読書日記と読書ノート 第三部(2013年6月~2015年6月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

時事7-2  晴山等、「欧米諸国の『公務員の政治活動の自由』」-その2-(2/3)

2017-09-19 06:31:48 | 時事

【Ⅱ】アメリカの公務員法(P9~)

(1)ハッチ法(1939年制定、翌年追加法制定➡法日本の公務員法に影響を与えた)

①内容

ⅰ)連邦の行政機関の職員は、選挙の結果に影響を及ぼす目的をもって自らの権限又は影響力を行使してはならない。

また、「政治の運営または政治的宣伝への積極的な参加」が禁止される。

ⅱ)職員は、投票権および「すべての政治的問題と候補者について意見を表明する権利」を有する。

 

②立法理由

➡メリットシステムを保障し、職員が意に沿わない政治的行為をしないようにした。

 「ハッチ法の眼目は、政党の活動が職員人事、選挙過程、法律施行の適正さを阻害しないようにすることにある。」(判例)

 

※アメリカで公務員の政治活動の自由を制限する一番の目的は、政党勢力が職員に対して、人事権(免職を含む)を通じて、政治的行為(献金、集票など)を強要することを防止することにある。

 

(2)1993年法改正

①内容

 ⅰ)勤務時間外の職員に原則として一般市民と同様の政治活動の自由を保障する。

 ⅱ)公務に従事しているとき、または勤務中の外観を呈しているとき(制服着用、公務所の中、など)、政治活動をしてはならない。

②具体例

・勤務中の政党バッジ着用は不可。

・職員が自分の車のバンパーに政党支持のステッカーを貼り、政府機関の駐車場に駐車できる。

・職員は、勤務時間中でなければ、所属する職員組合支部の事務所で、政治活動を行うことが出来る。

・州職員たる高校教員が、教育委員会による予算方針を批判する投稿を地方紙にしたところ免職となった。裁判では、処分は表現の自由を侵すとして取り消された。(旧ハッチ法下の事件)

  

【Ⅲ】イギリスにおける国家公務員の政治活動の自由(P63~)

(1)〈規制の仕方〉

①職種によって強い規制がかかる公務員と、ゆるい規制に止まる公務員とに分ける。

(A)いわゆる現業職にあたる機械的労務的作業に従事する公務員については、すべての形態の政治活動に参加することが出来る。➡「自由類型」

(B)管理職や専門職など、裁量的業務につく公務員については、全国的な政治活動は禁止されるが、地方の政治活動は許可の申請を出してすることが出来る。➡「制約類型」

(C)1984年以降、「中間類型」を設定して、制約類型からかなりの数の公務員をこちらに移した。「中間類型」の職員は全国的活動も許可を得ればすることが出来る。

 

 〔全国的な政治活動と地方的政治活動の例〕

 全国…政党の国会又は欧州議会の領域における役職や候補者になること、全国的な政治問題について公に話したり、本や論文で見解を表明すること、など。

 地方…自治体選挙の候補者になること、党の地方組織の役職につくこと、地方の政治的問題について公に話したり、本や論文で見解を表明すること、など。

 

②国家公務員は

・職務中、制服で、または公的施設において政治的活動に参加してはならない。

・公務員の公職資格において、党派的政治集会に参加してはならない。

 

(2)組合活動と政治活動

・労働組合の年次大会で、「制約類型」に属する現職公務員が、政治的論争問題についてスピーチするのは普通のこと。

・公務員が労働組合によって組織された活動に参加するために許可を得る必要はない。

・労働組合代表は、公務員としてではなく組合代表として政府の政策にコメントすることが出来る。

 

(3)公務員の選挙活動としての戸別訪問

「制約類型」(地方選挙の際の戸別訪問)、「中間類型」(全国及び地方選挙の際の戸別訪問)にある公務員は、それぞれ許可を得て戸別訪問ができる。パンフレットのポスティング活動は

自由にできる。

 

(つづく)


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