バンドメンバー募集の体験談

バンドを組みたいと思っている人にとって参考になれば、と思います。
内容は、私が実際に目撃・体験したことです。

まず自分を疑うことが大切

2005年12月18日 | Weblog
 さて、友達同士でのバンド遊びの段階が済んだら、いよいよ本格的なバンドを組んでみよう。
 この段階で大切なのは、「自分を疑うこと」である。

 音楽家を目指す人間は偏屈な者が多いので、嫉妬や自慢やイヤミなどで溢れた会話に必ず遭遇する。かくいう私も、イヤな奴だと思われたこともあったし、逆に相手に対して私がそう思ったこともあった。
 しかしそういう余計な感情のために、その場では冷静に理解できなかったものの、今から考えてみると、イヤな奴の言うことには、案外良いことが含まれているのだ。

 たとえば、私が失敗した例を出そう。
 あれは確か一九九七年、私が二十一歳の頃であった。
 私は自分の作った曲にものすごく自信を持っていた。そしてそのデモをあらゆる知人に配った。私が感想を求めると、みんな褒めてくれた。それでますます私は自信を持った。
 ただ、一人だけ、その曲を批判した者があった。それは、友人のAという男である。Aは、「この曲は駄作だ。俺の貯金全部賭けてもいい」とまで言い放った。私は、なぜAがここまで強く言うのか、全く理解できなかった。

 その後、某レコード会社のディレクターにその曲を聴いてもらう機会があったので、感想を求めてみた。私は、おそらく褒めてくれるのではないか、と予想した。
 だが、「駄作だ」とあっさり言われてしまったのである。そして、なぜこの曲が駄作なのかを、ディレクターは詳しく説明してくれた。顔から火が出そうなほど、恥ずかしかった。

 私は、ディレクターという「権威のある人」に言われて初めて、この曲の本当の価値を知ったのである。

 知人たちが褒めてくれたのにはいくつか原因があると思う。ひとつは、単なる社交辞令という側面。そしてもうひとつは、低レベルな意味での褒め言葉、という側面である。つまり、曲の良し悪しは別として、音楽のプロでもない私が、とりあえず作品を作ったという事実に対して、素直に「すごい」と言ってくれただけなのだ。
 そして、Aがなぜあそこまで強く言ったのか、その理由もやっと理解できた。それは、真剣に伝えたかったからである。

 もちろん、もっと良い伝え方というのはあるだろう。「優しい言葉使いで、傷つけないように伝える」というような。
 だが、そんな神仏のような人物はほとんどいない。特に、音楽をしているような人間は、意見の伝え方が下手な者ばかりだ。それに対していちいち腹を立てていたのでは、バンドなどできはしない。

 普通は相手を傷つけたくないがために、批判などしないものだ。だがそれは、真剣でないことの証拠である。褒める人は、実は心の中ではあなたのことなど、どうでもいいと思ってさえいるかもしれないのだ。
 だから、もし自分を批判してくれる人があったら、それは有り難いことだと思わねばならない。そうやって自分を常に疑いながら、力量は上がっていくものなのだ。時には数週間も鬱状態に陥るくらい辛いこともあるが、それがイヤならば音楽などやらない方がいい。