「覚悟していた」支援感謝 スクールバス、白バイ衝突再審棄却 /高知県
2014.12.17 大阪地方版/高知
高知市で2006年にあったスクールバスと白バイの衝突事故を巡る再審請求。高知地裁が16日棄却したことを受けて、請求で県警が証拠を捏造(ねつぞう)したと主張していた元バス運転手の片岡晴彦さん(60)が高知市内で記者会見した。「今後どうするか、これから考える。支援してくれた人に感謝している」と語った。
片岡さんはこの日午後4時20分ごろ、地裁を訪れ、直接、決定を受け取った。表紙にある「棄却」の文字を見て、「覚悟はしていました」と静かに話した。
白バイ隊員が死亡したこの事故では、片岡さんは「安全確認が不十分」とされ、業務上過失致死罪で禁錮1年4カ月の判決が08年に最高裁で確定。服役後の10年に再審請求した。片岡さんは、バスが動いていたとする有罪の証拠だったスリップ痕は県警の捏造だとし、バスは止まっていたと主張していた。
今回の棄却について、片岡さんは記者会見で、「裁判で『バスは止まっていた』と証言してくれた校長先生や引率の先生、通行車両の人たちには、恩返しが出来ず、本当に申し訳ない」と肩を落とした。
その上で、「ここまで来られたのも、家族や支援してくれた人たちのおかげです。本当にありがたい」と感謝を述べた。再審請求するにあたって、地元の仁淀川町の友人や知人たちが短期間で約130万円の寄付金を集めたという。
服役から出所後、バス運転手だったころの安定した生活は一変した。現在は新聞配達、宅配、デイサービスと三つの仕事を掛け持ちしている。再び再審請求するかと問われると、「最後まで闘うべきだと心強い支援の声もある。しかし、不安定な生活に、妻も不安を抱えている。どうすべきか……」と語った。
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生田暉雄・主任弁護士は「一審、二審の上塗りをした判決で、新証拠の検討が不十分だ」と話した。片岡さんを支援してきた日本国民救援会高知県本部の田中肇さん(71)は「警察に非を認めさせるのは難しいとしみじみ思った」と語った。
高知地検は「裁判所が確定審の証拠関係や再審請求審における資料を的確に検討し、適切な判断をされたと考えている」、県警は「コメントする立場にないが、結果として当方の捜査が適正だったと認められた」とそれぞれコメントを出した。(高橋正徳、西村奈緒美)
【写真説明】
支援団体のメンバーと高知地裁に向かう片岡晴彦さん(左)=高知市丸ノ内1丁目
朝日新聞社
元運転手の再審、地裁が請求棄却 警察の写真捏造認めず 高知 【大阪】
2014.12.17 大阪朝刊
高知地裁の武田義徳裁判長は16日、白バイ隊員の事故死をめぐって業務上過失致死罪に問われ、服役した元バス運転手の片岡晴彦さん(60)の再審請求を棄却する決定を出した。片岡さんは確定判決の根拠となった現場写真について「高知県警が捏造(ねつぞう)した」と主張。写真の鑑定結果を「無罪を示す新証拠」として提出していたが、認められなかった。
片岡さんは2006年3月、高知市(当時・春野町)のレストラン駐車場から国道に出ようとした際、右方向から走ってきた県警の白バイがバスの右前部に衝突。隊員が死亡し、片岡さんは在宅起訴された。
片岡さんは裁判で「止まっていたバスに白バイが衝突してきた」として過失はないと訴えたが、地裁は07年6月、道路上についたとされるバスのスリップ痕の写真を主な根拠に禁錮1年4カ月を言い渡した。08年8月に上告が棄却され、片岡さんは服役後の10年10月に再審請求した。
武田裁判長は現場に第三者がいる状況で県警がスリップ痕を捏造することはできないと指摘。「スリップ痕を強調するために写真のネガフィルムもデジタル加工された」とする弁護側の鑑定結果については、地裁が民間会社に依頼した画像解析結果を踏まえ、「確認できない」と判断した。
決定を受けて会見を開いた片岡さんは「残念。今後どうするか弁護士と相談したい」と語った。(西村奈緒美)
朝日新聞社
白バイ事故死 再審請求棄却 地裁=高知
2014.12.17 大阪朝刊
高知市春野町(旧・春野町)で2006年3月、スクールバスと県警交通機動隊の白バイが衝突し隊員(当時26歳)が死亡した事故で禁錮1年4月の刑が確定し、服役した片岡晴彦さん(60)が、裁判のやり直しを求めた再審請求について、地裁は16日、棄却した。
地裁は、再審請求時に弁護側が提出した証拠について「証拠価値は乏しく、採用の余地はない」と判断した。
事故は、駐車場から国道56号へ出て右折しようとしたバスと白バイが衝突し、白バイを運転していた隊員が胸を強く打って死亡した。08年に最高裁が上告を棄却して刑が確定した。
再審請求では、バスが動いた根拠とされるスリップ痕(左前輪約1・2メートル、右前輪約1メートル)は「捏造(ねつぞう)したものだ」と反論、バスは止まっており、片岡さんは無罪だとしていた。
片岡さんは「家族と支援者の思いに報いることができず残念」と話した。
読売新聞社
春野の交通死亡事故:白バイ事件、再審請求棄却 地裁、警察の「捏造」認めず /高知
2014.12.17 地方版/高知
高知市で2006年、スクールバスと県警の白バイが衝突して警察官(当時26歳)が死亡した事故で、業務上過失致死罪で禁錮1年4月の有罪が確定した仁淀川町森の元バス運転手、片岡晴彦さん(60)=満期出所=の再審請求について、高知地裁(武田義徳裁判長)は16日付で棄却する決定を出した。即時抗告するかどうかは今後協議する。【岩間理紀、上野宏人】
◇「バスは動いていた」
片岡さんは06年3月、旧春野町(現高知市)の国道56号でバスを運転して駐車場から出る際、安全確認を怠り白バイと衝突して警察官を死亡させたとして、最高裁が08年8月に上告を棄却して実刑が確定。出所後の10年10月に再審請求した。
弁護側は、有罪の根拠となったバスの急ブレーキでできたとされるスリップ痕を「警察の捏造(ねつぞう)」と主張。現場写真のネガフィルムを調べ「痕の先端が異常に濃いなど偽造したと疑わざるを得ず、停車中のバスに白バイが衝突し安全確認は十分だった」と指摘する鑑定書などを新証拠として提出した。地裁は決定で「捏造は裁判所の鑑定の結果認められず、車の破損状況などからバスが動いていたのは明白」と退けた。
◇地検「適切判断」
県警監察課の刈谷斉首席監察官は「再審請求の結果についてはコメントする立場にないが、棄却は警察の捜査が適正であったと改めて認められたと考えている」と話した。高知地検は「裁判所が資料を的確に検討し、適切な判断をした」とのコメントを発表した。【最上和喜】
◇片岡さん「覚悟していた、悔いはない」 署名活動や祈願も実らず
片岡さんは棄却の決定を受け、高知地裁で記者会見。「覚悟はしていたが、裁判所はこういうものだろうか。残念ですが弁護団が調べてくれた結果です。悔いはありません」と話した。
事故発生から8年半。1審から一貫して無罪を主張してきた。「県警の取り調べでも支援者からも『罪を認めれば実刑は免れるかもしれない』と勧められた」が「バスに乗っていた22人の生徒たちは『あの時、バスは動いていなかった』と証言してくれた。事件をうそのままにしていいのか」と拒否し、2008年11月に加古川刑務所(兵庫県加古川市)に服役。「なぜ自分はここにいるのか」。家族の写真を頼りに耐えた。
事件は、家族の人生も大きく変えた。
事故が発生した3月3日は片岡さんと妻香代子さん(57)の結婚記念日。「夕食の準備中に警察から『旦那さんを逮捕した』と連絡があった。心ない電話や中傷もあり『なんで家族がこんな目に遭うのか』と夫を恨みたくなることもあった」と香代子さん。「でも、晴さんは悪くない」
片岡さんの服役中は新聞配達のアルバイトで家計を支え、毎日往復2時間半をかけて高知市内に通っては再審請求を訴える署名活動で街頭に立った。「無実が証明されますように」。出所後には仁淀川町の自宅近くの神社に2人で手を合わせるのが日課となった。
片岡さんは「家族の支えが第一だった。妻には自宅に帰ってから報告します」と話した。【岩間理紀、上野宏人】
毎日新聞社
白バイ事故 再審棄却 高知地裁 「証拠捏造は不可能」 元運転手請求
2014.12.17 朝刊
2006年3月、高知市春野町の国道56号でスクールバスと白バイが衝突し、白バイ隊員=当時(26)=が死亡した事故で、高知地裁は16日、業務上過失致死罪で禁錮1年4月の実刑判決を受けた元バス運転手、Aさん(60)の再審請求を棄却した。
武田義徳裁判長は、Aさん側が「警察官に現場で捏造(ねつぞう)された」と主張していたバスのスリップ痕について「衆人環視の下で捏造するのは不可能」と指摘。
ネガフィルムの捏造に関する主張も退け、「(Aさんが)バスを発進、進行させ、白バイに衝突させたという確定判決の事実認定に、合理的な疑いが生じないことは明らかだ」と認定した。
再審請求審でAさん側は、県警が撮影した事故現場の写真に関し、「スリップの痕跡は液体などにより人為的に偽造したと疑わざるを得ない」とする学識経験者の鑑定書などを提出。高知地検は「(スリップ痕の)周りに液体の痕跡はない」とする警察庁科学警察研究所(科警研)の技官らによる意見書などを出していた。
Aさんは、棄却の決定文書を高知地裁で受け取った後、支援グループの代表と地裁内で記者会見。「弁護団もいろいろ調べてくれてやった結果なので、悔いはない。(今後については)弁護団と詰めたい」と話した。
一方、棄却決定について高知地検は「確定審の証拠や再審請求審の資料を的確に検討し、適切な判断がされたと考えている」(水本和彦次席検事)、県警は「捜査が適正だったことがあらためて認められたと考えている」(刈谷斉首席監察官)とのコメントをそれぞれ出した。
確定判決によると、Aさんは06年3月3日、吾川郡内の中学校の生徒ら25人が乗ったスクールバスを運転。春野町弘岡中の国道56号沿いのレストラン駐車場から安全確認が不十分なまま、右折するため国道に出て、右側から来た白バイと衝突し、隊員を死亡させた。
Aさんの実刑判決は、07年6月の一審、同10月の二審判決を経て、08年8月の最高裁で確定。Aさんは服役後の10年10月に再審を請求していた。
高知新聞社
白バイと衝突事故で実刑 元バス運転手の再審請求認めず 高知地裁
2014.12.17 朝刊
2006年、高知市の国道でスクールバスと高知県警の白バイが衝突し、警察官=当時(26)=が死亡した事故で、高知地裁(武田義徳裁判長)は16日、業務上過失致死罪で禁錮1年4月の実刑判決が確定した元バス運転手片岡晴彦さん(60)の再審請求を棄却する決定をした。
事故は06年3月3日に発生。駐車場を出たバスが右折しようとした交差点で白バイと衝突した。弁護団は「停車中のバスに白バイが衝突してきた」と主張。有罪の根拠となったバスのスリップ痕を「警察の捏造(ねつぞう)」と訴え、新しい証拠として、専門家による現場写真の鑑定書を出した。しかし武田裁判長は「技術的に捏造が可能であるというにすぎず、それ以上の証拠価値はない」と判断した。
四国新聞社