原発推進、水面下で工作 業界、自民議員らに「回答例」
2014年1月31日05時00分
国のエネルギー政策見直しをめぐり、原発推進を目指す電力業界による自民党議員への働きかけが明らかになった。電力会社でつくる電気事業連合会(電事連)が同党議員らに配った「模範回答」からは、党内の世論を原発推進に向かわせたいという思惑が見える。業界ぐるみのロビー活動に、「脱原発」議員からは批判の声が上がる。▼1面参照
電力業界が配布した文書は、エネルギー基本計画とりまとめに向けて、党が実施したアンケートに答えやすいよう工夫してある。アンケートには四つの質問があるが、これらに対応して回答例を記載しており、原発推進の立場を鮮明にする内容だ。
具体的には、安倍政権の現時点での方針から踏み出し、原発の新増設を進めるよう明記。「原子力損害賠償制度での国と民間の役割分担」も盛り込んだ。事故が起きた場合の賠償責任を原則として事業者に負わせる今の仕組みを見直し、税負担を促す内容だ。
こうした業界の働きかけに足並みをそろえるように、党内の原発推進派の動きも活発化している。
自民党・電力安定供給推進議員連盟(会長・細田博之幹事長代行、約140人)は今月、加盟する議員に「アンケートに関するお願い」と題した文書を配布。議連が昨年末にまとめた原発推進提言に沿って、「原子力の再稼働は国家的急務」「原発を重要なベース電源と位置づける」「原発は新増設・建て替え(リプレース)を含めて一定規模を確保すべき」との内容を積極的に回答するよう求めている。
一方、電事連の文書は自民党所属の全国会議員には配られておらず、「脱原発」を公言する議員らは外されている。
超党派議連「原発ゼロの会」の共同代表を務める自民党の河野太郎衆院議員は29日、「『模範回答』なるものを電事連や電力会社が持って歩いているというのは、まったくおかしな業界だと思わざるを得ない。公益企業がそういうことをいまだにやっていることは問わなければならない」と指摘した。河野氏自身には文書は配られていないという。
原発の依存度を徐々に下げるべきだと考える「中間派」の同党衆院議員は、文書が配られたことを認めたうえで「古い、どうしようもないやり方だ」と批判した。(疋田多揚)
■自民党全議員アンケートの項目と「模範回答」の例
1)エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針
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我が国のエネルギー政策の中で原子力が重要な電源であるとの位置づけを明確化する。原発を一定程度の規模を確保することとし、そのための新増設・リプレースの必要性を明確化する
2)エネルギーの需給に関し、長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策
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安全の確認された原子力の再稼働のために必要な手続きを効率的かつ迅速に行う。核燃料サイクルを着実に推進するとともに、高レベル廃棄物処分場の立地問題の早期解決を図る。原子力損害賠償制度における国と民間の役割分担など原発の事業環境整備を進める
3)エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために重点的に研究開発のための施策を講ずべきエネルギーに関する技術及びその施策
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原子力の安全性向上のための研究・技術開発。安全性の高い新型原子炉の研究開発
4)前3号に掲げるもののほか、エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
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国民がエネルギーに関する適切な情報を得られるような体制整備などの仕組み