
(※漫画「エースをねらえ!」の二次小説です。内容にネタバレ☆等を含みますので、一応ご注意くださいm(_ _)m)
今回は特に言い訳事項ってないかな~という気がするので(いえ、まったくないわけではないにしても

う゛~ん。まだ全部は見てないにしても、わたしがこのDVD買ったのって、間違いなく第1部のラストがアニメではどう描かれてるのかが気になったからなんですよね(^^;)
なので、最終話が収められてる6枚目から順に見てるんですけど……なんていうか、出来としてはこのアニメだけ見て「エースをねらえ!」ってそゆ話なんだ☆って了解するのは、熱烈なファンとしてはかなり承服しかねるというか。
もちろん、当時の技術でこれだけのものを作るのって、それだけでも相当な労力というか、物凄いエネルギーが消費されてるっていうことは想像して余りあるとはいえ、そこはそれ、やっぱりファンの目っていうのは大好きな作品


まあ、時代的なこともあるとは思うんですけど、ひろみと宗方コーチの関係っていうのは、師と弟子のラインが強調されていて、恋愛的な匂いはあまりないんだろうなとは、見る前からある程度想像してはいました(^^;)
でもやっぱり、旧こみくす10巻の、
>>「何が不安だ。こんなにそばにいるのに……俺はおまえにすべてをやった。この上何を望む」
「コーチも早く渡米してください。外国で一日でもコーチと離れているなんて嫌です」
「すぐいくさ。しっかりやるんだぞ。こんなことくらいで動揺するんじゃない。
おまえの体をとおして生まれようとしているプレイがあるのだから、それをコートで生んでいくのがおまえのつとめなのだから、そのプレイはおまえひとりにしか生めないのだから」
といった宗方コーチの科白や、藤堂たんの>>「彼は彼女を愛している。全存在をかけて……男であることを越え、師であることを越え、魂の底から愛している」といった描写がないのは、やっぱり残念というかorz
そして何より残念なのが、そうした描写が抜け落ちてるこのアニメだけ見て、「エースをねらえ!」ってそゆお話なんだ☆で終わってる方がいるとしたら、本当にすごく残念だと思いました(^^;)
う゛~ん

どう見てもノーバンで打ち返してるようにしか見えないとか、素人目に見ても、「そこでスマッシュが出るのはおかしかろう☆」といった描写については、わたし個人は正直どーでもいいんですよ。
だって、そういうのは物語の骨子とは、そんなに関係がないから。。。
でも、演出の仕方として、出崎監督がいくら天才すぎるとはいえ――こんなにも差がでるものなんだって、あらためて出崎監督の凄さに驚かされるとでもいったらいいか

そんなわけで、新を見終わったら今度はすぐに旧エースのDVDを注文する予定でいます♪(^^)
それではまた~!!

Grand Stroke-7-
Side:仁
毎年、テニスのウィンブルドン大会が開催されるのは、六月の最終月曜日からと決まっている――そしてその少し前に抽選(ドロー)が行われるが、岡は今回第23シード。一回戦目はスペインのモナ・アルバトロスと対戦する。
身長175センチ、69キロ。利き手は右手で、バックハンドストロークは両手打ち。
今大会はノーシードだが、昨年はシード選手として三回戦まで進出している……好不調の波が大きい選手だが(それがランキングの上・下降にもよく表れている)、一度波に乗ると徹底した攻めの姿勢によって相手を下す。またネットプレイを得意としており、昨年はダブルスでウィンブルドンの準々決勝にまで進出。今大会もまたシングルス・ダブルス両方への出場である。
俺はモナ・アルバトロスの他の大会出場データなども調べ、ファイルしておいたものに目を通しながら――正直なところ(厄介だな)と感じていた。
無論、ウィンブルドンに出場するほどの選手なのだから、どの選手であれ、もはや楽に勝てるなどという試合はなく、どんなプレイヤーも<厄介>ではあるのだ。
だが、岡はアルバトロスと他のどの大会でも一度も打ち合った経験がない。加えていうなら、技術的なことは別としても、岡と彼女では性格的なことが正反対でもあった。
ようするに、相性が悪いとでも言ったらいいか……もちろん、そうしたタイプのプレイヤーとの対戦というのは、何十度となく岡も経験してはいる。だがその際にほとんどファースト・セットを落としているというのが岡の特徴であり、その点についてはアルバトロスも、また彼女のコーチもよく分析して、徹底的に攻めてくるに違いなかった。
さらに、二回戦目がアンジーか最近仲良くなったばかりの選手、クラリッサ・エンデルバウムのいずれかというのも、ある意味くじ運が悪いというのか、なんといったらいいのか。
そして二回戦目を勝ち抜いたところで、向こうの山をおそらく勝ち上がっているに違いないのが――去年岡が四回戦目に対戦した、エリザベス・コナーである。
もっと言うなら、彼女に勝ってもその次はバーバラ・モアランドと対戦する可能性が高いだけに、今年のウィンブルドンでは岡は、ベスト8にも残れない公算が高いということになるだろう。もっともこれは、俺がコーチとしてそう思うのではなく、一般的な見方としてはそうであろうという話なのだが。
「ドローが発表になったわね」
開け放しになっているフランス窓から、リンデロイス先生が外の庭へ出てくる。
俺は庭を囲っている木製のフェンスに半ば体を預け、煙草を吸っているところだった。
「いいのよ、べつに。気にしなくて。あなたがテニスプレイヤーだった頃は、煙草を吸うだなんて絶対許せなかったけど……今は昔の悪癖が復活しても仕方ない悲劇が、あなたのことを見舞ったんだと思って、見逃してあげる」
「すみません」
「ふふっ。ねえ、面白いと思わない?もしうちのクリスティンが順当に勝ち上がって――さらには、あなたの秘蔵っ子のヒロミもまた同じように勝ち上がってきたら、ふたりは決勝で対戦することになるわ。このこと、仁はどう思って?」
「そうですね」
リンデロイス先生は煙草を吸っていて構わないとおっしゃったが、俺はやはり大理石の灰皿の上で、火を揉み消すことにした。
「何分ウィンブルドンは強敵揃い――といっても、これはグランドスラムの宿命のようなものですが――俺は岡と同じく、目の前のことしか考えないんですよ。先生みたいにそんなに先々のことまでは見通せない。岡にも、今目の前の一球のことだけを考えろと言って指導してきましたし……なんにしても、今俺の頭の中にあるのはあなたの娘、クリスティンのことではなく、岡が初戦であたるモナ・アルバトロスのことだけです」
「心配なのね?勝気なプレイをするアルバトロスに対し、日本の岡の禅的プレイは、一体どこまで通用するのかって」
「からかわないでください。あくまで俺は、真剣なんですから」
俺が両手をフェンスにもたせかけて振り返ると、リンデロイス先生はまるで酒に酔ったようにくすくすと笑っている。
「本当に馬鹿ね、あなたは。ヒロミに自信をつけさせたいと思ったら、道はひとつだと、わたしが教えてあげたでしょう?何故それを実行しないの?」
「理由のひとつは、先生の言うことがいちいち当たっていて、癪だからですよ。本当に、あの娘に自信をつけさせるには、ほんの簡単なことで良かった。ですが、俺はやはり公私の公とやらのほうを大切にしようと思います」
「まあ、一体それがいつまで持つのか、楽しみなことね」
その時、風に舞うレースのカーテンを透かして、その向こうからクリスティンが姿を現した。
「あーら、ママったらまたミスター・ムナカタとお話してるの?ヒロミが胸を痛めるからおよしなさいって、あたしがあれほど言ったのにっ!!」
「はいはい。それより、明日はトレーナーのワン先生がいらっしゃる日でしょ?あの方、朝早くしか時間のあかないお忙しい方なんだから、そろそろ眠ったらどう?」
「わかってますってば!だからママもミスター・ムナカタと夜遅くまで話すなんていう、娘のあたしが誤解するようなこと、絶対やめてちょうだいね。何よりも、あのいたいけなヒロミのために!!」
「当然じゃないの。わたしが世界で一番愛してるのは、あなたのお父さんのことだけよ」
リンデロイス先生は、「じゃあね」と言って、俺の片手を握りしめると、フランス窓のほうへ戻っていった。
夜露に濡れた薔薇、黄金の月に、その月に照らされて、くっきりとした蒼と黒の輪郭を刻む庭の木々……すべてがまるで夢のようだ、と俺は思うが、もちろんこれは当然夢ではない。
ウィンブルドン大会は三日後に開幕となり、さらにその約二週間後には、それが誰であるにしろ、ファイナリストが決まっている。
俺は運命論者ではないし、すべての運命が最初から決まっているとも思わない。だが、二週間の激闘の末に、すべての試合を勝ち抜いたただひとりの勝者だけが、最後に優勝カップを手にしているだろうことだけは間違いなくはっきりしている。
無論、今の段階では、それが誰であるかはわからないにしても……。
それから俺は、少しの間らしくもなく、リンデロイス先生の言った、岡に自信をつけさせる方法について――少しばかり真剣に検討している自分に気づき、再び煙草に手を伸ばした。
『ほんと、みっともない体。テニスウェアを着てる部分は真っ白なのに、他の部分は真っ黒けで……胸も小さいしね、あんたは。もちろんそんなこと、宗方コーチは見る前からわかってるだろうけど……』
まさか本当に、リンデロイス先生が言っていたとおり、岡がそんなくだらんことをいちいち気にしているとは、思ってもみなかった。
「言ったらいいのよ、たった一言。自分もまた、師であることを越え、男であることを越え、おまえのことを愛していると……そのたったひとつの言葉がヒロミの全存在を支えることになるって、どうしてわからないの?これだから男は馬鹿だっていうのよ」
俺は一瞬ぎゅっと目を閉じ、煙草の箱を握り潰した。
なんにしても、岡の選手としてのコンディションは、今のところ十分に整っている。今はその気をわざわざ自分の手で乱す必要はないだろうというのが、俺自身のコーチとしての判断ではあった。
(だが、初戦の相手がモナ・アルバトロスとはな)
実際、勝負の世界ではいつ何が起きてもおかしくはない。ノーシードにしてノーマークの選手が、ランキング上位者を苦しめ追いつめ、最後には勝利をもぎとる姿というのは、よく見られる逆転劇でもある。
(岡、俺はおまえを信じる……)
薔薇のアーチが連なる庭の上空、星の輝く夜空に背を向けると、俺は自分の部屋へ戻ることにした。ウィンブルドンがはじまるまであと三日――出来ることはまだもう少しあると、そんなことを考えながら……。
<ウィンブルドン、第一回戦でヒロミ・オカは、強気な攻めをみせるアルバトロスに対し、6-3、6-4と、危なげなくリードをキープして第二回戦目に進出を果たした。次回の対戦相手は、ワイルド・カードのクラリッサ・エンデルバウムである……>
ウィンブルドン女子の、第一回戦目が終わった翌日、地元の新聞に出ていた岡に関する情報は、たったこの数行だけである。見出しには当然、大きくクリスティン・エバハートの写真が載っており――『天才少女テニスプレイヤー、初戦を突破!!』との文字が躍っている。
「あの、コーチ。あたしのことなんて何か、新聞に書いてあります?」
「ああ。日本の目ダヌキは、スペインのあほうどり(アルバトロス)に対し、危なげなくリードをキープして、初戦を突破したと書いてあるぞ」
「もう、コーチってばっ!!目ダヌキは余計ですっ!!」
コートのベンチで、タオルで汗を拭きながら、岡は俺に対して凄んでみせる。今日もこれから試合があるが……ドローが発表になり、二回戦で岡と当たる可能性が高いとわかってからは、エンデルバウムとは一度も打ち合ってはいない。
「きのうも言っておいたがな、クリラッサは相当な強敵だ。彼女は練習ではほとんどおまえに勝てなかった。アンジーともそうだ。だから、おそらくきのう、アンジー自身相当驚いたろうな。クラリッサというのは言うなれば、本番に強いタイプなんだ。普段は消極的で大人しいが、いざ本舞台に立ったとなると、いつも以上の力をだす。試合がはじまる前までは食も細く、こんなことで彼女は本当に勝てるのかというくらい、顔色も悪いが――試合結果だけを見れば、クラリッサは多くの試合で勝っている。だからおまえもせっかく仲良くなったのにとか、いつも練習では自分が勝っているからといった余計な考えは一切捨てろ。最初から全力でいかないと勝てないということは、きのうのアンジーとの試合をビデオで見ていて、よくわかったろう?」
「はい、コーチ」
岡はキリッとした引き締まった顔の表情になると、荷物をまとめはじめた。
相手が最近仲良くなった友人だからといったような迷いは、岡の中にはない。そのことは俺にもよくわかっている。だが近ごろ、俺には岡が何を考えているのかよくわからないことが多くあった。
以前であれば、岡のことでわからぬことなど、俺にはないというくらいだったのに――彼女が試合の中で最近<何かを試そうとしている>くらいにしか、俺にはコーチとして想像できることがない。
もちろん今も、「何を考えている?」と聞こうと思えば聞くことはできる。また、岡が頭の中でどういうゲームの組み立てをクラリッサに対して試みるつもりなのか、その戦法について俺が意見することも簡単ではある。
だが、岡の中にどこか<深く沈潜している>気配を感じ、俺はただ黙って彼女のことを信じることにした。自分に出来ること、教えられることは、すべて授けてある……あとはそれをどう試合に活かすかは、ある意味岡自身に任せられるべきことでもあった。
そして、はじまった二回戦――岡とクラリッサが戦うことになるコートは、ウィンブルドンの七番コートだった。
>>続く。。。

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