桜井昌司『獄外記』アーカイブ 武田義徳 高知白バイ事件
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桜井昌司『獄外記』布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。高知地裁に武田義徳と言う裁判官がいて、高知白バイ事件の再審請求の担当裁判長をしている。
この武田くん、なかなか大変な人物で一筋縄ではいかない裁判官なのだ。 顔の美しい人が、心が美しいとは限らないように、司法試験に合格して裁判官になるような頭脳を持つ人が、その頭脳と同じように人間的に優秀であるとは限らない。学問的な頭脳を人間的な優秀さとして持て囃され、称賛されて来た者の中には、「学問馬鹿」と呼びたいような人がいるけれども、スポーツ馬鹿を嘲笑うことはあっても、学問馬鹿を嘲笑うことは、余りない。頭が良ければ人間も良いと錯覚するからなのだろうが、頭の良い馬鹿ほど、始末の悪い存在はないと、俺は冤罪の闘いを通して骨身に沁みて知らされて来たなぁ。 武田くんは、もちろん、学問馬鹿の代表的な一人だ。今、高知白バイ事件は、警察が行った証拠偽造に付いて、弁護団が証拠を提出して、重要な段階に入っている。停車してるバスに追尾訓練をしていたらしい白バイが、高速で運転を誤って勝手に突っ込んだのに、バスが動いて白バイに当たったとして、片岡春彦さんを犯罪者にした。 ところが、悪いことは出来ないもので、警察側の写真鑑定などをしていた三宅元千葉大教授が「写真は偽造」と鑑定した。鑑定が提出されれば、当然、鑑定した人から証言を聞いて、その鑑定内容を詳しく調べるのが裁判だろう。 しかし、この武田くん、「専門家に難しいことを証言して貰っても理解出来ない」と、その証言を聞かないままに再審を開くかどうかの判断をすると言うのだ。鹿児島地裁の中牟田博章も、かなりの優秀な学問馬鹿だったが、この武田くんは、中牟田くんに勝るかも知れない。 そもそも「専門家に難しいことを証言して貰っても理解出来ない」ような人間は、裁判官でいてはダメでしょう。「証言を聞いて理解出来ない」裁判官が、では鑑定書の内容を理解出来るのだろうか。 真面目に裁判を行う気持ちがあれば、「警察資料が偽装」との鑑定が提出されたらば、その鑑定人の尋問を行いたくなるのが普通だろう。それを「難しいことを聞いても理解出来ない」などと放言するのは、真面目に裁判を行う気持ちがない現れだろう。 弁護団は、この武田くんを「担当裁判官として相応しくないから代えるようにと」忌避したが、裁判官仲間は、その忌避申し立てを棄却。今、最高裁にかかっている。 俺は、自分が馬鹿だと承知しているし、馬鹿が馬鹿を批判できないのも承知しているが、余りにも真実を愚弄する武田義徳の「放言」には、看過出来ない怒りの感じる。 |