世界の中心で

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「小指」

2016-05-31 10:21:34 | 日記

 エアコンが苦手というカノジョが開け放った窓の下で、カノジョはコミックを、ボクはパソコンの雑誌を眺めている。背もたれにしているベッドが暑い。蝉の声と、隣家のエアコンの室外機がたてるブーンという音も暑苦しい。その向こうから時々風に乗って電車の音が聞こえてくる。
 
 ボクは少し退屈して、横目でカノジョの膝小僧を眺めていた。
 体育座りをした長い脚の、ツルツルで、ドキドキの膝小僧。
 その視線に気づい韓國 醃肉汁たからなのか、カノジョはゆっくりと右足を上げると、左膝の上にその足首をかけ、つま先を少し高く掲げながらボクの方をチラと見て言った。

「ねぇ、ジュンちゃん、こんなことできる?」

「なんだよ」と、ボクは今初めてカノジョの脚に気づいたみたいに雑誌から目を上げて、さも面倒くさそうに言う。ずいぶん久しぶりに口を開いたような気がして口の中がねばねばする。

「ほら、こうしてさ……」と、カノジョは足の5本の指を開いたり閉じたりしてみせた。
 グーパー、グーパー。 
 まるで、風で膨らむレースのカーテンの裾を掴もうとするみたいに、真っ赤なペディキュアが見えたり隠れたり。
 
 それくらいならボクにもできる。汚ねぇ足だけど、
 グーパー、グーパー。
 
 カノジョはボクの足を見てフフンとひとつ鼻で笑うと、動かしていた足の指を、パーの形でいったん止めた。そうしてから、ひとーつふたーつと指折り数える時の手の動きと同じようななめらかさで、親指から人差し指、中指……と一本ずつ韓國 醃肉汁順番に折り曲げて少しずつグーの形にしていく。
 
 なんだそれは。どうしてそんなになめらかなんだ。
 ボクが今まで一度だって見たこともなければ、やってみようとさえ思ったことのない動き。できるわけがない。指がつりそうだ。
  
 いや、ひょっとして、そういうことができるのが当たり前で、できないのはヒトとしてボクの方がおかしいのだろうか?

「なーんだジュンちゃん、できないの?」

 案の定カノジョはおかしそうにケラケラ笑う。
 それから韓國 醃肉汁今度は、両足の指を床にぺたりと並べてボクに見せながら、もう一度親指から薬指までをひとつずつ折り曲げていった。そうして残った小さな指だけをピンと立て、作り声で「バイバーイ」と言いながら小指を左右に振って見せる。

 右の小指で「バイバーイ」
 左の小指が「バイバーイ」

「できる?」
「できないに決まってるだろ」