に掲載された
「Member of New Integrase Inhibitor Class of Antiretroviral Drugs Shows Promise」
を広島大学の高田昇先生が翻訳紹介してくださいました。
今週開催された、第14回レトロウイルスと日和見感染症年次集会(CROI)で新しいクラスの抗HIV薬を使用した臨床試験が、非常に有望であることが発表されました。
■ これまで試験薬名MK-0518という名前だったラルテグラヴィアは、HIV薬の中でもインテグラーゼ阻害剤と呼ばれる薬。
インテグラーゼ阻害剤とは、(HIVのRNAが、逆転写酵素の助けによって)DNAの形になったものが、宿主細胞(HIVに感染されてしまったヘルパーT細胞)のDNAの中に潜り込むところを、つまり、組み込もうとする所をブロックしようとする薬。
この「組み込み」はウイルスの増殖サイクルで重要な段階の一つ。
■ ラルテグラヴィアの臨床第3相試験の結果は、「治療経験がある患者」を対象にして実施されました。
ラルテグラヴィア400mgを1日2回、他に最適と思われる抗HIV薬を併用して、16週間治療。
その結果、
■「患者の79%がウイルス量400コピー/mL以下」になったのに対し、偽薬と最適併用薬を使った対照群では43%だったそうな。
■さらに驚いたことに(それほど驚くべきことなのかな?)、ラルテグラヴィア単独療法(もし耐性が発生したら大変だ)を行った患者の61%がウイルス量が減ったのに、偽薬対照群ではわずか5%であったとか(うーむ。16週間=4ヶ月もですよね。単独治療による耐性ウイルス発生を考えると、中々危険だな)。
■ラルテグラヴィアを服用した患者のCD4細胞数は、対照群に比べて2-3倍増加した。
■重要なことは、この薬の服用で顕著な副作用が見られなかったことである(本当なら嬉しいけど・・・)。
● 今まで実用化に至ったインテグレーズ阻害剤はなかったので、ラルテグラヴィアが利用できるようになるとすると、HIVとの戦いで使う武器の選択範囲が広がり、場合によっては、効果が低くて副作用が多い現在の薬に置き換えることができる可能性がある。
<高田昇先生のコメント>
◆ インテグラーゼ阻害剤も各社の開発競争が進む中、メルク社のMK-0518は、成績が良かったのでラルテグラヴィアという名前をつけてもらい、いよいよ市販認可へのスピードが高まったようです。(名前がつけられるということにはそういう意味もあるのですね)
◆ 一つの薬だけで治療できるのか(それはちょっと考えにくいなあ=管理人)、併用なのか、どのような併用がよいのか耐性はどうなのか、全体的な治療戦略では初期に使うべきか、後にとっておくべきなのか、長期使用で思わぬ副作用は出てこないか、妊婦でも安全か、そして値段はどうなのか、途上国でも使えるか、などなど・・・。
様々な疑問がでてきてひとつずつ答える臨床試験が重ねられるでしょう。
そして長く生き残る薬になるのか、あだ花のように消え去る薬になるのか、、、。いずれにしても新しい希望がわきました。
◆ Raltegravirを分解しますと、Ralと、Tegraと、Virのようですね。Virはウイルス、Tegraはインテグラーゼでしょう。じゃ、Ralは何なのでしょうか? わかりません。商品名は商標登録をするのですが、世の中には「命名」だけを商売にしている人たちがいるのだそうです。つまりゴロが良い名前は、商品がなくても、どんどん商品登録をしておいて、後でその名前が欲しい会社に高く売り払うみたいです。「知的財産」として何でも売れる国の話でしょう。[TAKATA]
高田先生の薀蓄は楽しいです。