減らしたよ。抗がん剤。

抗がん剤投与の日のことである。

体重を測った後、待合室で待っていたら、看護師が忙しそうに来て体重を測らなくちゃと言うので、
「ん？さっき測ったばっかりですけど？」と答えると、
「あっ、そうでしたかね。」と去っていった。

部屋が空いたので移動して点滴を待っていると、
「やっぱりもう一度体重を測りたいんですけど。」と看護師。
もう一度体重計に乗った。
その後、看護師は体重計をブンブン振りだして
「おかしい。体重計がヘン。」と言い出した。

昔の秤ならいざ知らず、今の体重計は精密機械じゃないのかなとぼんやり見ていると、看護師は私をじっと見つめた。
「体重、家でも測ってますか？この体重でもいいんですか？」

要するに３週間で５キロ以上減っていたことが、にわかには信じられなかったらしい。最初からそう言えばいいのにさ。

私には以前から体重を減らすことで抗がん剤を減らし、さらに治療代を浮かせるという大目的があった。

実際に抗がん剤投与直後は食欲不振になるし、全体的に食事の量は減っている上、ジョギングを時々やるようになって体重はジリジリと落ちている。
おかげで薬剤師は再計算し、エピルビシンが5mg、エンドキサンが50mg減った。

「全体から見ればそんなに量は違いませんよ。」と言われたものの、私はささやかな勝利感に包まれながら点滴を受けたのである。

ところが、その日はいつもより治療代は高かった。
今回から抗ホルモン剤注射が加わったせいだ。

憮然としながら治療代を払いつつ、私は体重が減らなければもっと高かったんだからと自分を納得させるしかなかった。

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