令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(一)(16)千(ち)たび立つとも

2010年07月09日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年7月23日】

今しはし 名のしけくも われは無し
             妹によりては たび立つとも



恋の喜び 
大きければ  大きいほど
世間の眼は ひややかさを増す
うらやみ やっかみ ねた
まして 正妻とは言えないまでも おみなめの喪中
口実を得た  
口さがない  非難が重なる
チラとみる  通りすがりの視線
他人たにんは まだしも
身内までもの  無言責め

非難中傷の中 
家持・大嬢  
世に二人  取り残されたかの 心もち
同病の慰め合いに 互いをいや

はむは 何時いつもあらむを 何すとか かのよひあひて ことしげしも
《逢うのんは 仰山ぎょうさんあるに 間運まん悪い 晩にうたで えらい噂や》
                         ―大伴坂上大嬢―〈巻四・七三〇〉 
わが名はも 千名ちな五百名いほなに 立ちぬとも 君が名立たば しみこそ泣け
《うち噂 なんぼされても かめへんが あんたの中傷うわさ くやして泣ける》
                         ―大伴坂上大嬢―〈巻四・七三一〉 
今しはし 名のしけくも われは無し 妹によりては たび立つとも
《お前との 中傷うわさやったら かめへんで 千遍せんべんされても 辛抱しんぼできるで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七三二〉 
うつせみの 世やもふた行く 何すとか 妹に逢はずて わが独り寝む
《人生は 二度れへんで なこっちゃ お前逢わんと 独り寝るのん》
                         ―大伴家持―〈巻四・七三三〉 

わが思ひ かくてあらずは 玉にもが まことも妹が 手にかれむを
《独り寝で 恋苦くるしむよりは 玉なって お前の手ぇに 巻かれてみたい》
                         ―大伴家持―〈巻四・七三四〉 
玉ならば  手にも巻かむを うつせみの 世の人なれば 手に巻きかたし
《手に巻いて あんた玉なら 離せへん 生身なまみの人は そはいかんがな》
                         ―大伴坂上大嬢―〈巻四・七二九〉 
他人の噂  射す眼
気にせずとは  思いながらも
悶々もんもんやるかたない 家持と大嬢


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