乳がんで私も考えた

2011年9月に乳がん告知。抗がん剤FEC→TC治療中。がんになって変わった世界観を語る。

たまにはカツラをかぶってみるか。

2012-01-10 08:32:17 | 診断結果と治療方針
先日、知り合いのレストランでオーナーが私の脱毛後を見たいというので、すぱっと帽子を脱いだら

「ひぃ~~!」

とまるで後光が見えたかのように息を呑んで手を合わせた。
そしてすぐに

「他のお客さんがいるから、さっ、隠して。隠して。」

いや、別に私は平気なんですがね。ハゲ頭を見せても。ハダカってわけじゃないんだし。アタマなんだから。

こんなに喜んでくれるのなら、いや、喜んだのかどうかはわからなかったが、ともかくえらく感銘を与えたようだったので、もし他にも私のハゲ頭が見たいという人がいたら、いつでも見せてあげたいと思う。

しかし皆、気を遣ってくれる人たちの方が多くて、頭の話題は禁句になっている。少なくとも私の周囲1mでは。

そういえば、また別のある時、病気の話題になった時、
「じゃあ、私の頭、見せましょうか?」と帽子を脱ごうとしたら
「ええっ。ダメ!いいですよ。脱がなくていいです!!」と、まるで私が洋服を脱ごうとしてるがごとく必死で止めにかかったことがあったっけ。

なんだ、つまらない。驚く顔が見たかったのに。
内心そう思っている自分がいた。

脱毛から三ヶ月。

自分のハゲ頭を何の感情もなく鏡で直視できる。ようやくそんな心境になったわけだ。

脱毛した時は、あまりにショックで美容室でメソメソ泣いてしまい、ティッシュをもらうという醜態をさらしたが、今では涙は涸れ果てたって感じだ。

実際のところ、お風呂で髪を洗う必要もないし、ドライヤーも必要ないし、排水溝とか部屋の掃除もラクだ。髪はあらゆる点で手間暇かかるシロモノだったのだ。今となっては遠い昔の話だが。

私は普段ほとんど着心地のいい帽子で過ごしているが、ウィッグに対してもあまり抵抗感を感じなくなったようだ。以前はあれほど「カツラがばれたらイヤだ。」と思っていたのがウソみたいだが、今はどちらかといえば、「バレたって、いいや。その時はその時さ。」って開き直っている。

昨日、部屋の隅のウィッグにうっすらと溜まったホコリを払いながら思った。

たまにはカツラをかぶってみるのも気晴らしになっていいかもしれない。

そんな気分にようやくなってきた。

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反動ってやつかな

2012-01-09 11:52:23 | 乳がんで考えた事
モールに立ち寄ったので無印良品の店に入ってみた。文房具でも見ようかなと思っていたら、いつのまにかお菓子コーナーに入り込んでいた。

素のままポテトチップスやフライドポテト、揚げおこげせんべいを見てるうちに、いつのまにか買い物かごにそれらスナック菓子類がたくさん入っていた。

で、車の中でいつのまにか揚げおこげせんべいをボリボリ食べているうちに、これじゃイカンなぁと思った。

今朝、体重を10日ぶりに測ったら、3kgも増えてた。白血球数が少なくなってから運動も控えているうちに、そのまま運動をしなくなった上、間食が増えたので当然だ。

乳がんだとわかった時はショックで、食生活を改善しようとはりきってたけど、馴れというのは恐ろしいもんだ。美味しいものを食べた方がいいとばかりに好き勝手に食べているし、お酒も飲める時は普通に飲んでいる。

おまけに自分のハゲ頭すら時々忘れて、帽子もかぶらず外に出てしまって気づくことがある。なんとふてぶてしい乳がん患者だ。

よくドラマや小説とかで長年入院している結核患者が、ゆら~とキセルをくゆらしては、ゴホゴホと不自然な咳をするという、まるで牢名主みたいなやつが出てくるが、そんなイメージである。

アタシ、乳がんなのよ。
そう言っては酒とタバコをくゆらせて人に絡んだりして。

いかんいかん。自分が傾きそうでコワイ。

そんなわけで、久しぶりに9km走った。

増えた体重3kg分、お尻がプルプル揺れた。

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治療選択の大切さ

2012-01-08 09:16:16 | がん関連の本
渡辺容子さんの本を読んだ。
渡辺さんは、「患者よガンと闘うな」の近藤誠医師の思想を体現している方だ。1994年、残酷に胸をえぐりとるハルステッド手術全盛の時代、彼女は自己検診で5mmのしこりを見つけた。すぐに近藤医師にかかり、いくつも本を読んだりして、あえて6年間放置する道を選んだ。

結果、ガンは大きくなり、全身の骨、肺、肝臓に転移した。がんもどきじゃなく、本物のガンだったのだ。

せっかく早期発見できたガンをあえて放置したことについて、「んなバカな!」と最初は思った私だが、本を読み進めるうちに、彼女は自分の治療をする上で、それも一つの選択なんだと納得した。

乳がん 後悔しない治療──よりよく生きるための選択
渡辺 容子
径書房


医者ではなく患者の立場から書かれているのはわかりやすい。
渡辺さんは自分を観察しながら必要に応じて対症療法を行っている。

本の中に、他の患者へのインタビューも掲載されていているのも非常に参考になるし、子宮頸がんになった彼女のいとこと、いわゆる「ドクターウォッチング」をして治療を選択していく様子は面白い。比較検証によって、患者は一番賢い選択できるという見本のようだ。

治療を選択するのは、残りの人生をどう生きるかということに繋がっている。ガンの治療は一度始めたら、元の状態に戻ることはできない。

私自身も抗がん剤はすでに身体の一部になっているし、PETなど一連の放射線検査によって被爆もしているわけだ。

これからの治療も、どんな治療法を選ぶにせよ、たとえそれが無治療であったとしても、二度と何もなかった状態には戻れない。

私も後悔はしたくないと思う。

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抗がん剤と前向きにつきあうことにした

2012-01-06 11:26:41 | がん関連の本
最近、トマトジュースを飲もうとして、FEC治療のエピルビシンを思い出して、さらに副作用の吐き気を思い出して飲む気がしなくなった。

抗がん剤は毒なんだという認識が、たとえガン細胞を小さくさせても、どこか私を憂鬱にさせてきた。
それで抗がん剤についての本を読んでみることにした。

間違いだらけの抗ガン剤治療―極少量の抗ガン剤と免疫力で長生きできる。 (ベスト新書)
梅澤 充
ベストセラーズ


普通の標準治療では、身長と体重をもとに体表面積で量を決定するのだが、この本を書いた梅澤医師は末期のがん患者に抗がん剤の量を少なく投与して、みるみる体調が回復していった実例をあげている。全然効かなかった例もあるそうだが、少なくとも金科玉条のように標準治療を進めている医師とは違うだろう。

本の中に「免疫力は患者本人自身が持っているものが一番強い。」という記述があるのに驚いた。どんな健康食品や代替治療、免疫治療の効果よりも、もともと人間自身が持っている免疫力の方がはるかに強いというのだ。

抗がん剤はその一番強い武器を殺してしまう問題点がある。そこで、その量を少なくすることで、本人の免疫力を生かし治療の実績をあげている。梅澤医師は乳がん患者を多く診ているので参考になる。

ブログも勉強になるのでどうぞ。
「現在のガン治療の功罪~抗ガン剤治療と免疫治療」

もう一冊。抗がん剤と徹底的に付き合った女医さんの本だ。
うまく使って、うまくかわす! 怖くない抗がん剤 (主婦の友パワフルBOOKS)
小倉 恒子
主婦の友社

すでに亡くなられた方だが、まさに抗がん剤治療患者のツワモノ。乳がん発覚から23年、再発して10年の、自らの経験をもとに抗がん剤を駆使して、日常生活を過ごし、趣味のソシアルダンスも続けておられた方。
全身に転移しながらも、抗がん剤も使い方によってはこのように明るく生きられると教えてくれる。

本を読んでいると、抗がん剤について不安だった部分が不思議と落ち着いてきた。えたいがしれないから人は不安になるのだ。

抗がん剤治療は、その薬が生まれてから今日まで、世界中で数え切れないほど多くの実験患者を礎にしてデータが作られている。私が抗がん剤治療を受けられることも、それほど副作用に苦しんでいないのも、先輩患者のおかげだ。

もっと抗がん剤に対して前向きにつきあうことにしよう。

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ガン患者として訊かれた事

2012-01-05 09:39:39 | 乳がんで考えた事
私が乳がん患者だと知って、会ったばかりのAさんが質問してきた。

A「私の知り合いのKさんがしばらく前から肝臓癌でね。」
私「ああ、厄介なトコロに癌ができましたね。」
A「そうでしょう、そうでしょう。」

私の頭に、お友達のYさんから聞いた話とか本とか、ガン関連の知識がフラッシュバックのように出てきた。

A「アナタ、ガンに詳しいでしょう?本を読んでるでしょう?」
私「ガンになってから勉強するようになりました。」
A「そう。ガンの事は、ガン患者に聞くのが一番ですとも。」

…なるほど。
病気のことは医者の次に患者が詳しいってことか。

当たらずとも遠からず。確かに私は乳がんにかかる前とかかった後では、知識量が全然違う。といっても、よく考えたらガン告知からたった三ヶ月しか経っていない、にわか乳がん患者。

A「Kさんが、自分はもう長くないからってんで仕事の事を私、頼まれたんですがね、Kさん、胸水をこないだ抜いたっていうんですよ。」
私「胸水がたまるとすごく苦しいらしいですね。」

私は専門は「乳がん」なんだが…と、まるで専門外のことを聞かれた医者気分。自分がガンルーキーって事をすっかり忘れている。

A「もう78才だし、後先長くないと思いますが、どう思いますか?」

抗がん剤、手術、放射線。
日本の医療でできるのはこの三つ。

Kさんが自分はもう長くないとAさんを頼ったのなら、そういう事なのだろう。
私は言った。
「体力的に厳しいですし、長くないでしょうね。」

ご、ごめん。
本人がいないところで、勝手に言ってしもうた。

ただ、私は他人事としてテキトーに言ったわけじゃない。

自分の乳がんの状況と、今の治療方法や今後の事、私と同じ境遇の乳がん患者の状況やらを考えあわせて、どうしても直視せざるをえなかった。Aさんも自分自身に覚悟を促すために聞いていたのだ。

乳がんにかかる前は、他人の寿命の話をするなんて全く考えられない事だったし、病気の話題はできるだけ避けていたものだ。でも今では目を背けたくても見えてくる。がんに対する関心はかなり強くなった。

人からガンについて聞かれること。
自分がガンについて話をすること。
人のガンについて話を聞くこと。

こういうことが、つまるところ自分がガン患者になったって事なんだな。

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