見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

納棺師

2008-09-21 22:15:31 | 生き方・生活
「納棺師」の大きな広告が、北海道新聞面に掲載されていた。

葬祭センターや葬儀場のこじんまりした広告はいくつも見たことがある。
大抵、お悔やみ欄や葬儀告知の並びに小さな枠で掲載されている。

しかし、この「花と葬儀の丸和堂」の広告はそれらと趣が異なる。
地域面に5段抜き半分のカラー広告。
かなり気合が入っている。



「大切な方のお旅立ちへのお手伝いは、わたくしたち専門スタッフにおまかせ下さい」のキャッチコピー。
中央に3人の納棺師が名前入りで紹介されている。
そして、「納棺師とは・・・」の紹介。

『おくりびと』効果だろうか。

「納棺師」という職業を、私はこの映画で初めて知った。
人の死や葬儀に立ち会った経験はあると思っていたが、よく考えてみると、
「立ち会った」のは、臨終場面だったり、お通夜の場面だったりの断片的な場面ばかりで、納棺を含む一連の流れを経験しているわけではなかった。

映画で紹介されている納棺の儀式は静謐で美しい。
どの仏式の葬儀でも、こうした儀式が行われているのだろうか。

『おくりびと』の納棺技術を指導したという「札幌納棺協会」が札幌にある。
昭和44年創業。「NKグループ」と称する同社支店は全国に20ヶ所以上営業しており、長野市にも営業所があった。

となると、少なくとも「丸和堂」の大きなカラー広告は北海道の人にとっては、珍しいというものでもないのかもしれない。



今月は、ここ数年にないほど劇場で映画を観た。
乾いているのかもしれない。

『おくりびと』は世界映画祭でのグランプリ受賞等、評判が良すぎるので警戒したが、本木雅弘という俳優の弱さと品のある演技が好きなので観ることにした。

遺体を納棺するまでの所作を、ひとつの厳粛な儀式として成立させるための演技者でありプロデューサーでもある納棺師を、本木雅弘は期待通り、控え目な品格と美しさを垣間見せながら演じていた。
日本人の、死や遺体に対する穢れや忌みの民族的感性と価値観を、多少なりとも変容させてくれるのではないかと期待するほどだ。



映画のストーリーやエピソードについては、腑に落ちないものがいくつかあった。
「妻」の扱いや、「父親」との顛末でも、偏向的視点や安易さが気になる。
が、山崎努の存在感が、それらの不満を薄めてくれていた。

仏式葬儀一連は形式的過ぎて苦手だが、納棺師の儀式には遺族と向き合う優しさがあるように思えたのは、映画の演出がためだろうか。
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