天使の図書館ブログ

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Grand Stroke-13-

2012-08-27 | エースをねらえ!

(※漫画「エースをねらえ!」の二次小説です。内容にネタバレ☆等を含みますので、一応ご注意くださいm(_ _)m)


 さて、今回からまた、極めて描写力があやしく乏しい、ウィンブルドンの試合4回戦目となりますww

 バーバラ・モアランドっていう選手はべつに、ひろみにとって宿命のライバルとかなんとか、そういう存在ではないんですけど――まあ、どの女子プレイヤーにとっても、倒すのが極めて困難な、目の上のタンコブ的存在なんだとは思います(^^;)

 とりあえず彼女についてモデルはいないんですけど、今回テニス関係orウィンブルドンのことを軽くググってみる過程で……「そーいえば、あの選手はその後どーしたんだろう?」って思いだした選手について、ウィキをさらってみたりしました。

 んで、ウィンブルドンのウィキに、「センタコートで初めて引きこみ屋根が使われたのは、ディナラ・サフィナ対アメリ・モレスモ戦である」って書いてあるのを見て、「うんうん、その試合わたしも見てたよ♪(^^)」って思うのと同時に、モレスモ選手っていつ引退したんだろうなあ~と思い、彼女のウィキまで飛んでいくことに。。。

 う゛~んわたし、彼女の試合を見てて、「容姿的に男みたいだ☆」って思ったことは一度もないんですけど――そういうふうに周囲から言われる選手だったっていうの、ウィキを読んで初めて知りました(^^;)

 しかも、マルチナ・ヒンギスに「半分、男よ」と言われたことで、レズビアンであることが発覚とかってww

 その上、次の試合でモレスモはヒンギスと戦って負けてるんですよね

 なんていうかわたし、ウィンブルドンというか、テニスの世界って、みんなスポーツマンシップにのっとった人格者が多い……みたいに、多少錯覚してるところがありまして(それというのもすべて、純白のテニスウェアのせい・笑)、やっぱり多少はそういうドロドロ(?)した噂話とか、裏にはあるのかな~なんて、初めて思ったのです。。。

 いえ、それまで試合中は真剣勝負でも、コートの外に出たら仲がいい……みたいな選手同士の場面しか、見たことがなかったものでww

 でもまあ、「あいつはテニスは出来るが、人間的には気に入らない」とか、口に出す・出さないは別として、ある部分においては色々あるのかもしれないですよね(人間だもの・by相田みつを☆)

 え~と、そんなわけで(どんなわけだか^^;)、エリザベス・コナーとバーバラ・モアランドの確執(?)っていうのは、モレスモとヒンギスのウィキを見て思いついたエピソードだったりしますm(_ _)m

 まあ、わたしの書いてるモアランドっていうオリキャラは、容姿が男性的でプレイスタイルも男性的……っていう設定ではあるんですけど、なんていうかこう、宝塚的に女性が見てても「キャー(≧∇≦)」ってなるタイプの女性像を想像しながら書いてました。。。

 なんにしても、バーバラの心理描写的なことは別として、試合描写的に間違ったこと書いてないといいな~と願うのみです(極めて初歩的なことでも、文字に置き換えた途端に、なんかよくわかんなくなるので)←アホ☆

 それではまた~!!



       Grand Stroke-13-

          GAМE-3-

 選手控え室を出、廊下を歩いてコートへ向かう途中、バーバラ・モアランドは「何故勝ち上がってきたのが日本のヒロミ・オカで、エリザベス・コナーではなかったのだろう」と口惜しく思っていた。

(あの女には、他でもないこのわたしの手で、引退の引導を渡してやりたかったのに)

 それも試合でこてんぱんにのしてやり、無様なストレート負けをさせてやることによって、だ。

 にも関わらず、今日の自分の対戦相手はヒロミ・オカ……(今日も観客が満足しない、つまらない試合になりそうね)と、そんなふうに思いながら、ベンチで仕度を終えると、バーバラはヒロミと軽い打ち合いを開始した。

 やがて、「Time」と審判から声がかかり、コイントスが行われる。サーブ権はバーバラに渡り、第1セットの第1ゲーム目は、190キロ台、あるいは200キロ級の<殺人>サーブが次々決まったことにより、モアランドがラブゲームでキープした。

 この間、ヒロミはなんとかタイミングを合わせて、モアランドの強烈なサーブを打ち返そうと試みるも、ラケットに当てるのが精一杯というところであった。

(ふふん。あなた程度の実力じゃ、そんなところでしょうね)

 バーバラは相手側のサービスを破るべく身構え、サイドラインぎりぎりといっていいヒロミのサーブを打ち返し、長いラリーへと持ちこんだ。

 ヒロミが打ち返しても打ち返しても、諦めずにしつこく喰らいついてくるタイプのプレイヤーであることは、モアランドも過去の対戦経験からよくわかっている。

(でも、どんなに頑張ったところで、やっぱりあなたはわたしには敵わないのよ!)

 ヒロミ・オカを相手にする時には、ラリー戦には持ちこむなと、他の選手のコーチであれば、誰もが忠告したに違いない。だが、モアランドは自分の監督のそんな言葉を完全に無視していた。何故ならば、バーバラもまたラリー戦を得意としており――打ち合いが長く続けば続くほど、相手側がやがて集中力を欠くか、あるいは緊張感に耐えきれなくなってミスする瞬間を、彼女は捕えるのを得意としていたからである。

 結局、二十八回も続いたラリーを制したのは、モアランドのほうだった。

 15-0。

 このあともバーバラは、エースを一度取られた他は、自分の側のポイントとし、長い時間がかかったとはいえ、第一セットの第2ゲームでヒロミのサービスを破った。

 その後、第3ゲームはまたもラブゲーム。ヒロミはモアランドのサーブに対し、一瞬体を反応させるか、あるいはラケットに球をあてるのがせいぜいだった。また、モアランドが第一サーブをフォルトし、若干球威の落ちたセカンドサーブは打ち返せたものの――ラリー戦を制するのは常に、モアランドの側だったのである。

 第4ゲームでもまたサービスを奪われ、第5ゲームは再びモアランドがラブゲームでキープ。試合の流れは大体そうした展開で進んでいき、ヒロミが唯一自分のサービスを保持できたのは、第一セットの第6ゲームのみであった。

 結果、6-1というスコアでヒロミはファーストセットを落とす。

 続く第ニセット――モアランドの脅威の殺人級サーブが続き、ヒロミはまたもファーストセットと同じ展開を繰り返す。

 第1ゲーム目で、ヒロミは自身のサービスを奪われ、続く第ニゲーム目は、モアランドがまたもラブゲームでキープ。そして第3ゲーム目でも、ヒロミはモアランドに見事なまでにサービスを破られていた。

 おそらく、この試合はバーバラ・モアランドがストレート勝ちする、いつものなんの面白味もない試合であるとして、TV中継を見ている人々も、このあたりでテレビを消すかチャンネルを切り換えていたかもしれない。

 だが、ここから日本の期待を一身に背負うテニスプレイヤー、ヒロミ・オカの執念の反撃がはじまるということを、果たしてウィンブルドンの観客席で信じている人間がもしいるとしたら――それは彼女のテニス・コーチである、宗方仁ただひとりだけであったに違いない。


『いいか、岡。190km台、あるいは200km級のサーブだからとて、受けられないなどと、絶対に考えるな。それから、モアランドはセカンドサーブも驚異的だが、こちらはおまえでも必ず受けられる。物理的なことを言うとすれば、190km台、200km級の球を返球するためには、まずはコースを読む必要がある。つまり、最初からどこへ落ちるのか、あらかじめ予測できない限りは、物理的な法則からいっても打ち返すのは困難だ。センターか、それともサイドラインか……これはもう長年のテニスで培った勘に頼る以外にはない。打ち返せなくても、とにかくラケットに球を当てていけ。そうやって少しずつタイミングを合わせていくしか、モアランドに対抗できる手段はない』

(確かに、コーチの言うとおりだ)

 第3ゲーム終了後、タオルで顔の汗を拭きながら、ヒロミは宗方コーチの言葉を思いだして、深呼吸をひとつした。

(勝つとか負けるとか、それ以前に――今日この場で<何か>を掴めなければ、あたしはこれから先もずっと、バーバラに負け続けるだろう。もう少しで何かを掴めそうでいて、うまくいかない……彼女が試合に負けるのは、自分の体の調子が上がらない時か、ほんの時たま精神的に不調な時だけ。そんな運や偶然に頼って勝っても、意味なんてないのだから……) 

 やがて審判から「Time」と声がかかり、ヒロミは新しいラケットを手にして、再びコートへ戻った。

 第2セットの第3ゲーム目までは、第1セットとほぼ同じ流れのままだったのだが――続く第4ゲーム目、40-0の段階で、初めてヒロミのラケットが正確にモアランドのサーブを捉えた。返球としては甘かったが、バーバラはおそらく、自分のサーブが打ち返されるとは思ってもみなかったのだろう。

 驚きのあまりか、反応が遅れてこれをレシーブミス。

 だが、40-15となるも、続くサーブはまたも200km級。ヒロミはこれをラケットに当てるも受け損ない、第4ゲームもまた落としていた。

 第5ゲームは、ヒロミが執念の力で長いラリーを制し、サービスキープ。

 そして第6ゲーム……ここでテニスの試合中にある、またはテニスの試合中にしか起き得ない、奇跡の感覚がヒロミの体を支配しはじめる。

 ここからは、テニスの実況中継も交えて、試合の内容をお伝えすることにしよう。

『おっと、徐々にモアランドのサーブにタイミングが合ってきましたか、岡選手!?』

『そうですねえ。ファーストセットでも、とにかくラケットに球を当てようと岡選手は必死でしたから。セカンドセットのここに至って、モアランドのサーブに目と体が慣れてきたという側面もあるのでしょう』

『それにしてもモアランドのサーブは男子並ですね、竜崎理事。男子プレイヤーとやりあってもまったくひけをとらないというか、これぞパワーテニスといった感じがしますが……おーっと、日本の岡、またしてもモアランドのサーブを見事に打ち返しました。息詰まるラリー戦を制するのは、果たしてどちらになるでしょうか!?』


(――やった!また返せた!!)

 ヒロミはそう思い、せっかく返せた以上は、続くラリー戦も制してみせるとばかり、根気よくねばり続け、バーバラのミスを誘い、40-30とする。

 さらに、長いジュースの繰り返しの果てに、ようやくバーバラのサービスを初めて破ることに成功した。


『日本の岡、ここで初めてモアランドのサービスを破りました!!恐ろしいまでの執念です。ですが、第7ゲームでサービスをキープしても、4-3。セカンドセットをとるには、気の遠くなるような厳しい茨の道が続きます』

『なんにしても、自分のサービスは必ずキープし、モアランドのサービスをまずはもう一度破る必要がありますね。これはまさしく手に汗握る展開となってきました』


 実際本当に、そう言った竜崎理事だけでなく――ウィンブルドンの観客席にいる人々も、あるいはテレビの向こう側で試合観戦している人々も、多くの人が手に汗をかくか、時折ごくりと喉を鳴らしながら、このモアランドvsオカ戦を見始めていたに違いなかった。

 第7ゲームでは、ヒロミが自身のサービスをキープ。第8ゲームはモアランドがサービスをキープ。第9ゲーム目、ここでヒロミがかろうじて堪える形でサービスキープし、続く第10ゲーム――モアランドの顔色から、皮肉な笑みが消えた。ここを手堅く守り、次でヒロミのサービスを破れば、第ニセットもモアランドのものになっていたであろう分かれ道で……ヒロミが猛追したことにより、試合はタイブレークへもつれこむことになったのである。

 ゲームカウント、6-6。タイブレーク――ふたりは恐ろしいまでの気迫みなぎる死闘を演じながら、1-1、2-2、3-3、4-4……と互いのサービスを破るか死守するかのいずれかだったが、最後の最後でモアランドがヒロミのサービスを奪うことに成功し、5-4とする。

 これで試合の流れはモアランドへ行くと誰もが思った矢先、ヒロミがまたもモアランドのサービスを破り、5-5に戻す。この時点で試合時間は1時間五十分を越えており、流石の負け知らずのモアランドの顔にも、焦りの表情が見えはじめるようになる。

 さらに続くおそろしい点の奪いあいの末、セカンドセットは日本のヒロミ・オカがもぎとる形となるのだが――第3セットに備え、ベンチに腰かけて休むバーバラの心は、顔の表情にあらわれている以上に激しく動揺していた。

 バーバラ・モアランドは、人種差別主義者ではないにしても、東洋人のプレイヤーを基本的に馬鹿にしていた。彼女たちは<そこそこいい試合をする>が、あらゆる観点から見て、欧米のプレイヤーに今一歩で敵わない存在でしかないと、彼女はそう決めつけていたのだ。

(けれど、ヒロミ・オカは何かが違う。だが、あの子とわたしで一体何が違うというのだろう?パワーならこちらが上だ。では技術か?それも違う気がする。心……いや、まさか。精神論だけで勝てるほど、テニスの世界は――いや、一流トップアスリートの世界は甘くない)

 冷静な振りを装いながら、バーバラはゲータレードを飲み、ちらと隣のベンチで休むヒロミ・オカの様子を窺った。自分と同じようにスポーツドリンクを飲んだあと、頭にタオルを被せ、両手を組み合わせたような姿勢のまま、彼女が何か深い精神世界へ沈みこんでいるような気配を、バーバラは強く感じる。

(いつも思うけど、あれは一体なんなのかしら?ヨガとか何か、そっち系の精神集中法とか?まあ、なんにしても、第3セットでは必ず勝ってみせるわ。あたしの本当の敵はヒロミ・オカ、あなたなんかじゃなく――当地でも評判のクリスティン・エバハートなんですからね)

 それからバーバラは自分の側の観客席をちらと見返し、そこに最愛の父の姿とコーチである叔父の姿を認め、(ベスト8にも残らない段階で、絶対に負けるわけにいはかない)との思いを新たにしていた。
 
 バーバラは三人姉妹の真ん中だったが、姉も妹も母親に似て美しく、自分だけがその美貌に恵まれなかったことに、強いコンプレックスを抱いて育った。

 母親が何気なく言う、「我が家の突然変異さん」という言葉に、どれほど傷ついたことかと、今もバーバラは母のことを恨んでいるほどだったが――そのコンプレックスを解消してくれたのが、他でもない彼女の父親だった。

「おまえの姉も妹も、それなりの男と結婚する以外能がないだろうが、おまえは違うんだよ、バーバラ」と、彼女の父はよくそう言った。

 バーバラの父親は娘がスポーツの才に恵まれていることがわかると、テニスのコーチをしている弟に娘を預け、英才教育にも近い環境の中で彼女のことを育て上げた。

 父の企業の傘下には、大きなスポーツクラブも含まれていたため、そこのテニスコートをバーバラは自由に使い、ラケットにもボールにも、その他の何につけても、彼女は不自由したという経験が一度としてない。

 そして十六歳の時に世界の桧舞台に立って以来――バーバラは男子並のテニスによって、女子テニス界の主要なプレイヤーを次から次へと打ち倒してきた。

 彼女はその容貌から、「ほとんど男のようだ」とすらマスコミによく言われるが、バーバラはそのことを一度として気にしたことはない。

「お父さんはね、バーバラのような男の子が欲しかったんだよ」……愛する父親のその一言が、今も彼女のアイデンティティーを強く支え続けている。

(待ってて、パパ。わたし、今回も必ず勝ってみせるわ。東洋人は欧米人ほどスタミナがないし、持っている遺伝子がそもそも違うんだもの。第3セットはわたしが優位に試合を進められるだろうし、向こうは試合が長引けば長引くほど苦しみが増すだけでしょう。でもわたしは違う。男並にフルセット戦い抜ける特訓を受けた、このバーバラ・モアランドはね!)

「Time」と審判から声がかかり、バーバラは新しいラケットを手にしてコートへ向かった。以前対戦した時よりも、強烈な第一サーブをヒロミ・オカは打ってくるようになったが、そのせいかどうか、タイブレークになってからは、歪んだガットをバーバラは何度か指で直さなくてはならなかった。

 もっとも、この時点では彼女は――そのことをそう大したことだとは、思ってもみなかったのである。



 >>続く。。。





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