MRIのすべて(all about MRI)

磁気共鳴イメージング(MRI)に関するさまざまな経験や知識を提供しつつ今後の展望を切り開きたい.

MRIの歴史的論文(2)

2006-03-21 21:09:40 | Weblog

MRIのきっかけになったLauterburの論文は,

Image Formation by Induced Local Interactions: Examples Employing Nuclear Magnetic Resonance

Nature Vol. 242, 190 (1973). (received October 30, 1972)

です.題目の日本語訳は,

誘起された局所相互作用による画像生成:NMRを用いた例

というものです.

この論文の中で,Lauterburは,まず,画像生成は,多くの場合,計測に用いる波や物質の波長によってその分解能が決定される,ということを述べています.

ところが,これに続いて,局所的相互作用を用いることにより,この制限を取り除くことができる,ということを述べています.この局所的相互作用が,勾配磁場と核スピンの相互作用,すなわち,場所毎に異なる共鳴周波数です.

これを示すために,Lauterburは,上の図に示す実験を行いました.

共鳴周波数は60MHz(波長は5m),そして,1cmあたり700Hzの勾配磁場を使用しました.

被写体は,内径4.2mm(NMR用の5mm管)の中に,重水(D2O)を満たし,その中に,内径1mmの純水(H2O)を入れた2本の試験管を入れたファントムです.

このファントムに,勾配磁場を加えて,周波数スペクトルを計測することにより,勾配磁場方向の投影スペクトルを計測しました.

上の図で,ファントムの外側の円は,内径4.2mmの重水の入った試験管を表しています.

論文には,明記してありませんが,重水の入った試験管を用いたのは,二つの純水の入った試験管同士の磁気的相互作用の影響により,純水のプロトンのNMRスペクトルが広がるのを防ぐためです(勾配磁場がないときの純水のプロトンの共鳴周波数は5Hzとなっている).

このように慎重な実験を行って,Lauterburは,明日示す,NMR画像を得ることができました.

続きは明日.


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