けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

次のキーワードは「法の下の支配」

2013-02-23 23:58:01 | 政治
日米首脳会談のニュースが昨日から入ってきた。報道からの評価は概ね予想以上の成果というところだろう。私のブログでは楽観論を示していたが、下馬評ではオバマ大統領が「聖域なき関税撤廃がTPP交渉の前提」ではないことを明確に示してくれるとは思えないという予想の方が高く、結果的に交渉参加の決断には更なる時間を要するだろうと思われていた。しかし、現在では全てのマスコミが安倍総理帰国後直ぐの参加表明を信じて疑わない。この変わり方が、会談の成果の大きさを物語っている。ただ、現在の国際情勢を見ていれば容易に予想できる(と、私が勝手に思っているだけだが)から、その結果自体にはそれほど驚かなかった。しかし、この結果を受けて、私は安倍総理の戦略性の高さを改めて思い知った。

今朝のテレビに出演していた橋下共同代表も言っていたが、組織をまとめるための手続きを着実に進める手順、段取りの組み方が今回の場合素晴らしいものがある。一見、選挙公約で高めに設定したかのように思えるハードル「聖域なき関税撤廃がTPP交渉の前提である限り、交渉参加には反対」をクリアし、その成果を引っ提げて「交渉参加の判断は政府の専権事項」という原則を前面に出し、政府への一任を求めるのである。これで政府への一任に反対するためには、党の掲げた選挙公約が不適切であったいうことにしなければならない。3本の矢の成長戦略を実現する上でTPPへの参加が必須であるという外堀も埋めながら、上手くかじ取りをしていた。

実は昨年の自民党総裁選の前、ないしは衆議院選挙の前に、私は「聖域なき関税撤廃がTPP交渉の前提である限り、交渉参加には反対」という説明を聞いて、勿論、「前提が撤廃されれば参加OKじゃないか!」とは思いながらも、「何をぬるいことを言っているんだ!みんなの党や日本維新の会の様に、明確に交渉参加を打ち出すべきだ!さもないと、選挙に勝っても民主党と同様に、TPP反対派に押し殺されてしまうぞ!今から方向性を示すべきだ!」と感じていた。しかし、TPP反対派の議員の多くは、自分が論理的な思考を行って反対に辿り着いたのではなく、選挙での支援団体がNoというから選挙で勝つために反対という結論に辿り着いたものが多い。それは選挙に勝って単に議員にしがみつきたいという以上に、政権与党の旨味を思い切り味わいたいという欲望に繋がるから、一旦政権与党になってしまえば、自民党を崩壊させてまで、つまり政権与党の椅子をかなぐり捨ててまで自らを犠牲にしてTPP潰しを行おうと考える者は少ない。ましてや、これだけアベノミクスが世界で注目され、円安が進み株価が一気に上がり、デフレ脱却の期待が国民の間にこれだけ高まった状態で、その梯子を外す行動(自民党を崩壊させてまでTPPを阻止すること)を取れば孫子の代まで国賊と罵られても仕方がないことは痛いほど感じているだろう。

どこまで読み切っていたかは分からないが、安倍総理は総選挙の後にアベノミクスへの期待で円安・株高が進み、北朝鮮が核実験を行い、中国が弾けた行動を取り、アメリカが対中国包囲網をより強固にしようと本気で考えたときに何をすべきか、そして最大のアメリカの国益追求と矛盾のない日本の戦略として、TPPでの例外品目の容認を勝ち取れると、ある程度確信していたのではないか。そうでなければ説明ができないほど、あまりに物事がうまく進み過ぎている。先日ブログにも書いたが、運命論の様なものを感じる背景にはこの様なことがある。
さて、ここからが実は本題なのだが、TPPなどとは比較にならないほど難しい対中国への対応方針についての戦略性が更に素晴らしい。先日からも報道にもあるように、アメリカは決して日本と中国の対立の激化を望んでいない。だから、日本には中国に対して軍事的には抑えた行動を望んである。これを称して中国の新華社は「日本の指導者は尖閣で冷遇された」と言ったのであるが、実際には真逆である。これまであまり日中関係に口を出さなかったケリー国務長官から岸田外相は「尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲にあり、日本の施政を害しようとするいかなる行為にも反対する」という言葉を引き出した通り、日米同盟復活を世界に印象付けたのは事実だろう。では、軍事的には抑えた行動を取りながら、中国を制するための戦略とは何か?答えは日米共同声明にも含まれているが、先日の下記のニュースからも伺い知れる。

産経ニュース2013年2月20日「中国が仲裁手続拒否、フィリピンは法廷闘争継続

つまり、領土問題というものは2国間で解決を図ろうとすると武力による衝突につながるのは常識である。だから、法のもとで秩序を保ちながら、平和的な解決を図るしかない。これを具体的に焼き直せば、国際司法裁判所での裁判というのが正しいやり方だろう。しかし、上述のニュースにもあるように、中国は裁判に持ち込むのが死ぬほど嫌なのである。戦争で解決すれば勝てるものを、公平な裁判で負けたら国内での地位を失うのが目に見えているからである。これは韓国も同様である。だから、この様な提訴を拒否せざるを得ないのである。これと関連してか、共同声明の中でも沖縄県の尖閣諸島に関連して安倍総理は、「日米両国が協力して、自由な海を守り、力ではなく法に基づいた秩序を構築していくことで一致した。法の支配をしっかりと守っていくことが重要だ」と語っている。軍事的には抑えた行動を取りながら、相手の非道な行為を公開することで相手の過激な軍事行動を抑制し、一方でフィリピンなどの様に領土問題を抱える国々が同時に法の下での解決を唱えたならば、中国はますます国際社会で孤立するだけである。

勿論、TPPについても同様である。中国もいずれ、TPPに参加せざるを得ない時期が来るであろう。その時、2国間であれば中国がルールーメーカーとなることを主張し、ルールもへったくれもない事態に陥る可能性があるが、公正な手順を踏んで作られたTPPに後から参加するためにはそのルールを飲まなければならない。そのルールは、今まで中国が知っていた不条理なものではなく、公平・公正なルールなのである。それでは中国の強みを当然生かせるわけがないから、国際的・経済的な地位は低下せざるを得ない。

これからは、あくまでもルールにのっとって全ての解決を図るという「法の下の支配」が対中国のキーワードとなっていくのだろう。実は、その点をオバマ大統領と確認できたことが、今回の首脳会談の最大の成果なのだと思う。

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