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「メアリー・スーを殺して」「私は存在が空気」 「夏と花火と私の死体」乙一 感想

2016-04-27 | 小説・漫画他

メアリー・スーを殺して

4名の作家さんの名前が載っていますが、全員それぞれ別名なだけで、同じ人が書いています。
面白かったです!乙一さんらしい小説が一杯。読んで満足でした。4つ★半

乙一さん、押井監督の娘さんと数年前に結婚されて、きっとお子さんも生まれて、可愛らしく成長し(現在幼稚園くらいかな・・・)きっとプライベートが幸せなんだろうなあ・・と推察。
内容も、孤独でみじめな思いをされていた時代を過ぎ、そのころには想像できなかったような、別の自分、日の当たる日常を送れるようになった人、という設定が多く、乙一さんのご自分の体験や現在の状態が、そういう小説を書かせているのかなー。

特に面白かったのは、山羊座の友人と、宗像くんと万年筆事件、メアリー・スーを殺して の3つでした。

★以下、全部ネタバレで、あらすじと感想を書いています!注意!★

乙一/愛すべき猿の日記
高橋マモルは、母から亡き父の遺品であるインクをもらう。わらしべ長者みたいな感じで、そのインクをきっかけに、どんどん彼が変わって行くというお話。
せっかくもらったし、何か書いてみようと、ペンと日記を購入する、日記を机に立てておこうと思ったが、1冊だけだと安定しないので、一緒に立てておく本を数冊買ってみる、今まで全く読書に縁がなかったものの、読書にハマる。その後、勉強や学校の論文などもやる気が出た。
就職活動の時、迷子の子供に遭遇、そのまま放置して行かずに警察に連れて行ったため、試験には落ちてしまったものの、同じ会社を受けた女性が、その現場を目撃しており、それがきっかけで後に交際、結婚、子供もできて幸せに暮らしている。

乙一 / 山羊座の友人 
松田の自宅のベランダは、時々不思議なものが、流れ着いてくる。ある日、2か月以上先の10月2日の日付の新聞の切れ端があって、そこには、「高1生殺人事件の参考人として事情聴取中の高校生15歳才が、昨晩警察署のトイレで自殺した」という記事が載っていた。

松田は学校で本庄ノゾミという正義感溢れる、頭の良い女子と友達だ。彼女は普段は眼鏡をかけていて、実はサッカー部の佐々木という彼氏もいるようだとか。
学校には金城アキラという、とんでもないモンスターがいて、若槻君という華奢な少年に目をつけ酷いイジメをしている。それをみんなは、見てみぬふりをしていた。本庄だけが先生にイジメの事を報告していた。

ある日、夜のコンビニ帰り、偶然に若槻君に遭遇。彼は血や髪の毛のついたバットを持っており、どうやら人を殺して来た後の姿の様だ。松田は少し会話をして、立ち去る渦中に、悩んだ末、若槻君を自宅にかくまい、その後2人で都内のネットカフェで逃避行するようになる。
松田は、名前がふせられていた新聞記事の事件は、若槻君が起こした事件だったんだ・・・と内心気がつく。
若槻君は自首しようと覚悟を決めているものの、松田は、彼が後に自殺してしまう事になるのを避けたいと思い、自首させるのを10月2日より後に引き伸ばしたいと思うのだった。

事件の夜の状況を若槻から聞いていて、松田が、あれ?と引っかかったのは、金城から若槻君に届いた最後のメールの文章の中に、通称ヤガモ橋を「琴ノ葉橋」という、メールで打つには面倒な正式名で打たれていたことだった。
松田の姉の梢は警察官の夫がいるので、この事件の事をちょっと調べてもらうように頼んだ結果、金城の遺留品の携帯の8のキーには血が着いていたことが分かる。8のキーに触れると「や」を打つことになってしまうのを避ける為だったと推察する。
若槻君が到着した時には、金城は本庄と佐々木の2人に既に殺されており、本庄が死んだ金城の携帯から、その血を触れないようにして送ったメールが、若槻君のもとに届いていたのだった。ちょうど修学旅行中につき、金城がいつも一緒にいる1学年上の先輩もいない、このチャンスに若槻君も金城を殺そうと思ってナイフも買って用意をしていた。
若槻君は、本庄たちの計画(自分らが殺すが、タイミングよく若槻君を現場に呼び出し、罪を若槻君になすりつける)を解っていたものの、唯一いじめられている時に助けようとしてくれた本庄さんへの感謝の気持ちから、全てを自分が背負う決意をしていたのだった
 ただなぁー本庄さんが、そんな酷いことをするとも思えないんだよね、そこだけが、この作品のちょっと残念な部分。

実は金城が過去に起こした事件の被害者2人が、それぞれ本庄と佐々木の身内だった。2人は中学生の時に、それがきっかけで知り合いになり、もっと高い偏差値の学校に行けるのにもかかわらず、金城に近づくために、この高校に入学して来ていたのだった。
そして、新聞記事のとおりになってしまった。ただ、自殺したのは、若槻ではなく、本庄だったのだ・・・。

中田永一/ 宗像くんと万年筆事件
山本真琴は5年生。クラスには、宗像君という、厳しい家庭環境におかれていて、着替えや衛生管理、食事等も満足に出来ない、嫌われ者のクラスメートがいる。
実は、宗像君は、名探偵の才能のある少年だった!というお話。

有る時、高山君の万年筆が無くなるという事件が起き、なぜか真琴のランドセルの中にそれが入っていた。必死で否定するも、先生もクラスメートも信じてくれず、その後不登校になってしまう。宗像君は、この事件を解決してくれる。
ランドセルが置かれていた棚には、いかにもここに入ってますよ?とアピールするかのごとくインクがついていたが、そこには真琴のタオルがおかれていたはずだったので、タオルが無くなった後につけられた事になる(いやがらせで、勝手に棚から持ち出し、雑巾として使ったクラスの意地悪な女子がいる)
宗像君は、クラスメートから聞き取りをする。理科の実験の間の休み時間に、教室から出た生徒たちに、使ったトイレの場所を質問したり、海野君の絆創膏の意味(洗い落とせなかったインクを隠すため)、リトマス紙に触れている指の部分の色の変化、などにも注目するという凄さ。
犯人の海野君は転校して行ってしまった。過去に真琴の父が若い事務員の女性と家を出て行ったが、その女性が海野君のいとこだったことが動機だったのかもしれない。さて、宗像君も、その後、少し友達が出来たのに、父親の夜逃げのために、いなくなってしまう。最後に真琴に10円を返して。

この名探偵宗像君というキャラは、とても良かったので、是非ぜひ、またどこかで会いたいです。

中田永一/ メアリー・スーを殺して
いけてない女子高生のわたしは、ゲーム等で好きなキャラクターの創作小説を書くのが趣味だったが、アニメ・コミック・ゲーム研究部に入った後、先輩に「きみの小説は文章は良いんだけど、メアリー・スーが出て来るよね、それをどうにかしてくれないと気持ち悪いんだ」と言われてしまう。
メアリー・スーとは、作者の願望が不快なほど投影された理想化されたオリジナルキャラということで、以前より海外で言われている言葉だった。日本では中二病という言葉があったため、あまりメアリー・スーという言葉は広まってなかったようだ。

さて、わたしは、それ以後自分の小説に、メアリー・スーを登場させない様にするために、色々努力を重ねて行く。そのために、ダイエットをしたり、色々なジャンルを詳しく調査したりしているうちに、自分が変わって行き、結果オタクでダサイ女子ではなくなっていた。彼氏も出来て友達も増えて、その結果、昔の様に創作小説を書くこともなくなり、それどころか、あんなに好きだった趣味のゲーム等にもうとくなっていたのだった。
そんなある日、高校の研究部で一緒だった友達から、小説を書いてみない?という声をかけられ、またやってみようと思う、というお話。

あぁー、こういう少年少女、いるだろうなあ・・・と、しみじみ読みました。特に中高生の頃オタク趣味だった子が、大学に行って、モテ出したり、友達が沢山出来て実生活が多忙になったり、恋人ができたりして、すっかりオタク趣味が消えてしまう・・。
これは、どうなんだろうなあ・・・。果たしてこの綺麗になって、創作意欲や趣味を忘れてしまった現在の主人公は幸せなのか・・?それともかつての彼女も全然不幸でなくて、それどころか楽しく、良かったのではないか?とも思える、色々考えさせられる内容でした。
少なくとも、小説家としては、二次元に生きていた、かつての彼女の方が良かったのかもしれない。

山白朝子/トランシーバー
3・11地震の後に作られた小説だとのこと。きっと乙一さんが、ある時突然、自分の子供を妻を一気に失ってしまったら・・・と考えて作られたお話なんでしょうね・・・。3歳のヒカルは、まだおむつが取れていなくて、カタコトの言葉も、うんち、おしっこ、おっぱい、など、使わなくて良い言葉ばかりを使いたがる子供。
そうなんですよね、どうして子供は、変な言葉を意味もなく使いたくなってしまうのか。家族を亡くしてから、大酒をくらっていると、なぜなのか、トランシーバーで死んだはずのヒカルとおしゃべりが出来る様になる。それに逃げていた主人公は、ついに首をつるものの、失敗で未遂に終わる。しかし首にはヒモの跡が残ってしまう。その首のあざを偶然目撃した女性と段々親しくなり、結婚するに至り娘も授かり幸せに暮らす。その娘が中学生になった頃に、トランシーバーから、おっぱいちゃん」という言葉を聞いたなあ・・とつぶやいた、という処で終わっている。

山白朝子/ ある印刷物の行方
謎の研究を行なっている研究所。そこの焼却場で働くようになった。いつも運び込まれる謎の箱。中に何が入っているのか解らない。
ここの会社で働いている人で、自殺者がたて続いている。
結果、箱の中を見てしまう。3Dで製作した赤ちゃんとか、謎の気持ち悪い生物が入っていたようです。

越前魔太郎/エヴァ・マリー・クロス
謎の人体楽器(まだ生きているようでもある人間で作られた、さまざまな楽器)を目撃してしまうお話。
自分の恋人のエヴァ・マリー・クロスも、どうやら楽器にされてしまったいるようだ、というところで終わる。

メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション 2016/2/5
乙一 (著), 中田永一 (著), 山白朝子 (著), 越前魔太郎 (著), 安達寛高 (著)

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私は存在が空気


乙一さんの、中田永一名義の新作です。3つ★
6つの短編が入っていますが、うーん・・・ガツンと来るお話とか、凄く気に入るお話は、特になかったかも・・・。
ありえない様な不思議な力を持っている人が登場します。
もう私はそういうお話にワクワクする純粋さみたいのを悲しくも失ってしまった様で・・。
読みながら、ありえん、そんなわけない、って気持ちが消えなかったんですよね・・。

6つの中では、少年ジャンパーが一番良かったかなー。
表紙は、浅野いにおさんらしく、とてもカワイイ女の子のイラストで印象的ですね。

・少年ジャンパー
乙一さんお得意の、自分に自信が無く何の取り柄もない友達もいない少年が、そんな自分にも優しく接してくれる美女への片思いのお話。
ところどころ、ズキンとしたり、切なく、甘酸っぱい思いをさせてくれます。
今回は、主人公の少年が、場所を念じたらそこにジャンプできるという不思議な力を持っている、という設定。

★以下ネタバレ★


彼女の誕生日に、アメリカのグランドキャニオンへ連れて行ってあげようと、下準備のために、こっそり一人でアメリカを横断する旅をちょこちょこ続けて来て、その経験が知らないうちに、少し自分を成長させてくれていたんですね。とても後味のよい、良いお話でした^^

・私は存在が空気
これまた、存在が空気な少女が主人公。自分がいることを透明人間の様に消せるので、その能力を使って、色々行動できる。
近所で強姦事件が起こって、その犯人が、もしや、あの人気の男子なのでは・・?と、こっそり家に入り込んで潜伏捜査を行なったりもする。
ラストは、そんな自分に気がついてくれる女の子。その子が好きになったみたい。

・恋する交差点
とても短い短編。うんー、特に・・・。人が激しく行き来する交差点で、繋いでいた手を離してしまったら・・どうしよう・・という。

スモールライト・アドベンチャー
小さくなる力を得た小学生の少年が、クラスの人気者の女の子を誘拐から救おうとするお話。

ファイアスターター湯川さん
雪国の古いアパートの管理人の主人公と、そこに新しくやってきたクォーターの美女。彼女は発熱、火を使える人間だった。
屋根に積もった雪や、つららを溶かしてくれたり、色々やってもらえたのだが、片腕の謎の怖い男が彼女を探してやってきて・・・。
実は彼女はヤクザの養父に育てられ、頼まれた死体を完全焼却を請け負うことを長年していたのだった。管理人の幼くして亡くなった母親の死に際も知っているのだった。
ラストは、ひょっこりまた雪下ろしを手伝ってくれそうな彼女がアパートに現れました。

・サイキック人生
天然と言われる高校生の少女、実は彼女は見えない様に腕を動かせて物を移動させたりする力があった。
ついその力を使ってしまい、仲間を怖がらせてしまい、みんな学校に来なくなってしまう。そんな中、こっくりさんをやってくれないか?という、地味な男子生徒と仲良くなる。そのこっくりさんに使った10円玉が、実はとても高価なものだったため、そのお金を狙う人間がいた。

「私は存在が空気」2015/12/11 中田永一

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夏と花火と私の死体

乙一さんが好きだったわりには、デビュー作を読んでいませんでした。
盛んに乙一さんを読んでいた頃、この作品は図書館においてなくて、読もうとしたけれど読めなかったんですよね。
それから約10年が経ち、つい最近、調べてみたら、図書館に入庫してくれていたので、今更ですが読むことができました。

デビュー作だというのに、ずいぶんシッカリとした小説で、驚きました。面白かったです。

最初、仲の良い友達同士の少女2人と、片方の少女の兄が登場します。とても出来の良い兄で、妹も友達も兄の事が大好きです。
友達の兄への想いを聞いて、つい嫉妬から友達を突き落としてしまい、なんと死んでしまいます。
それから、その死んだ少女の語りで、物語が進む、というのも目新しく感じました。

さて、死んだ少女の死体を兄妹は隠します。何度も、バレそうでバレずに済みます。
てっきり、この3人がメインのお話なのかと思っていると、最後にどんでん返しが。


★以下ネタバレ★

途中に何度か登場していた、アイスを持ってやってくる綺麗なお姉さんが、実はこのところの連日報道されている少年行方不明事件の犯人だったんです。
全くそれに気がつかなかったので、驚きました。
お姉さんは、死体を自分が働いているアイスの冷凍庫に隠してくれるように手助けしてくれます。そこには、行方不明になった少年の死体がいくつも並んでいたとさ。

夏と花火と私の死体 2000/5
九歳の夏休み、私は殺されてしまったのです……。乙一のデビュー作、
幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。


乙一
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4 コメント

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Unknown (苗坊)
2016-04-29 13:13:24
「メアリー・スーを殺して」は、アンソロジー風なのに解説を含めすべてが同じ人っていうのが面白いですよね^^
どの名義もそれぞれ特徴があってそれをかき分ける乙一さんが凄いなと思います。
山白さん名義の新刊が手元に来ているので読むのが楽しみです。ホラーテイストなので心配ですが^^;
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苗坊さん☆ (latifa)
2016-04-30 17:03:49
苗坊さん、こんにちは
最初のうちは、山白さんとか、中田さんって、どうも噂では乙一さんらしいけど・・・本当のところは、どうなのかな・・・って感じだったと思うのですが、今はもう周知の事実になっていますよね。

山白さんの本は、エムブリヲの続編的なやつかな? 私もそれ読みたくて、図書館に行ったら、まだ入荷されてませんでした。でも近い将来必ず読みます。
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Unknown (Noinu)
2016-05-07 15:10:44
latifa-さん、お久しぶりです。

「メアリー・スーを殺して」、知らなかったので、
早速、図書館に予約を入れました。

乙一さん、
わたしは、ひんやりと怖~いお話が
大好きなんですが、最近はどうなんでしょう?

「夏と花火と…」は、確か文庫本を持っている
はずなんですが、未読です。
持ってることで安心しちゃったパターン(*_*;

最近、集中力が低下して、本が読めなくって
困ってます。





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Noinuさん☆ (latifa)
2016-05-07 22:18:13
Noinuさん、こんばんは!
わーい!コメントありがとうございます。

GWも残すところ1日、Noinuさんは、いかがお過ごしでしょうか。

乙一さん、私も怖いお話や、黒乙一って言われているようなグロいお話も好きです。
中田永一名義は、白乙一っぽい感じかな・・。
私は、山白朝子名義のお話が好きです。

メアリー・スーは、昔からのファンの方も、きっと楽しく読めると思います。ぜひぜひ!

夏と花火と・・は、短いお話なので、その文庫本には、他のお話も一緒に入っているのではないでしょうか? どんな作品を入れているのか興味があります。
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