きものサロンながしま福岡支店

福岡支店のスタッフが更新するブログです。
お着物に関するお悩みのあれこれを、より分かりやすくお答えいたします。

55年ぶり

2024-08-30 17:45:57 | 日記
昨日母娘でご来店下さったM様
台風の最中でしたが、お嬢様とのスケジュールが合わずどうしても昨日じゃないとダメだったらしく、
お二人とも大きな荷物を抱えてご来店下さいました。

事前にお電話でのお問い合わせがあり
「古い振袖があるんですけど、娘が着れるかどうか見て貰えませんか?」とのこと。
「もちろん大丈夫でございます。できればお嬢様も一緒にご来店頂けると幸いでございます」

ということで、昨日のご来店になった次第です。

で、
タトウ紙からお着物を出してみると、なんとも昭和レトロなお振袖。
「これ、おばあちゃんの振袖なんです。私の姑に当たるんですけど・・・」
「へぇ~ おばあちゃんっておいくつなんですか?」
「75歳です」

ということは55年前のお着物。
さすがに若干、裏地は黄ばんでましたが表地までには移ってなく、
「これ、一度洗いに出して染み抜きもしてもらったんです」と。

お母様の振袖では寸法が合わなかったらしく(身長差が15cmほどあります)
だったらレンタルにしようかとお嬢様と話してた時に、
おばあちゃんが「私のでいいなら、まだとってあるよ」と。
後日、その振袖を見るとお嬢様がいたく気にいられたようで、
「このふりそでだったら誰ともかぶらないよね~」

ちなみにおばあさまの身長は162cm
55年前の女性にしたら、おそらく目立つ身長だったんじゃないかと。
しかもお振袖の身巾を計測してみると、今のお嬢様とほぼ変わらない体形だと想像します。

まずはお嬢様の裄とヒップを計測し、
お振袖を計測して照らし合わせると、
身丈、裄ともに一寸(約4cm)短い状態。
ご本人次第では着れない状態ではないのですが。。。さて、どうしましょう?

お母様といろいろ話し合ってるうちに
「ちょっと、着せて貰ってもいいですか?」とお嬢様。
で、
実際に着付けしてみると、
「やっぱり、袖が短いね~」と双方がおっしゃって、
結局、裄直しは進めることになりました。
その際に、
「帯はどれを合わせたらいいか分からなかったので、とりあえず家にあるものを持ってきました」と。
拝見すると、留袖用や小紋用みたいな帯が3本ほど出てきて、
最後に取り出したのが緑の亀甲柄の袋帯。
「これがお振袖用の帯ですね」
「やっぱり、そうですか~」
「すみません。ついでに小物も選んで貰ってもいいですか?」
こちらもまた、留袖用とカジュアル用の帯締め・帯揚げ。
「この中にはお振袖に合うような小物はないみたいです」
「それって、こちらで揃えることはできますか?」
「もちろんでございます」

あとは、草履・バックや半衿・重ね衿も合いそうなものがなく
結局、裄直しが仕上がった時に小物類は取り寄せておくということで話しが収まりました。
(あれ?長襦袢がないけど・・・)
お尋ねすると
「この中にあるもので大丈夫ですか?」と、風呂敷のひろげると
「これ、3点とも袖が短いようです」と申し上げると、
おばあちゃんに電話してみようということになり、やはり記憶にないとのこと。

「ちなみに振袖用の長襦袢って、いくらくらいするんですか?」
金額を申し上げると
「へぇ~ やっぱりそれくらいはするんですね~」と。

お母様はレンタルを推してたみたいですが、
お嬢様がどうしてもこの着物がいいということになり、
「もう一度、長襦袢を探してみますけど、もし無かったらこちらで購入はできるんですか?」
「はい。もちろんでございます。裄直しが仕上がった時にご覧いただけるように手配いたしますのでご安心ください」

お嬢様の、この振袖が着たい!!っていう熱がお母様にも伝わったようです。
誰とも被らない振袖。
昭和レトロだから逆に新鮮!!
これが決め手だったようです。

ちなみに、おばあちゃんの振袖姿の写真はセピア色になってまだあるとのこと。
お孫さんの振袖姿を自分の写真と比べたりするんでしょうか。。。




本望です

2024-08-23 17:49:16 | 日記
先日、振袖と振袖襦袢の丸洗いをご注文下さったA様

玄関先でお受け取りしたのですが、
チラッと拝見した時に衿元にちょっと強めの染みがあったので
(袖付けのホツレもお見受けしました)

「こちら、丸洗いでは染みは落ちないと思いますので、染み落としのお見積もりを出してご連絡さしあげますので。。。」と申し上げると、
「実はですね・・・
 この振袖、もう12回も着てるんですよ。だから、もうお役御免なので取り敢えず洗うだけ洗っとこうかと思って・・・なので、染みとかホツレはそのままでいいですよ」と。

A様のお子様は三姉妹。それぞれが寸法を直したり、戻したりしながらお召しになったんだとか。
それに姪御さんにも2回ほど貸したということですから、
やはり12回くらいは着用されたということなんだと思います

お嬢様たちはそれぞれが嫁いで「もう振袖を着ることもないね~」と、今年のお正月に話してたんだそう。
(その時に、何回着たか数えてみたそうです)
ただ、そのままにしておくのも忍びないので、今回のご注文に至った次第です。

おそらく、レンタルの価格に換算したら充分に元を取ってるかと思いますが、
何よりも三姉妹が同じ振袖姿での記念写真を撮って下さったことが、とても嬉しいです。

この振袖も本望だと思います。


底上げ

2024-08-10 18:03:57 | 日記
先日カップルでご来店下さったF様
「花火大会に二人で浴衣着て行ったら、汗をすごくかいたので洗って貰いたいんですけど・・・」
とのご要望でした。

承り書を書いてる最中に、
「着てるうちに帯がどんどん上がってきて、前がはだけてしまったんですけど、
 これって、着方の問題ですか?」とご質問が。

F様は既製品の浴衣をご購入されたのち、ユーチューブをみて角帯の締め方を覚えられたんだとか。
身長は175cm
おそらくLサイズを買われたんだと思いますが、
体重が58kg
細めの体系です。

ちなみに。。。
ということで、実際にどんな風に着てらっしゃるのか
着付けをしてみて頂きました。

予想通りというか、
身巾は余ってしまい、帯も締め終わった時点でかなり緩めな感じ。

2点だけアドバイスさせて頂きました。
①下前をグッと奥まで巻き込むこと。
②帯を回すときに一周したらその都度、キュッと締めること。
痩せてらっしゃるので、できればタオルをお腹の所に巻いてから浴衣を羽織った方が
帯が上がりづらいことも付け加えました。

実際に着付けして差し上げると
「へぇ~~ 全然違いますね」

女性の方も
「私もタオル巻いた方がいいんですか?」と。
「極力、寸胴に近い状態にしてあげた方が仕上がりがキレイになります」
ましてや浴衣なので、汗を吸わせてあげた方がご本人も楽かと。。。

「来年はもっと太るか、タオル巻くか・・・ですね」とF様。
「もし、また何か分からないことがございましたら、いつでもご相談下さいね」

若い方が着物の世界に足を踏み入れるのに、浴衣はもっとも身近だと思います。
そうすることで、少しでも「和」の底上げができればなぁ~と常々感じてます。
さて、
来年の花火大会。
F様の着付けは如何に。。。



どうしよ~

2024-08-02 18:44:41 | 日記
本日、絽の色無地の丸洗いをご注文下さったN様。
お茶席でけっこう汗もかいたとのことで、
「早めに洗っておいた方がいいかな~と思って・・・」とおっしゃってました。

衿と胸元に若干の染みもありましたが、
取り敢えず絽の長襦袢と共に丸洗いだけでいいですとのこと。

私が承り書を書いてると、
「この着物を染め替えるのと、化繊の夏着物を買うのと、どっちがいいと思います?」とのお尋ねが。
「さすがに、このピンク色じゃ、ちょっと派手かなと思ったりしてるんです」

ポリエステル夏着物のメリットは、なんといってもご自宅で洗えること。
ただ、お召しになった時に熱がこもるので
涼しさからいったら正絹の絽の着物にはかないません。

N様の夏にお召しになる頻度をお伺いすると、
夏のシーズンに2~3回だと。
だとしたら、やはり正絹の絽のお着物の方が得策なのではないか・・・との結論に至りました。

お仕事で夏シーズンに10回以上お召しになるという方は、
長着も襦袢も化繊にして自宅で洗濯してますというお客様もいらっしゃいますが、
「でも、やっぱり暑いですよね」とはおっしゃいます。

染め替えだと5~6万円くらい。
化繊の夏物を誂えたとしても、反物からお仕立てするとなるとそれ以上になる可能性はあります。

で、N様。
「今年の夏まではこれを着て、来年になったら染め替えに持ってきます」と。
もしかしたら、その際に麻の長襦袢をお誂えになるやも・・・とのことでした。

楽しみにお待ちしております






できますか?

2024-07-26 17:52:01 | 日記
先日、お電話でのお問い合わせで
「喪服を染め替えて、色無地にしたいのですが。。。できますか?」と。

喪服は染める段階で藍下染めや紅下染めといわれるものを施した上で、その後、黒で染めます。
下染めは深みのある黒を引き出し、色に深みや渋みを持たせてくれます。
染め上がりの色艶がよくなる為に行われるものです。

なので、
喪服を抜染しても下染めが部分的に残ってしまい、
仮に、その上からご希望の色を染めたとしても、まだらに染まり上がってしまうというリスクが大きくなります。

お客様には、その理由をご説明してご理解頂きました。
「母の色無地で、紫系の着物があるんですけど、それなら染め替えはできますか?」と。
「地色の紫の濃さやご希望のお色にもよりますが、ご対応は可能でございます」

寸法も幾分小さめらしく、この際だからご希望の色に染め替えて
きちっとご自分の寸法に仕立て替えるという方向でお話しは進みました。

納得して頂いて良かったです