ニキを荼毘に付した二日後、鎌倉へ。
ニキが逝った先週の日曜、いったん断っていた取材依頼を受けることに決め、
カッシーに電話した。「木曜、やっぱり鎌倉行きます」
そのまま臥していては、胸から蓮の花が生えてきそうだったから。
木曜当日の朝、目覚めるとき ニキの居ない現実を思い出し、横たわったままひどい眩暈を覚えた。
思わずニキが寝ていた辺りに腕を伸ばした瞬間、掌にふと温かな衝撃があり
「大丈夫、ここに居るよ」というメッセージがふわっと心に染み込んできた。
日本語の猫声が聞こえたわけでは決してないけど(笑)、それはとても親密で優しい感覚だった。
とたんに胸の憂いがすかっと晴れ、自分でも不思議なほど元気になった。
出がけに、すみ太さんから美しいお花が届いた。
ニキがいつも日向ぼっこしていた出窓に飾った。
透明なニキが いつもの癖でそっと花の匂いをかいでいるような気がした。
この日は、五月らしい陽気で、鎌倉界隈は修学旅行や遠足の子供たちで溢れかえっていた。
すれ違う人たちはみんなどことなくハレの顔。私もなんとなくハレの気分に。
取材先は、鶴岡八幡宮前の鎌倉彫の老舗「博古堂」。4代目当主 後藤桂子さんのインタビューや
工房での取材は非常に興味深く、伝統とモダンが融合した作品はどれもすこぶる魅力的だった。
お土産に、ぐり唐草模様がさりげなく入った円い小鏡を購入。心誘う深遠な漆塗りの朱紅。
取材後、鎌倉ガイドブックも手がけたカッシーの案内で、のんびり鎌倉散策。
美味しいお蕎麦屋さんや、アジア風味の市場、隠れ家的なショップ、穴場の神社などなど
わくわくするようなカマクラプチトリップ。
GW終盤にニキの容態が急変して以来、初めて人心地ついた気がした。
江ノ電に乗って 極楽寺駅で下車。線路伝いに聴こえるせせらぎが、閑静な温泉街を彷彿させた。
私はもちろん、ガイドブックを書いたカッシーも実は方向音痴。
にも拘らず、心のおもむくまま歩いていくと、先々に風情ある神社が。
これは、踏み切りの向こうに神社という、シュールなシチュエーション。
奥の神社はなかなか霊妙な雰囲気。ニキの生まれ変わりを願って、参拝。
色づく寸前の紫陽花が左右に累々と連なる坂の向こうに、思いがけず海が見えた。
カッシーとふたりでなんとなくウキウキくだる坂道。
不意に強い潮の香りがして、海に出た。夕刻の波は思いのほか荒かったけど
帽子がびゅうと飛んで行きそうなほどの海風が 妙に快かった。
「今日はなんか猫に、このヒトをいろいろ案内してあげてって引っ張られてるみたいな感じがした」
とカッシーは笑っていた。実際、私はニキがちゃっかり着いてきているように思えてならなかった。
☆☆
明けて金曜は、今年一番の真夏日。
夜、レイちゃんのお誘いでキャットストリートにあるhhstyle.comのイベントへ。
合流したキムリエさん&ちよさんたちとニキの話ができて、しみじみ癒された。
この時も、やっぱりすぐ傍でニキがふんわり見護ってくれているような温かな心地がした。
ハカセの案内で場所を変え、夜遅くまで大勢で賑やかに飲んで、すごく楽しい時間を過ごした。
つい数日前の壮絶な記憶が、遠い昔のような気がした。
☆☆
土曜。昼頃に覚醒。前夜、シャンパンを飲みすぎたせいで少し二日酔い。。
うっかり珈琲が切れていたことに気づき、着替えて近所の やなか珈琲へ。
豆を焙煎してもらっている間、珈琲を飲みながら、カウンターにあったヨーロッパのカフェ文化史に
ついて書かれた本をしばし読む。ふくいくたる香りに包まれた、密やかな幸福時間。
やなか珈琲のパッケージに使われている木版画も 味わい深し。
その足で、なんとなく近隣をぶらぶらお散歩。
靴屋さんちのクロちゃん(推定8歳♂)。はにかみながらも背中を撫でさせてくれた。
路地裏でよく逢うこの子はいつ見ても目ばりが濃いなあ。。
たまに逢うこの子は うとうとシエスタ中。
ラムフロムなど近所のギャラリーやショップにもより道しては、ちまちまお買い物。
ハンドメイドの髪留めを買ってみたり、オーガニックショップで葱やパンを買ってみたり。
カフェでごはんを食べ、白い百合を買って帰宅したら、
ちょうど16時半だった。そう、人工スコールの時間―
―さっき、早朝4時半の人工スコールを聴いた。
昨夜からの雨で濡れそぼったベランダの緑を見つめたまま しばらく動けなかった。
先週の日曜、腕の中でニキが逝ってからちょうど一週間。
まだ少し ながい夢のなかにいるような気がしている。
ニキが逝った先週の日曜、いったん断っていた取材依頼を受けることに決め、
カッシーに電話した。「木曜、やっぱり鎌倉行きます」
そのまま臥していては、胸から蓮の花が生えてきそうだったから。
木曜当日の朝、目覚めるとき ニキの居ない現実を思い出し、横たわったままひどい眩暈を覚えた。
思わずニキが寝ていた辺りに腕を伸ばした瞬間、掌にふと温かな衝撃があり
「大丈夫、ここに居るよ」というメッセージがふわっと心に染み込んできた。
日本語の猫声が聞こえたわけでは決してないけど(笑)、それはとても親密で優しい感覚だった。
とたんに胸の憂いがすかっと晴れ、自分でも不思議なほど元気になった。
出がけに、すみ太さんから美しいお花が届いた。
ニキがいつも日向ぼっこしていた出窓に飾った。
透明なニキが いつもの癖でそっと花の匂いをかいでいるような気がした。
この日は、五月らしい陽気で、鎌倉界隈は修学旅行や遠足の子供たちで溢れかえっていた。
すれ違う人たちはみんなどことなくハレの顔。私もなんとなくハレの気分に。
取材先は、鶴岡八幡宮前の鎌倉彫の老舗「博古堂」。4代目当主 後藤桂子さんのインタビューや
工房での取材は非常に興味深く、伝統とモダンが融合した作品はどれもすこぶる魅力的だった。
お土産に、ぐり唐草模様がさりげなく入った円い小鏡を購入。心誘う深遠な漆塗りの朱紅。
取材後、鎌倉ガイドブックも手がけたカッシーの案内で、のんびり鎌倉散策。
美味しいお蕎麦屋さんや、アジア風味の市場、隠れ家的なショップ、穴場の神社などなど
わくわくするようなカマクラプチトリップ。
GW終盤にニキの容態が急変して以来、初めて人心地ついた気がした。
江ノ電に乗って 極楽寺駅で下車。線路伝いに聴こえるせせらぎが、閑静な温泉街を彷彿させた。
私はもちろん、ガイドブックを書いたカッシーも実は方向音痴。
にも拘らず、心のおもむくまま歩いていくと、先々に風情ある神社が。
これは、踏み切りの向こうに神社という、シュールなシチュエーション。
奥の神社はなかなか霊妙な雰囲気。ニキの生まれ変わりを願って、参拝。
色づく寸前の紫陽花が左右に累々と連なる坂の向こうに、思いがけず海が見えた。
カッシーとふたりでなんとなくウキウキくだる坂道。
不意に強い潮の香りがして、海に出た。夕刻の波は思いのほか荒かったけど
帽子がびゅうと飛んで行きそうなほどの海風が 妙に快かった。
「今日はなんか猫に、このヒトをいろいろ案内してあげてって引っ張られてるみたいな感じがした」
とカッシーは笑っていた。実際、私はニキがちゃっかり着いてきているように思えてならなかった。
☆☆
明けて金曜は、今年一番の真夏日。
夜、レイちゃんのお誘いでキャットストリートにあるhhstyle.comのイベントへ。
合流したキムリエさん&ちよさんたちとニキの話ができて、しみじみ癒された。
この時も、やっぱりすぐ傍でニキがふんわり見護ってくれているような温かな心地がした。
ハカセの案内で場所を変え、夜遅くまで大勢で賑やかに飲んで、すごく楽しい時間を過ごした。
つい数日前の壮絶な記憶が、遠い昔のような気がした。
☆☆
土曜。昼頃に覚醒。前夜、シャンパンを飲みすぎたせいで少し二日酔い。。
うっかり珈琲が切れていたことに気づき、着替えて近所の やなか珈琲へ。
豆を焙煎してもらっている間、珈琲を飲みながら、カウンターにあったヨーロッパのカフェ文化史に
ついて書かれた本をしばし読む。ふくいくたる香りに包まれた、密やかな幸福時間。
やなか珈琲のパッケージに使われている木版画も 味わい深し。
その足で、なんとなく近隣をぶらぶらお散歩。
靴屋さんちのクロちゃん(推定8歳♂)。はにかみながらも背中を撫でさせてくれた。
路地裏でよく逢うこの子はいつ見ても目ばりが濃いなあ。。
たまに逢うこの子は うとうとシエスタ中。
ラムフロムなど近所のギャラリーやショップにもより道しては、ちまちまお買い物。
ハンドメイドの髪留めを買ってみたり、オーガニックショップで葱やパンを買ってみたり。
カフェでごはんを食べ、白い百合を買って帰宅したら、
ちょうど16時半だった。そう、人工スコールの時間―
―さっき、早朝4時半の人工スコールを聴いた。
昨夜からの雨で濡れそぼったベランダの緑を見つめたまま しばらく動けなかった。
先週の日曜、腕の中でニキが逝ってからちょうど一週間。
まだ少し ながい夢のなかにいるような気がしている。