【掲載日:平成22年7月30日】
わが恋は 千引の石を 七ばかり
首に繋けむも 神のまにまに
逢えぬ苦しみ
朝明けと共に 相手を思い
日中一日 逢わんとの手立てあれこれ
策破れての 落ち込み
日の暮れが さらなる傷心を誘う
延べる床闇 浮かぶ面影の揺らめき
夢の逢は 苦しかりけり 覚きて かき探れども 手にも触れねば
《目ぇ覚まし 手探りしても 触られん 夢で逢うんは もどかしこっちゃ》
―大伴家持―〈巻四・七四一〉
夢にだに 見えばこそあらめ かくばかり 見えずしあるは 恋ひて死ねとか
《せめてにも 夢に出んかと 待ってても 出て来えへんの 恋死ね云うことか》
―大伴家持―〈巻四・七四九〉
かくばかり 面影のみに 思ほえば いかにかもせむ 人目繁くて
《面影が 浮かび浮かんで 仕様ないで どしたら良んや 人目多いのに》
―大伴家持―〈巻四・七五二〉
一重のみ 妹が結ばむ 帯をすら 三重結ぶべく わが身はなりぬ
《してくれる 帯は一重で 足ったのに 三重結ぶほど 恋痩せしたで》
―大伴家持―〈巻四・七四二〉
人間 追い詰められれば
覚悟が決まる
〈こうなれば もう 逢うしかない
逢っても逢わなくても 世間は 許さない
腹を括るが 上策〉
開き直りに 活路を見い出そうとする 家持
恋死なむ そこも同じそ 何せむに 人目他言 言痛みわがせむ
《恋死にそやで 他人の非難を 逃れ様と 逢うん止めても 同じこっちゃ》
―大伴家持―〈巻四・七四八〉
わが恋は 千引の石を 七ばかり 首に繋けむも 神のまにまに
《かまへんで 千人引きの 石七つ 首掛ける様な 苦し恋でも》
―大伴家持―〈巻四・七四三〉
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます