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「すべて真夜中の恋人たち」感想 川上未映子

2014-01-26 | 小説・漫画他

川上さんの本を読むのは、エッセイ本を抜かすと、これが3冊目です。
評価が高い「ヘヴン」が、なぜか私は今一つしっくり来なかったので、暫く川上さんの小説から離れていました。
なので、本作も全く期待せずに、なんの気なしに読んだのですが、とても面白く読みました。4つ★

人付き合いが苦手だけれど、真面目にちゃんと校閲の仕事をこなす34歳の冬子。
そんな彼女に冷たくあたる職場の人達、ひどいなぁ・・・。
誰かのお土産のお菓子とか、彼女の前だけ素通りするとか・・・
そんな中、ちゃんと彼女の仕事っぷりを見ていて、信頼できる人だと解ってくれていた、彼女とは正反対の、バリバリ行動的で華のある美人の石川聖。彼女には多数の男友達がいて、気楽な関係を楽しんでいる。敵が多くて友達も少なく、冬子は、そんな彼女の数少ない友達だ。

冬子が、そんな職場を離れて、フリーで働けるようになったときは、読んでいて嬉しかったです。
ほとんど出かけずに、誰と遊ぶこともなく、淡々と仕事をして寝て起きて・・の冬子が、唯一クリスマスイブの自分の誕生日に、真夜中の街を歩くという、楽しみな行事?がある。

ある日、冬子は、カルチャーセンターで、冴えない58歳の物理の教師、三束(ミツツカ)さんと出会う。
「光」を、2人とも偶然好きだった事から、恋が動き出した!って感じかな。
本当は酔えないのに、お酒を飲んで酔ってないと、カルチャーセンターに行く事や、彼に会いに行く勇気がでない冬子。
不器用ながらも、少しづつ親しくなって行く2人。最初は週に一回、喫茶店で会っておしゃべりする関係だったが、だんだん回数も週に2回に増えていく。

恋人はおろか、今までちゃんとした恋愛経験が、ほぼ無かった冬子が、生まれて初めて、凄く人を好きになっていく過程の、初々しく、キラキラした感じがとても良い。彼と本や音楽やらを共有する嬉しさとか。

冬子に恋愛経験がまるで無かったのではないが・・・。過去の回想シーンが辛い・・・。
冬子は高校の時、同級生の男子と、電話で仲良く話したりと密かに良い感じになっていたが、ある夏の日、彼の家に遊びに行って、そのまま押し倒されてしまう。あっという間に、行為が終った後、なんとその男子に「君を見ているとイライラする」と言われてしまった。それ以後、冬子の人生に男性は登場しないままだった。
この言葉は、最後の方で、親しくしていた友人の石川にも言われてしまいます・・・。

58歳という年で、くたびれた外貌の男性と、彼よりはずっと若いが、中年の女性という設定とか、女性の方が男性に片思いしていつつも、一定の距離をおいた友達以上恋人未満のプラトニックな関係が続き、親しくなっても敬語で話すところとか、どことなく川上弘美の「先生の鞄」を思わせられます。

★以下ネタバレ 白文字で書いています★
電話で「ミツツカさんは私と寝たいと思ったことはありますか」とズバリ聞いてしまう冬子。
その後、ミツツカさんの12月の誕生日に、石川からもらったおさがりの綺麗な服を着て綺麗にしてレストランに行き、帰りに冬子が、愛していますと、泣きながら、自分の誕生日に夜の街を一緒に歩いてくれますか?と告白したが、結局三束さんは来てくれなかった。そして彼から、本当は教師じゃなかったこと、嘘をついていたのを心苦しく思っていたことが書かれた手紙が・・・・。えーショックだわ、、嘘だったんだ? あんなに物理の事とか詳しかったのにね・・。
てっきり、お誕生日に真夜中2人で歩けると信じて読んでいたので、自分がフラれたかの様に私はちょっと悲しくなってしまいました。
以上

校閲の仕事についてもこの本で色々触れていて、興味深かったです。
私は冬子さんは嫌いじゃないタイプだったし、応援していたんだけれどなー。

すべて真夜中の恋人たち (2011/10/13)川上未映子

ヘヴン
乳と卵、時が滲む朝

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4 コメント

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私もショックだった。。 (真紅)
2014-01-30 20:27:42
latifaさん、こんばんは。コメント&TBありがとうございました。
そうそう。私も三束さんのこと、すごいショックだった。。
でも、現実でもこういうことってあるだろうなー、と思ったよ。
つい自分をよく見せようと嘘ついてしまって、後戻りできなくなる、みたいな。。
川上さんの小説、もう読まないかもしれないけど、これはとっても好きだった。

ところで、『小さいおうち』映画初日に観たよ。
不安だった時子奥様の松さん、すんごいよかったー。
またそのうち記事アップするね。
山田洋次監督の映画初めて観たんだけど、ちょうど翌日テレビで『東京家族』やってたから思わずそれも観てしまった^^
キャストがかぶってた。山田ファミリーなのかな~。
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真紅さん☆ (latifa)
2014-02-01 10:44:00
真紅さん、こんにちは
ミツツカさん、物理の事、すごく詳しいから、先生であること、全く疑いを持たなかったよ。
偽っていたことが解ったとしても、冬子さんの気持ちは変わらなかったと思うんだけどなー。

ミツツカさんは、冬子の自分への思いとかが、重過ぎて、去って行ったのかな・・・。
お似合いの二人だと思っていたので、まさかあんなラストになるとは・・・。悲しかったな・・・。

で、真紅さんちに書かれていたこと、そういう気持ち、解るなぁー。
なんだか、彼女の幸せは嬉しい反面、遠いところに行ってしまった感があるというかね・・。

私が読んだ事がある川上さんのエッセイは、病院にあった、週刊新潮とか、そういう雑誌に毎回掲載されていたやつで、日常の事について書かれていて、旦那さんや子供さんについて、あんまり書かれてなかったんだけれど、そうかぁ、かなりでハッピーモードが漂っているんだね。

小さいおうち、私も見たいなー。
キャスティングは、純君がイメージと違う・・って思ってたんだけど、松さんは結構合ってるみたいって、CMを見ると思っていたよ。
東京家族は未見なんだけど、、かぶってるよねー。  
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自分が振られたかのような (牧場主)
2014-02-02 07:06:33
私はちょっと昔に読んだので、あまり記憶が鮮明ではありませんが、私も、振られたこと、経歴詐称されたショックがもうね・・・そのショックが大きすぎて、それがそのままこの小説の印象に・・・つまり、もう振り返りたくない、みたいな。だって、私と寝たいと思ったことありますか、って言ったんですよ、こっちが!(もう完全に自分と重ねている)それなのに・・・みたいな。じゃあ、「恋人たち」って題名にしないでよ~って。
対人関係に臆病な人物像っていろいろあるけど、「ヘヴン」を書いた人が、ここまでちまたの女性というか、名もない人々が抱えている孤独に共振するような人物を書いたってことがすごく素敵だと思いました。しかし、許すまじミツツカ!
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牧場主さん☆ (latifa)
2014-02-02 11:29:09
牧場主さん、こんにちは!
やっぱりラストはショックでしたかー!
私も、そこのシーンまでの、大人の純な恋愛の可愛らしくキラキラした感じが、どこかにすっ飛んで行ってしまいました。
面白かったんですけれどもね・・・。
タイトルから受ける印象とは全然違うラストでした・・。

まあ、それでも、高校卒業後、16年間、何も恋愛ごとがなかった冬子さんにとっては、ミツツカさんとの事は、10年経って、振り返ってみれば、良い思い出になってるんじゃないでしょうか。

これを、きっかけというか、はずみにして、次は素敵な男性をgetできるかも!
今まで例の高校の男子との以後、心身ともに、化石化していた感じがあったんんじゃないかな・・・。
今回、ちょっとそれが溶け出したから、きっと、次にチャンスがあったら、今回よりもっと上手く立ち回れるはず!
・・・って、すごい冬子さんを応援したい気持ちになってるな、私・・・。

そうそう、電話での一言は、おおお・・・冬子さん、シャイで消極的なのに、すごい事を言うんだなって思いました。

川上さん、ルックスも良いし、モテそうなのに、彼女の書く小説って、孤独な人が多いですよね・・ 私は、そういうお話は基本大好きです。
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