持続する夢

つれづれにふと気づいたことなど書き留めてみようかと
・観劇生活はえきさいてぃんぐに・日常生活はゆるゆると

ラヴ・レターズ 1/2

2005-08-18 23:30:37 | 演劇:2005年観劇感想編
寺脇康文氏と戸田恵子氏で観劇。公演詳細はこちら
舞台セットは。小さな丸テーブル。水差しと2客のグラス。両脇にゆったりした椅子が2脚。ほの暗い照明。純白の衣装で(寺脇さんはスーツ・戸田さんはドレス)、ふたりは現われて。椅子にかけ、おもむろに台本を開き。朗読劇は幕を開ける。

ええとこ(上流階級)の小さな子どもが、自分の手紙を読み上げる。たどたどしい単語に、たどたどしい発声。だんだんと。寺脇氏のアンディが、律儀で大人しい性格だとわかり。彼の大好きな、戸田氏のメリッサが、気ままでお転婆だとわかる。メリッサは、手紙が嫌いだという。だけど、アンディの手紙には、短くってもちゃんとお返事は書く。

いつしか、ふたりの言葉は。少年に、青年に成っていく。そんな時の流れを見守り続ける。
遠く離れたふたり。電話にしましょう、逢いましょうと焦れるメリッサ。友情でもなく、恋情でもなく(というには、知っている期間が長すぎる)。手紙では、実体が見えないと言い切るメリッサに。手紙の中こそが本当の姿なのだと綴り続けるアンディ。何度も読み返せるが故に、傷つける力を持つ言葉。耳を塞いでも読み取れる、あたたかい言葉。

彼女は、奔放な上にエキセントリックな芸術家になっていき。翻弄されるだけだった彼は、落ち着きをもった本物の大人になっていく。あちらこちらに居所を変え、環境が変わっても手紙だけは途絶えない。彼女は、彼の女の噂に腹を立てて適当な男性と結婚をするくせに。彼の結婚には返信もできないほど欝になる。そして、回復させるのは。やはり彼の手紙なのだ。理解できるようなできないような、不思議な関係。

ふたりの役者たちは。決して相手を見ない。じっと自分の書いた手紙を見て、それを読み続ける。心をこめて。彼(彼女)が読み上げる間、もうひとりは。自分のもとに届いたその手紙を、じっとみている。その文章に一喜一憂しながら。

寺脇さんと戸田さんは。もちろん、どの年齢も無理なく演じられる技量をお持ちだけれど。ふたりの実年齢付近の芝居は、ぞくぞくするほど良かった。椅子から立ち上がることが許されない演出の中で。浮き立ち、落ち込み、疑心暗鬼にとらわれ、立ち直る。ほんの少しの身動きと、声色とその緩急だけで伝えられる芝居に。身を固めて、耳を傾け続ける。

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