熊本レポート

文字の裏に事件あり

豊洲問題よりもダーティーな熊本県の採石行政 第5-1回

2016-10-10 | ブログ

 豊洲問題がそうだが、自治行政は地域住民、社会の側で常にあるとは限らない。殆どの住民は自治を信じて疑うことなど夢にもないが、彼らが特定の側にスタンスを置くことは多々あることで、誰かの手によってチェックでも入れない限り、独断の「パブリック」という解釈で彼らは反社会的な行動で暴走する。
 熊本震災で南阿蘇村立野の土砂崩れは阿蘇大橋まで延び、その赤大橋までも崩落させた。
 実はその犠牲者まで生んだ崩落現場から約200メートル東側、山の中腹に建築資材置き場、リサイクルセンターがあった。山の中腹という環境上の問題だけでなく、排水施設などの防災上の問題も浮上したことから許認可担当の熊本県北広域本部(菊池地域振興局農林部)に電話を入れたが、3回の伺いに返答はなかった。
 該当地は「国立公園内で見苦しい」(福島元知事)の一声で、熊本大同砕石の採石を廃止させた採石場跡地だが、それが同社の廃棄物処理場に衣替えしたとあっては、元知事の思いは覆されたということにはならないか。
 そもそも国立公園の特別地域では、「土石の採取、土地の形状変更を禁ずる(自然公園法第13条)」となっている。ところが当時、熊本県観光労働部長は「特別地域指定(昭和54年)以前から採石の許可を与えていた」として、「生業の生活権」を重視して許可の更新を図ってきたと説明。国定、国立公園特別地域内の採石を巡っては昭和49年以降、県外では5件の訴訟が起きているが、いずれも自治行政側の「採取不許可(非更新)」が認められていて、熊本県が法律よりも特定業者の生活権を重視しているかがよく理解される。
 しかもだ、その温情はそれだけではなかった。本来、採石法第8条において「採石権者(採石業者)は採石権が消滅の時(終掘)、その土地を原状に回復し、又は原状に回復しないことによって生ずる損失については、それを補償する」となっているが、逆に県は3億5000万円(該当業者他2社)の補償費を支払い、その上に原状回復で約7000万円を支出したのだ。該当地の場合、「採石場修景緑化事業」として該当業者他9社を指名して入札となったが、該当業者が落札率99・7%で自ら受注。
 環境及び景観、そして防災上から「周辺の樹木種を参考に植樹」と法律は規定しているが、補償費だけでなく、その原状回復費まで支払って、廃棄物中間施設を許可したとなると、熊本地震による山崩れとは因果関係にはないと誰が言えるだろうか。さらに紹介した事案について「問題」と理解、認識する県民にあっては、これを問題なしとして無視、また隠蔽してきた県議会、報道機関に対して、どう対応すべきか。それを冷静、論理的に考えてもらう上で、次回の「雲仙天草国立公園域から除外された特別区域の背景」を含めて、これから事案例4件を連載で公開…。