。素晴らしくも柔らかい光を注いでくれる月には悪いが、ほんのわずかな間だけ、我慢してもらおう。
手塚はさっと手を翻した。途端に、黒い雲が空を埋め尽くし、月と月の光が掻き消えた。
光が無くとも天使達と違って手塚の目は見える。
今も尚、彼は横たわっている。月光に照らされていた部分には夜の闇が及んでいる。
ああしかしそれでも美しいことに変わりは無い。
宛ら……そう、闇夜の花嫁。
天使達の盗み見る目も無くなり、手塚は再度、彼の方を向き直った。
そして月を消した時同様に、手を宙で翻す。
そうすれば、彼の寝台に白い野薔薇が蔓を伸ばし、周囲を一斉に覆う。
手塚はまた手をひらりと舞わせる。
そうすれば、今度は窓辺一面に白百合が群生する。
薔薇と百合の佳芳が充満した部屋。手塚は止めていた歩みを進ませ、彼が眠る寝台の前で跪き、指を組み合わせた。
ゆったりと瞼を伏せて祈りの時間に入る。

こんなにも麗しい花嫁を娶れる運命に感謝を。
そして死ぬる運命の彼に哀悼を。
全身の血をこれから吸い上げられた彼は、干涸びて死ぬ。そしていつしかその体は腐敗を始め、埋葬されて跡形もなく消えていくだろう。
その儚さと切なさ、そして愛おしさに思わず嘆息が手塚の口を突く。幾度も。

どれほど、そのまま祈っていたことか。
伏せた時と同じような緩慢さで手塚は瞼を持ち上げる。
組んでいた指も揃えて解く。
そして視線を上げ、眠る彼の首に歯を立てようとしたところで、

いつの間にか寝台の上で起き上がっていた彼の視線とかち合う。

ぱち、と手塚が予定調和に無い行動へ驚いているその時、彼の唇は「ごめんね」と動いた。


手塚の胸に、リョーマの振り上げたナイフが食い込む。




奴を殺してこい、と国王から受けていた密命を忠実に実行しただけ。
純銀のナイフはその為に持たされた。
リョーマの中では、全てが予定調和だった。







闇夜の空気を振動させて、手塚の喉から悲鳴が上がった。
悶絶する手塚を見ないようにして、リョーマは更に深く押し込んだ。
瞳孔の開ききった手塚の目がリョーマを見定め、彼はにんまりと笑ってみせると、悲鳴を迸らせ乍ら、ナイフを突き立てるリョーマの腕を掴んだ。
その感触に、びくりとリョーマの身が強張る。逆に殺される。そんな焦燥がリョーマの中を駆けた。
この状況から噛み付かれれば、彼は生き血を得、回復するだろう。彼が今、望んでいるのは血。
そして今、血を体内に巡らせているのはリョーマだけ。
このままでは。
殺される。

けれど、手塚の手は、リョーマの腕を助け、深く、深く、自身へとナイフを食い込ませていった。

「さあ、深く」
断末魔が上がる。
月を覆っていた黒雲が霧散する。
窓辺の白百合と寝台の野薔薇が一斉に枯れて散る。

リョーマの手を握っていた手塚の手が、どろりと腐って融解した。
そしてそのまま、腐敗は腕を駆け上がり、体を溶かし、顔を融かした。
眼窩が露になり、鼻筋がへこむ。唇は干涸び、また融けて。
最後には跡形もなく消え、彼は闇に逝き、闇に解けた。






結局、部屋に残ったのはリョーマと、彼の身に突き立てた銀のナイフ。
ああ。あんなにも麗しい人を殺めてしまった。
仕方なかった。仕方なかったのだ。
彼を殺さねば、この先、永遠に犠牲が出続ける。
けれど殺したくはなかった。
だから今宵、この生け贄を捧げる部屋へ来るなとリョーマは強く望んでいた。
彼が来なければ、彼を殺さずにすむ。
彼を殺さなければ、この恋物語は腐りもせず、跡形もなく消えていくこともなかっただろう。

枯れ果てた野薔薇を一つ摘んで、その場に跪き、リョーマは祈りと祈りの歌を捧げた。



蒙古斑(oe)

2006-08-01 21:41:12 | 歌劇
部屋着のハーフパンツはウエスト部がゴム。
引っ張れば、びよーんと間抜けに伸びる。
そんなeのハーフパンツのウエスト後部に指を突っ込んで、oがびよーんと引っ張った。
何事かとeが振り返れば、oは中を覗き込んでいて彼の髪が額に垂れ下がっている様が目に映り込む。
「…なに?」
「ホントにまだ子供なんだ、って思って」
oは顔を上げ、引っ張っていた指を離す。
伸張されていたゴムは音を立てて元のサイズへと戻った。
「………」
eはゆっくりとoへ振り返り、彼の腰へ水平に腕を伸ばし、ぐるりと彼の身を反転させた。
目の前いっぱいにはoの背中。
oのスウェットのウエストもゴム内蔵。
自分がされたように、eはoのウエストを後ろから引っ張った。そしてまた同じように中を覗き込む。
「…………無い」
「俺はもう大人だから」
なんなら前も見る?
戯けた顔で肩越しに振り返られ、eはこっくりと赤い顔で頷いた。


テレビジョン観覧車 (t+e)×y

2006-07-23 00:56:27 | 歌劇
うれしそうにyがそれを眺める度、eを捕まえてはtは何かもの言いたげな目をする。

「よその男が買い与えたものが部屋に置いてあるのが気に食わないって感じ」
eはその時のtの目をそう形容する。
事実、eがtへとそう指摘すれば、tはその通りだと神妙な顔でうなずいた。

「でも、その代償で、」
ぱかん、とeは折畳式の携帯を開き、tの眼前へと画面を突き付けた。
「このyの表情で、かつ、楽しそうなyが家で見られるワケだからさ」
「…許せるといえば、許せる」
「でしょ?」
「でも…」
「許せない?」
小首を傾げて尋ねれば、歳よりも幾分か幼く見える不貞腐れた顔でtが再びうなずく。
「許せない、っていうか、許したくない」
「tもワガママだよね」
くすりとeは小さく苦笑を浮かべる。
そしてその微苦笑を薄れさせてから、ゆっくりと観覧車前でうきうきとしているyを振り返る。
「…でもまあ、」

俺も同じ気持ちかも。
口の中でそう呟いたeに穏やかな表情は無かった。

スカートひらりひるがえし 走り出したい時がある (y+t)×e

2006-07-19 01:15:59 | 歌劇
こっちおいで、と手招きされ、夕飯終わりの食器を洗う手を止めてまで容易く近寄ってしまうeが、
全て悪い。

…多分。




キュッ
と捻られる水道のコックは無条件に夏のイメージ。
eが立てたその音を聞きながら、yはクイックルワイパー片手に部屋の隅を華麗にターン。
くるりと回る際は華麗さをより引き立たせる為、空いたもう一方の手を垂直に上げて。



ぎゃー!
と可愛げも無い悲鳴が上がり、yはブレーキを利かせてターンを止め、声のした方向を見た。
この部屋は3人と2匹(近頃、tが犬を飼い出した)しか住んでいない。
響いた悲鳴は人間のもの。当然、yのものなどでは無いから、残りは二人。tとe。

yが視線を遣った先には洗濯物を畳む途中らしく周囲を折り畳んだ衣服に囲まれたtと、その脇に立ち、tに片腕を捕まれて足下から小さな扇風機で風を送られているe。
eは何故かハーフパンツが隠れる程にぶかぶかなワイシャツをきっちりと着せられていた。
下から送られる扇風機の風で、ワイシャツの裾はひらひらと揺れる。そしてそれを掴まれていない方の手でeは必死に押さえつけようとしているらしかった。
そんなことをしているeの表情は慌てふためき、翻って逃げようとするeの手をがっちりと掴むtは悪戯が成功したことに酷く楽しそうな様子。

ハーフパンツを履いているのだから、シャツの裾が捲れたところで押さえる必要ないだろうに。

それでも、裾が捲れないように押さえつけるeの姿は必死そのもの。
yは手にしていたものを床に放り出し、tとeへと小走りに駆け寄った。
近付いてきたyに気付き、tは「モンローみたいじゃない?」と笑顔でeを指差した。
yはきらきらした目でtにこっくりと大きくうなずき、ひらひらとシャツの裾を舞い上がらせているeの足下にころんと転がった。
「うわ、このアングル、まじやばい」

ひゅーひゅー、とyが冷やかせば、eが声にならない声を上げた。


事の発端はザテレビジョン携帯サイトを御覧下さい(ye)

2006-07-16 04:30:29 | 歌劇
炊事洗濯料理などなどなど、の家事は当番制。
今日の料理番はyだった。

どどん、とeの前に置かれたのは真っ黒に焦されたチャーハン1皿。
向かいに座るtの前にもチャーハン皿は乗せられているが、彼の分はきつね色程度。y自身の分もtのものと変わらない。
eは今一度、自分の今日の夕飯を確かめ、それからゆったりと隣のyへと顔を向けた。
「俺いじめなの?これは」
「おこげ大絶賛だったからオレからのサービスなわけよ」
「おこげと炭は違う…」
「ふはは。食い物の恨みは恐ろしいということをその身で体感するがいい!」
そしてyはがつがつと己の分をかっ食らい始めた。
tはeを置いて食べ始めても良いものかどうか悩んでいるらしくスプーンを握った手が所在無げに宙で止まっている。
「e、俺の、半分わけるか?」
「…ううん。いい。ありがと」
わーははは、と有頂天なyを横目で見乍ら、eは炭と化したチャーハンを掬った。
思いきって口に入れる。苦い。
とても食べられたものではないと思うが、それでもeはきちんと咀嚼して飲み込んだ。
そんなeをじっと見つめながら、tが心配そうな面持ちで口を開く。
「コゲってガンの原因になったりするって聞いたことあるし、やっぱり俺の半分やるよ、e」
tのその一言で、ガハガハと笑いながらチャーハンを頬張っていたyの手がぴたりと止まる。
あまりの急ブレーキぶりに、スプーンの端から米粒がぽろりと落ちた。
「ガン…?」
不安気な声色でyが恐る恐る尋ねれば、eが意地悪く目を細めた。その手には二口目の黒焦げチャーハン。
「そうだよ」
「ガ、ガン…、ってあのガン?」
「あのガン。本当かどうかは知らないけど、火のないところに煙は立たないっていうし。…なのに、yは俺にこの仕打ちだもんね。さぞかし、俺に早死にして欲しいんだ?」
「…な、ないないない!思ってない!そんなこと!!」

生きろ! とyはeの手をがっしりと掴んだ。

K池T平 ([e+y]×t)

2006-07-12 23:22:13 | 歌劇
映画のCMだったり、
ニキビ用洗顔料のCMだったり、
歌番組だったり医療ドラマだったりバラエティだったり。

彼をテレビで見つける度に、eとyはそちらを向く。

「なんていうか……。ねえ、e?」
「あ、やっぱりyも思った?」
「そりゃ思うでしょ。なんてったってさあ……」

グリーンから夏らしいスカイブルーの色へ、ソファカバーは変わった。
その上にちょこんと乗っかる二人組がぽそぽそと密談し合う様を遠目に眺めつつ、tは商売敵だから気になるのだろうかと首を傾げた。
アイドル、というカテゴリでくくれば、彼等と彼はそう呼んでも差し支えは無いだろう。
しかし、首を傾げる一端で、話題に入れないことや、まったく知らない誰かのことを囁かれていることに、小さな嫉妬心も感じる。

「犬っぽいもんねえ」
「そーそー。しかも子犬?」
「うんうん。子犬子犬」
「見る度に思っちゃうよね、」

犬っぽい、というカテゴリでくくればtと同系列だと言っても、差し支えが無いような有るような。