MRIのきっかけになったLauterburの論文は,
Image Formation by Induced Local Interactions: Examples Employing Nuclear Magnetic Resonance
Nature Vol. 242, 190 (1973). (received October 30, 1972)
です.題目の日本語訳は,
誘起された局所相互作用による画像生成:NMRを用いた例
というものです.
この論文の中で,Lauterburは,まず,画像生成は,多くの場合,計測に用いる波や物質の波長によってその分解能が決定される,ということを述べています.
ところが,これに続いて,局所的相互作用を用いることにより,この制限を取り除くことができる,ということを述べています.この局所的相互作用が,勾配磁場と核スピンの相互作用,すなわち,場所毎に異なる共鳴周波数です.
これを示すために,Lauterburは,上の図に示す実験を行いました.
共鳴周波数は60MHz(波長は5m),そして,1cmあたり700Hzの勾配磁場を使用しました.
被写体は,内径4.2mm(NMR用の5mm管)の中に,重水(D2O)を満たし,その中に,内径1mmの純水(H2O)を入れた2本の試験管を入れたファントムです.
このファントムに,勾配磁場を加えて,周波数スペクトルを計測することにより,勾配磁場方向の投影スペクトルを計測しました.
上の図で,ファントムの外側の円は,内径4.2mmの重水の入った試験管を表しています.
論文には,明記してありませんが,重水の入った試験管を用いたのは,二つの純水の入った試験管同士の磁気的相互作用の影響により,純水のプロトンのNMRスペクトルが広がるのを防ぐためです(勾配磁場がないときの純水のプロトンの共鳴周波数は5Hzとなっている).
このように慎重な実験を行って,Lauterburは,明日示す,NMR画像を得ることができました.
続きは明日.
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