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(有)遠藤測量設計事務所の「人生は上々だ!」

静岡県内で土木測量設計にたずさわる技術者のブログ

かたちになる(2)

2013-04-07 21:18:52 | 土木技術について

現在、昨年度(H24年度)に僕が設計しました、
県道の路肩崩落による道路災害復旧工事が施工されています。
先日は、その現場確認(立会)に行ってきました。

設計概要
(当該路線の概要)
 ・ 一級河川沿線で高低差14mの急峻な山つき一般県道
 ・ 市街地と集落を結ぶバス路線および緊急輸送路である

(崩壊の状況と要因)
昨年7月のゲリラ豪雨により発生した、風水害を要因とする
道路谷側斜面崩落により、路肩が法尻(河床)まで一気に崩落した。


      (河川下流 → 上流方向)

      (河川上流 → 下流方向)

  (残幅員は3m程度・・・崩落肩は脆弱化して二次災害の恐れあり)

(設計条件)
 ① 片側交互による現道交通の確保
 ② 交通解放による二次災害の防止
 ③ 河川断面(河積)の確保および非出水期限内(5月中)での施工
そのほか、
 ・ 緊急輸送路であるため地震時は「Ⅰ種地盤-大規模」とする水平震度kh=0.16
 ・ 輪荷重P=10KN/m2
 ・ 漁協との取り決めで渓流釣り・観光など河川景観・環境への配慮も行う
   ※当然ですよね・・・「Ⅰ種地盤」はボーリング調査より判断

(復旧方針)
 ・ 一次復旧として、崩落した現況斜面の補強を実施し
   早期に「大型車両通行」の安全を確保し交通解放
 ・ 本復旧として、「一次復旧」を活かした本復旧とすること(取壊し工なしとする)
      ※当然ですね・・・

(対策工法)
 ・ 一次復旧工:掘削を伴わない永久構造の「補強土壁工」(安全率Fs=1.2以上)

 (土砂混在個所の脆弱斜面ではロックボルトを90mm削孔としています)

 ・ 本復旧工:(一次復旧工で土圧を抑制したため)風化防止の「張コンクリート擁壁工」

  (本復旧は河川管理者(県)との協議を重ねて許可・決定しています)

尚、壁高が16mを超えるため、地震時慣性力のみ考慮する。


さて、
本復旧工にあたっての工法比較検討については、以下の工法が考えられました。
その比較工法案と検討結果を、以下に簡単に列記する。

[設計条件=背面土圧は考慮しない、水平震度kh=0.16(慣性力のみ)、輪荷重P=10KN/m2]

第1案:軽量盛土工(EPS)・・・
   水に弱いため河川HWLまで基礎擁壁が必要で工事費が高価。
   また、直壁であるため河川断面および流水阻害、現況取り合いが不自然となるため「NG」

第2案:大型ブロック積み ・・・
   壁高H<10mは「机上お絵かき」と「数字のお遊び適当空想論な構造計算」と
   「バカじゃね?」的な莫大な金かければできましたが、施工実績なしのため瞬殺「NG」

第3案:張コンクリート擁壁・・・
   やっぱり現場打ちコンクリートは施工の自由度が高くて安いよね!「採用、矢沢OKです」

第4案:モタレ式擁壁・・・
   H<8m以上は壁天端の高盛土(EPSなど)で対応しなければならず、
   鼻で笑われて当然「NG」

第5案:補強土壁(ジオテキスタイル)・・・
   壁高16mとなると「控え」が豪快・・・河川張出しと、
   天端部で駐車場付コンビニ経営することが許されれば・・・
   冗談はさておき、1.5車線的整備「待避所」で提案も、鼻で笑われて「NG」
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ところで、
設計時に提案していた「施工時留意点」は以下の事項です。

[張コン擁壁の基礎地盤の確認]
今回の設計では、基礎地盤条件として
擁壁の一般的な支持力であるq=300KN/m2(地震時はその1.5倍)としています。
当計画の擁壁では、
根入れを含めて壁高H>16mであるため、自重だけでも相当な重さになります。
さらに地震時では、「自重+慣性力」で支持地盤への荷重は局所的に345KN/m2にもなります。
また、擁壁設置個所が河川の水衝部ということを考えれば、
最低でもN値<30の「軟岩層以上の均一的な分布」であってほしいと考えていました。

そんな「施工時留意点」から、当日の現場確認と相成りました。


では、
ここからは、現場状況をみなさんと一緒に観ていきます(笑)

崩壊当時はこんな感じでした・・・

   (河川側より撮影・・・斜面の立木もろとも一気に崩落してました)
                          ↓
しかし、今現在は・・・

    (切土補強土工法で崩壊斜面を補強・・・一次復旧終了しています。)


  
(写真左・・・一次復旧が終了し、基礎工の床掘りが終了しました)
(写真右・・・釣り人の皆様には大変申し訳ありません、瀬替えさせていただきます)

  
  (上流→下流方向)       (床掘りの結果、予定通りの黒い頁岩層が露出し一安心です)

斜面上部(道路)の現在の様子です。

    (一次復旧まで終了)


    (一次復旧まで終了)

いやー、現場って、ホントにおもしろいですね。
施工屋(工事屋)さんと、
「こうなっちゃうけど、どーする?」や「ここでこうしたいんだけど、できる?」など、
あーだこーだ、相談しながら現場を造っていくって、
ホント、おもしろいです!

今後、また現場におもしろい事象がでたらアップします!
そして、
完成したら、また「劇的ビフォー・アフター」シリーズでご報告します!(笑)


ps・・・・
いま流行ってきている’設計・施工一括発注方式(デザインビルド方式)’、
僕はこれ、大賛成です!

またまた登場!RCサクセション
「昼間のパパは男だぜー♪」
http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=cYk9Z6u7bd8



劇的ビフォーアフター(その1)

2013-03-19 01:14:22 | 土木技術について

本日、現場に行く際、
以前にわたくしが設計し、完成している路線を通りました。
思い出せば、施工時にも苦労した現場です・・・

と、いうことで、
「かたちになる」シリーズの第2弾です。

前回は、急傾斜地崩壊対策の防災事業でしたが、
今回は、「道路」です。



静岡県の某事務所発注の道路事業でした。
平成16年度から基本設計および詳細設計、
平成18年度から工事着工でした。

工事概要
(道路改良事業)
 ・見通しの悪い線形を修正し視距確保
 ・狭窄部および狭隘道路の解消
 ・スクールゾーンであるため安全施設(歩道)設置
(設計概要および設計条件)
 ・第3種3級 設計速度V=30km/h、B1交通
 ・設計速度に応じた線形改良および道路拡幅の実施
 ・両側歩道を設置する
 ・2級河川の兼用護岸ブロックに変位(クラック)があるため
  道路施設として補強し有効利用する

             (一般部の標準断面図)

            (河川兼用護岸道路部の標準断面図)

(苦労した点)
 ・切土の応力開放で土丹岩が急速に風化・脆弱化し崩壊し易かったこと
 ・湧水が予想以上に多かったこと
結果、
降雨時に山留擁壁(モタレ式擁壁)の切土面が2度ほど崩壊しました(笑)

そんなこんな、いろいろなハプニングもありましたが、
施工業者とやりとりしながら、協力して完成させました。
以前、現場(施工監理)をやっていたこともあり、
僕は、こういうのが「おもしろい」と思っています。

まあ、能書きはこのへんにして、
いま流行の「劇的ビフォーアフター」形式でご覧ください(笑)

  
       (ビフォー)                     (アフター)

  
       (ビフォー)                     (アフター)

  
       (ビフォー)                     (アフター)

  
       (ビフォー)                     (アフター)

  
       (ビフォー)                     (アフター)

  
       (ビフォー)                     (アフター)

  
       (ビフォー)                     (アフター)
  
計画では、
曲線長(CL)や緩和区間長など、地形条件などから
やむをえず道路構造令に適合できずに
ローカルルールで設計した個所も随所にありますが、
そんなことは「へ」でもありません。
(性能規定および性能照査で説明できれば、そんなのぜんぜん矢沢OKです)

この通り、安全な歩道ができて視距が通り、
クルマの走行・安全性も見違えるほど良くなっています。

非常に公共性の高い、
「みなさんに喜ばれる事業」となったんではないか・・・
社会貢献できたのではないか・・・・
と自己満足しています(笑)

改良することで、
だいぶいい道になりましたよね(笑)

今後も、シリーズ化して、書いてみたいと思います。


こどもの命を守る

2013-03-07 21:51:58 | 土木技術について

前回、
日本の土木が取り組むべき「安全・安心」は、

1.大地震・津波対策
2.笹子トンネルに学ぶ「老朽化する公共施設」対策
3.少子高齢化に伴う「交通安全」対策


と書きました。

今回は、シリーズ第2談、
「子供の交通安全」です。

最近、
京都亀岡市の府道で起こった集団登校死亡事故をはじめとした
「登校児童の列にクルマが突っ込む」事故が相次いています。

僕も、自分の命より大事な3人のかわいい子供を持つ親として、
毎日毎日、ほんとうに心配でなりません。

そこで、文部科学省、国交省、警察庁で昨年(平成24年8月)、
全国の公立小学校通学路約7万箇所で緊急合同点検を実施したところ、
児童が事故に遭う恐れがある箇所が約6万箇所もあったそうです。

  
(歩道や路肩、歩行空間のない道路での通学はホント危険です。なんとかせねば・・・)


この点検結果をふまえ、
道路設計に携わる立場として、
「こどもの命を守る」ための道路交通環境について
今後、どう整備すべきか、
今回も、「もし技術士だったら」の観点から書いてみたいと思います。
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「こどもの命を守る」ための道路交通環境整備

1.通学路の問題点と課題
1-1.車両と通学児童の事故について
平成24年4月に京都府で発生した登校中の児童の列に車が突っ込む事故をはじめ、
生活道路における歩行者と車の事故が急増している。
しかし、昨年実施された通学路の緊急合同点検では、以下の問題があった。
・ 歩道・歩行空間のない狭隘道路の存在
・ 車両交通量が多く車速が速い生活道路
・ 児童が隠れてしまう見通しの悪い道路の存在
したがって、
「通学路における児童と車両の事故削減」
が課題である。

1-2.自転車の安全について
近年、環境問題や健康維持のため自転車利用が増加し、
それに伴い通学児童との接触事故が急増している。
他方、学童自転車の事故は交差点において多発しており、
交差点における車との交通事故削減も急務である。
しかし、自転車の走行における現状では、
・ 自転車の通行空間がない
・ 通学児童と混在する歩道
・ 見通しの悪い交差点の存在
したがって、
「通学路における児童と自転車の接触事故の削減」
が課題である。

(ここからの具体的な対策工については長くなるので簡略化します・・・)

2. 今後取り組むべき事項
2-1. 車両と通学児童の事故削減
(1)通学児童と車両の分離
通学児童の安全対策としては、歩道新設や拡幅整備を行い、
可能な限り児童と車両を分離することが重要である。
歩車分離対策として・・・
(対策工はいろいろあると思いますので各自・・・)

(2)交通量の抑制と速度の低減
事故のない道路のため、通過交通の排除など自動車交通量を削減することが重要である。
他方、事故時の自動車速度が、30kmを超えると死亡事故や重傷になる割合が急激に高まることから、自動車の速度を低減させることが必要である。
生活道路への通過交通排除策として・・・
(対策工はいろいろあると思いますので各自・・・)

2-2. 自転車の事故削減
(1)自転車通行帯の確保
自転車の接触事故を軽減するためには自転車と通学児童を分離し、
独立した自転車専用帯(以下、自専帯)の確保が不可欠である。
自専帯の確保には・・・・
(対策工はいろいろあると思いますので各自・・・)

(2)交差点の安全確保
交差点では主に、自転車と車両の出会い頭事故が最も多く、
見通しが悪いことが主な原因である。
交差点部の視認性を確保する対策として・・・
(対策工はいろいろあると思いますので各自・・・)

・・・・・・今夜はこのへんで・・・・
                                 ―以上―


(いま流行の「グリーンベルト」ですね・・・視覚的分離手法の一つです)

と、なるのでしょうか。



今後も、シリーズ化して、書いてみたいと思います。


サンドコンパクションパイル工法

2013-02-27 20:48:54 | 土木技術について

本日は、超多忙のなか、本日やるべき責務を無視して、
某機関発注の某河川堤防補強「地震・高潮対策事業(地盤改良工)」
の工事現場見学会にいってきました。

土木の教科書でおなじみの地盤改良工法
「サンドコンパクションパイル工法」です。


 (予想通りのでっかい機械です)        (バイブロで地盤削孔、けっこう揺れます)

教科書では、
「強固に締固めた砂杭を地中に造成して地盤を改良する工法で、
 粘性土地盤では複合地盤を形成し、せん断抵抗力を増すとともに
 砂杭の透水性の高さが沈下を早期に安定させ圧密・・・  」


 (このへんの基礎知識はいつものウィキペディアで各自、復習願います)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%AB%E5%B7%A5%E6%B3%95

        サンドコンパクションパイル工法の工程図です

    

簡単にいえば、「軟弱地盤(泥)に砂杭(柱)をいっぱいブッ込む」工法です。

その効果は砂や泥の土質によって違いますが、主に3つあります。

(その1):砂杭をスポイトにしたてて軟弱地盤(グチャグチャ泥)の水分を
     チューチュー吸い取ってカラカラにし固い地盤にする(圧密沈下・沈下促進)
(その2):砂杭(柱)の上に構造物をのせて沈下させないようにする(支持力増幅)
(その3):砂杭(柱)で地盤のせん断強度を上げて地震の揺れに対応する(液状化対策)

※ 柱の材料は目的により変幻自在、「砂」でなくてもセメントなどの固化材でもOKです。
  柱をセメント固化材にすると「DJM」「DSC」工法などとなり(その1)の効果はなくなります

今回の現場は(その3)、河川堤防の「液状化対策」のようでした。


 (既設河川護岸をブッ壊して法尻より打設、φ700の砂柱を軟弱層に2.0m入れます)


「サンドコンパクションパイル」で基礎地盤のせん断力を向上させ、
地震動(揺れ)で発生する「液状化」により河川堤防がグラグラ左右上下に傾いて
壊れちゃうのを防ぐのが目的のようです。

地震動はどうも「レベル1」の想定のようで、原地盤の中間軟弱層のN値は3~4
これを改良し、結果、N値20程度まで向上させるようです。

で、ここで疑問が・・・
以下に疑問を列記する。

・ なぜ河裏側(川側)だけの改良でOKなのか?(その程度でよいと判断した理由は?)
・ マグニチュード9クラスの東海地震を考えると「レベル2」ではないのか?
・ 設計時水平震動はいくつでやってますか(河川護岸では0.2程度?)
・ 改良強度を「N値20程度」とした理由はなにか?

etc・・・

「質疑応答」の際、聞いてみましたが・・・

まあ、
当該地の「被害想定」やら「費用対効果(B/C)」などから設計条件を定めている
はずですから、エラそうに意見しませんでしたが・・・

現場は、教科書通りのでっかい機械でバイブロを使って削孔・・・

結構な震動がありました。
(軟弱地盤の上ですからブワブワして結構、揺れるんですよね・・・)


  
   (砂杭の位置を定めます)          (着底したら砂を投入し上下にシェイク・・・)

で、着底するとバックホウで砂を機械に投入し、バイブロを上下に震動・・・
「プシュー!!」っと、ガンダムの胸のから出る排気音みたいな音に
ビックリしながら、見学会は終了しました。

教科書や資格試験でしか知らない工法でしたから、
本日の業務(責務)を放棄して参加した甲斐がありました。
「百聞は一見にしかず」です。

やっぱ、現場はいいですね!エキサイティングです!!


      



ラウンドアバウト交差点

2013-02-26 21:55:35 | 土木技術について

先日、(相変わらず仕事中に)ネットサーフィンしていたら
「ラウンドアバウト」の記事が・・・

簡単に言うと、(日本では)『左折で入って、左折で出る』だけの、
「信号要らずのロータリー交差点」です。
フランスの地方都市は原則としてすべての交差点に導入されています。
日本では、愛知県豊田市、茨城県日立市など約10か所に設置例があるようです。


ラウンドアバウトは、19世紀後半からヨーロッパで作られはじめ、
当初は都市の中心部などに景観上の工夫として考案されたものらしいです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%90%E3%82%A6%E3%83%88
(詳細については「ウィキペディア」で確認ねがいます・・・)

(長所)
・ 信号の待ち時間、一時停止時間、徐行、減速、加速、などに
  必要な時間の「遅れ」が軽減できる
・ 完全に一時停止せずに環道に入るチャンスが多いので、遅れが少なくなる
・ だれもが交差点(合流前)で減速するので安全になる
・ 「道路が空なのに信号が赤だというだけで止まっている」無駄なケースがない
・ 信号が要らず維持管理が安価
・ 二酸化炭素(CO2)排出量を1割程度削減できると試算されている
・ 停電に強いため災害時にその効果が発揮される
・ サークルの景観利用が可能で観光整備の要素を持つ

(短所)
・ 進入・停止はドライバー自らが判断しなければならない
・ 慣れないとイン・アウトのタイミングをつかめず何周もグルグルとまわってしまう
・ 大きい交差点用地が必要である

とまあ、(長所)>(短所)で優れた交差点であるといえる。


(つい先日、長野県飯田市で採用されました)


(ラウンドアバウトの道路標識です。こんなふうなんですね) 

さて、
問題は「日本で採用・普及・定着できるのか???」ということであるが、
いまだ実証実験が行われている・・・という段階です。
それはなぜか・・・

・ CやD交通(死語)など交通量が多い場合、交通容量の算定が難しい
・ 用地確保が難しい
・ 不慣れによる事故の懸念

でも、
国土交通省が推奨し、いま防災道路交差点としても注目されてます。
技術士論文でもよく使わせてもらう「ラウンドアバウト」、
では、実際に設計を行い提案する場合はどうなるでしょうか?

ローカルな交差点設計業務の場合について、目をつぶって空想してみます(笑)

まず、現実的な問題点として事前に以下を提示します。

・ 道路利用者および地域住民、警察の許可・理解が得られるか?
・ 用地買収は可能か?
・ 交通量および道路構造令など設計基準・指針の未整備

それから、採用にあたって検討するうちに
発注者から、一休さんにでてくる「どちてボウヤ」級に質問攻めを受けます。

「普及していない?」「採用事例が少ない?」「交通量など設計条件を満たすのか?」
ときて、
「じゃー、採用する強い根拠はすべて揃っているのか?」
「会計検査はだいじょうぶなのか?」
そして
「・・・ほんとにだいじょうぶ?」から
「・・・ほんとにほんとーにだいじょうぶか?」ときて、
「・・・ほんとにやるの???」
「・・・やったほうがいいと思う??」
「・・・・・・・・(小声で)ほんとに?・・・」
「・・・」となって、
「・・・やっぱ、今回はやめちゃおっ。(ねっ?いいでしょ?)・・・」
「・・・ごめん、やめちゃう理由を考えて・・・」

となってしまうのが実際のところでしょうね・・・

これじゃーすばらしい「新技術」も、
いつまでたっても普及しないわけです・・・(笑)




かたちになる

2013-02-20 22:53:30 | 土木技術について

現在、平成21年度にわたくしが設計した
急傾斜地崩壊対策(防災)施設「張コンクリート擁壁(アンカー併用)工」が
現在、施工・築造されています。



写真は、壁高H=12mの擁壁を築造しているところでございます。


(型枠を当てて築造中。主鉄筋はD19@250、配力筋は主筋の1/6)
(参考までに、足場はキャットウォークですね)



前半はだいぶできてきました。



このコンクリート擁壁は、
急傾斜地崩壊対策事業の指針に準拠しているため、
擁壁天端の落石防護柵(H=2.0m)には崩壊土砂の「衝撃力」と
崩壊土砂溜り「崩壊土砂堆積重量」を考慮しており、
斜面の上方からの崩壊土砂流をガッチリと待ち受けうることが可能です。

写真でもわかるとおり、擁壁背面は砂岩系の岩層が露頭しており、
スベリ安定解析の結果、背面土圧はさほどでもなく、・・・・

・・・自慢話はペラペラ長くなりやすいのでやめます・・・・

僕らは、測量を基に、机上で設計します。
土地利用や地形・土質などの制約・条件を把握し、
設計基準、実験値や先人が確立したさまざまな計算式を駆使して、
「これなら大丈夫だろう・・」という「想定論」で設計をします。
   


            (この図面のちょうど  このへんを造っています)   

そして、絵を描きます。

その絵が、あるときは数千万円、あるときは数億円の「かたち」になります。

その絵に、みんなが莫大なお金を出してくれて、
場合によっては、
その鉛筆でいれた一本の細い線のせいで
家やビルをもブッ壊します。
そして、
工事屋さんがその絵を基に、
危険をかえりみず命を懸けて造ってくれます。

あらためて考えるとスゴイことですよね・・・
ホント、責任重大なお仕事でございます・・・

自分の考えたものが、そのままかたちになる・・・
・・・ずっと残る・・・
・・・地図になる・・・
・・・ジジイになっても自分の功績が残る・・・
・・・ボケちゃった頭でも、その場所に来ると記憶が蘇る・・・
   (プロジェクトXみたいに・・・)


土木は、
おしゃれなアーティストにはなれないかもしれませんが、
自分のやった仕事を
どこかの誰かが喜んでくれます・・・


これからも、
もっともっと技術を磨いて、
ビックなものを造って、

息子が友達に
「昼間のパパは男だぜー♪」って話す・・・

http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=cYk9Z6u7bd8

そうなればカッコいいなー(*^_^*)





土木の役割(その1)―「防災・減災を考える」

2013-02-18 23:53:44 | 土木技術について



安倍政権に代わり、
急ピッチな景気対策が進んでいます。
急激な円高が進み、
国内の経済は、早速、変化の兆しを見せてきています。

わが土木業界も、急ピッチで変わりはじめようとしています。

安倍内閣の
景気対策の一環としての大目玉商品、
「公共事業費の大幅な増資」については、
もうすでに県市町村の各事業所へ
事業費の配分がはじまっているようです。
しかし、
いきなりお金がドーンときても
「どこに使えばいいの?」って
とくに市町の事業所は困っちゃっているみたいです。

ところで、
この大博打的な大借金をして取り組む公共事業は、
日本のありとあらゆる「安心・安全」を担保するものでなければなりません。

そのうち土木が取り組むべき「安全・安心」は、大きく3つあります。

1. 大地震・津波対策
2. 笹子トンネルに学ぶ「老朽化する公共施設」対策
3. 少子高齢化に伴う「交通安全」対策

とくに、「安全・安心」のなかでも「東日本大震災」に学ぶ、
切迫する大地震や大津波に備えた「防災・減災」は、
まさに、世界トップである土木技術を駆使して取り組むべき事業でしょう。

そういえば先日、
わが静岡県も、
浜岡原発の津波対策をはじめとした
「津波防災対策の強化を優先する」ことを発表しましたね。
(砂丘の嵩上げや防潮林の拡大整備など、どこまで有効か不明ですが・・・)

そこで、
これら「防災・減災」について東日本大震災の被災事例をふまえ、
今後、どうあるべきか、

シリーズ(その1)
土木の役割―「防災・減災を考える」です。

今回も、「もし技術士だったら」の観点から書いてみたいと思います。

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「防災・減災」の二段構えの耐災構想

1.被災経験を踏まえた現状の問題点
1-1.整備方針の明確化について
東日本大震災では、地震動や津波により多くの盛土や橋梁が崩壊し
道路が寸断したが、
整備された日本海側の北陸道や関越道、幹線国道網が機能したことで、
太平洋側の被災地への緊急物資輸送などが活躍した。
他方、
(太平洋側では)津波を想定して計画された高速道路が被災を逃れ、
復旧の緊急輸送路のほか住民避難や津波堰き止めなど、防災機能も発揮した。

しかし、
このような被災経験を踏まえた問題意識として,
・ ミッシングリンクや狭隘道路の存在
・ 道路網のリダンダンシーが不十分
・ 避難路や防災機能道路の整備不足


したがって、
「道路の耐災性能の向上」
が課題である。


1-2.災害時の情報共有・提供について
東日本大震災では、通信施設のほか行政施設・職員の被災により
情報収集・提供に支障が生じ、的確な物流の誘導ができなかったことで
通行止による迂回交通が発生した。
また、避難者は、通行止や緊急車両のみの通行など
通行制限のなかでの通行を強いられた。

このような被災経験を踏まえた問題意識として,
・ 道路管理者間の情報交換・共有の不備
・ 道路管理者の道路利用者への情報提供の不備
・ 被災による情報提供施設の不足

したがって、
「災害時における道路情報の共有・提供」
が課題である。

2. 今後取り組むべき事項
2-1. 道路の耐災性能の向上
(1)ネットワーク強化について
被災時のネットワーク強化として、ミッシングリンクの解消や
狭隘道路解消によるリダンダンシーの確保が効果的である。
以下に具体策を挙げる。
・ 対面通行など暫定二車線による道路供用
・ 側道や高架橋下方官地空間の有効利用による路線接続
・ 1.5車線的道路整備による狭隘道路解消
他方、高規格道路のスマートIC増設をはじめ、
台座拡幅・桁連結など橋梁の耐震補強も継続実施すべきである。

(2)被災時の速達性の向上について
被災時の速達性の向上施策として、渋滞解消が考えられる。
以下に具体策を挙げる。
・ 水路の蓋掛けや中央分離帯・植樹桝の縮小など官地有効利用による道路拡幅化
・ 移動可能な中央分離帯(リバーシブルレーン)の設置
・ 道路閉塞を予防する電柱地中化や上空看板の集約化
他方、被災時のスムーズな交差点交通を確保するため、
信号機規制を廃した既設交差点のラウンドアバウト化も推進すべきである。

(3)防災機能道路の整備について
避難路や津波堰き止めなど、防災機能道路の整備について、
以下に具体策を挙げる。
・ 山道や農道を利用した高台避難路の設置
・ 鉄道・高速道路法面へのスロープ道路設置
・ 残土・浚渫土を用いた河川・海岸堤防嵩上げ・拡幅による沿岸防災道路の築造
他方、避難路を確保するため、
沿道の空地・空家の宅地交換分合による
行き止り道路の解消も効果的である。


2-2. 災害時における道路情報の共有・提供
(1)情報の収集と共有
被災時における情報の収集と共有には、
道路管理者および復旧業者の事業継続計画(BCP)のほか、
沿道住民など民間の協力が不可欠である。以下に具体策を挙げる。
・ 住民アダプト制度拡大による道路情報網の確立
・ 自動車・運送・郵便事業者との提携による情報収集体制の確立
・ PPP/PFI事業による道路管理事業の推進

(2)情報の提供
情報提供には、ITS(VICS)など最新情報技術をはじめ、
道路防災拠点を有効利用する。
以下に具体策を挙げる。
・ 高規格道路のSA・PAおよび道の駅への情報施設整備の推進
・ 道路情報板や防災スピーカーの増設
・ 衛星写真・空撮による道路被災確認と道路掲示板への情報発信

                                  ―以上―

と、なるのでしょうか。

※尚、この記事は書き出し(未完成)のため随時、更新しますのであしからず・・・

今後も、シリーズ化して、書いてみたいと思います。




現場見学会を開催しました

2013-02-01 23:47:46 | 土木技術について

去る’平成24年11月16日(金) 13:30から、
発注者さまと施工屋さまに了解およびご協力を得て、
同業の建設・地質コンサルタント技術者を対象とした建設現場見学会を
わが社の主催で開催しました。

初めての試みでしたが、設計・主催したボクもたいへん勉強になりました。
(ホントは技術者交流拡大の一環として企画したのがホンネでしたが・・・(笑)

対象施設: 崩壊土砂を有効利用した「砂防ソイルセメント(INSEM工法)を用いた砂防ダム」

施設概要: 堤高H=9.0m、堤長L=62.5m、ソイルセメント量V=3,043m3(本堤工)

施設能力: 透過型ダムの計画捕捉量(Vd)6,019m3
        (うち土砂捕捉5,728m3、流木補足291m3)

(開催の詳細案内はこちら・・・発注者に了解を得て案内を市内コンサルにバラマキました)

見学会で配布した詳細な設計資料はこちら・・・





(危険渓流の上流にある3万m3の崩壊土砂が土石流に・・・それを留める砂防施設です)



さて、現場見学会の様子を・・・

今回、設計した「砂防ソイルセメント(INSEM工法)を用いた砂防ダム」は
静岡県発注事業では2例目となるもので、まだ県内での採用実績が低く、
設計・施工のノウハウが少ないのが実情でした。
そこで、
「これは技術者交流拡大のいい材料になるな・・・ニヤ」っていう下心から
奮起して起案した催しでした(コレがホンネ)
そして
今回、声をかけたのがいつも技術交流(ただの飲み会ですが・・・)で仲良くしていただいてる
市内の建設・地質コンサルタントの設計担当者でしたが、
そこから、その同僚、関係者、口コミから「これからINSEMをやろう」としていたコンサルなど、
河川・砂防施設設計や地質の専門家など、多数、集まってくれました。

  
(ベテラン技術者を前に緊張しながらも、当設計の優位性や思想、設計留意点などを説明しました)

  
(設計技術者は、なかなか現場に立ち会うことがないので、みなさん、興味深く観察していました)
(質問も飛び交い、ボク自身もたいへん勉強になりました)


      (最後に記念撮影・・・ボクにとっても、実にいい記念になりました)


いやー、
不順な動機で奮起しちゃって開催した「現場見学会」、
準備・段取りがたいへんでしたが、なかなか楽しかったです。



この会が終わった次週、
「技術者交流会(飲み会)」を開催したことはいうまでもありません・・・(笑)
これまたこの上なく楽し!!!(笑)

今後も、楽しい技術者人生に「技術者交流の拡大(飲み会)」は不可欠です!

ps・・・・・・
このコンサルによる見学会の後、
静岡県の土木職員や関係部署による見学会が順次、行われたそうです(笑)
工法の優位性は高いのに、認知度・実績が低いためなかなか採用されない新技術工法・・・・
こういう機会で知れ渡って普及していけば
施工性や経済性においても非常に有効ではないかなーと考えます。。。

                                    -以上ー

技術者の常識

2013-01-21 23:54:06 | 土木技術について

前回の「土木技術について」の続編として、
今回は、昨年末に発生した
「中央道・笹子トンネル天井板崩落事故」を例して、
「技術者の常識」について思うことを書いてみます。




「思うこと」とは、
「土木技術者の常識」と、「素人一般人の常識」は一致するということ。
では、その「常識」とは何か・・・
それは、
「こんなんでホントに大丈夫?危なくないの?」・・・という「感覚」です。

笹子トンネルは、
1枚1t以上もあるコンクリートパネルが、
ケミカルアンカー(接着剤固定ボルト60cmピッチ)で支えられていました。
それが、30年以上経って接着剤が劣化し、ボルトが抜けて崩落事故が発生・・・

っていうか、ちょっと待ってください。

おばちゃんの視線になって、
常識的に考えても「それって、どうなの~?」と思います。

まず、
あんな重たいコンクリートパネルを頭上に吊るす構造自体、
どうかと思いませんか?
「落ちればペッチャンコ、大惨事になる」ことなど、
ウチの5歳の娘でもわかります。

次に、
高速道路80km/h以上で走るトラックの風圧って、すごいですよ。
オートバイに乗っているとよくわかります。
左右をコンクリート壁で締め切られたトンネル内では風圧は逃げ場がなく、
「浮いている」天井のコンクリートパネルを押し上げようとします。
トラックが通るたびに、天井のコンクリートパネルはフワフワ上下に、
重くなったり軽くなったり・・・それが30年以上、昼夜問わず・・・
しかも、固定ボルトがケミカルアンカーだったとは・・・




僕の経験上の「推測」でお話しするので、定かではないですが、
このトンネルを設計した当時の技術者は多分、
トンネルに求められる「機能」を設計条件として
さまざまな基準や構造計算から基本計画を立案し、
さらに「機能」はそのままに「工事費が最も安くなる」経済性を追求したはずです。
その結果、このような
「1枚1t以上もあるコンクリートパネルを天井に設置する」構造となったはずです。
(当時はジェットエンジンみたいな巨大扇風機、なかったのかな~?)

土木設計の技術者は、とにかく設計理由・根拠を求められます。
「~~の許容基準をギリギリ満たしますから大丈夫です!」とか、
「~~の基準書の○○ページにも書いてある通り、基準に則って設計していますから・・・」、
「構造計算の結果では強度は満足します、だからOK(大丈夫です)!」ってな具合です。

さらに、もうひとつ、
「~~この設計でいけば工事費はもっとお安くなります(お安くできます)! 」
構造はさておき、発注者が一番注目し、目を見張るところです。
また、
それこそが「土木技術者の腕の見せどころ」であり、
発注者にとっては「うーん、いい設計だ~、さすがですな!」
みたいな風潮があります(多分、建築も同じですね)。
仏頂面な設計者がニヤリと「どや顔」するところです。

ただ、ここに大きな落とし穴があります。
「お安くした設計」は、異常時の余裕や将来性があまり考慮されていない場合があります。
なぜなら、「構造物を極限まで薄く、軽く、そして小さくする」からです。
過度なコストダウンは寿命の低下や最悪は崩壊など重大事故につながります(当然ですね)

パソコンのIT技術が発達した現在、
構造設計や解析計算など小難しい計算は、パソコンソフトで行います。
ものすごく複雑な計算も、ターミネーターが瞬時に答えを出します。

その計算の答えはロボットですから決して間違ってはいませんが、
ゲーム感覚に陥った「技術者の常識」が
大きくバランスを崩して狂ってきます。



1900年代前半に、国鉄で作られた「鉄橋」がいまも現役で使用されています。
計算では計り知れない好条件下で使用されているかもしれませんが、
その造りが本当に安全で信頼のある設計のもとに造られた、
完成度の高い公共構造物であることに間違いはありません。

その場限りで極限を探す、そんな難しい計算ばかりが技術者の英知ではありません。

再度、「技術者の常識」とはなんでしょうか?

経験技術や事例を「基本的技術の尊重」として高度な技術的検討を実施する。
そして、
おじいちゃんやおばあちゃんとおなじ「当たり前」の感覚で、
あるところまできたら思い返して(照査して)みる。

「こんなんでホントに大丈夫?危なくないの?」
これが「技術者の常識」ではないでしょうか?

また、
そこで「技術者の常識」≠「素人一般人の常識」となる場合、
その理由を「経験技術や事例」をふまえて技術的に説明できれば
それこそが「技術士にふさわしい」技術者であると考えます。

いいかえれば、技術士とは、
「高度な科学技術と常識的な感覚を合わせ持つ技術者」であると思います。



土木技術について

2013-01-19 01:03:58 | 土木技術について

僕は現在、いろいろな土木設計をやっていますが、
そのなかで気がついたことがあります。
それは、
土木工事って、小さいころよく遊んだ「お砂場」と同じようなもんだということです。
(とくに土構造物を設計しているときね・・・)

幼稚園児は「お砂場」でお山を作るのが大好きです。
大きくするために、どんどんお砂を天辺に散らしますが、
乾いた砂では、散らしたお砂が天辺からシャラシャラ斜面を落ちるだけで、
なかなか高くなりません。
これが土木設計でいう、「土の持つ力」、土質力学というものが垣間見られます。
土にはそれぞれ性質があり、
そのひとつが(φ)内部摩擦角(せん断抵抗角ともいう)という定数で、
「お砂場」は「砂質土」φ=25~30°(土工指針では30°)となります。
単純にいうと、内部摩擦角度以上、お山の斜面を急にはできません。




「お砂場」に戻ります。
幼稚園児は、お砂だけではお山が高くならないと思うと、
ゾウさんジョウロで雨を降らせます。
こうすると、お山のすそ(斜面)はもっと急勾配にできるようになります。
そして、最適な含水比では、
土(砂)の粒子と粒子が水張力でくっつき、ベタベタします。
このベタベタするのが俗に言う(C)粘着力で、
土が形(勾配)を保とうとする力になります。
そして、この最適な含水比で水を含んだ土の重さを(γ)単位体積重量といいます。
(一般的な土の砂礫土で1m3あたり18KN(1.8t/m3)程度あります)

最適な含水比である程度の粘着力(C)をもったお砂(土)は
本来自身のもつ力を発揮し、崩れない(崩壊しない)ようにがんばります。
結果、
お山が高くできるようになるほか、お山トンネルが深くまで掘れるようになり、
お友達とトンネル内で握手できるようになります。
ただ、飽和状態になると粘着力が薄れバラバラになります。
(ゾウさんジョウロでお水をかけすぎると崩れる(土砂崩れ)のはそのためです)

「お砂場」に戻ります。
ここからはお父さんがお砂遊びに加わります。
雨を降らせてお山を高くし幼稚園児は大喜びですが、
今度はお山の天辺に登ろうと、幼稚園児はお山に載ろうとします。
これを「上載荷重」といい、道路では自動車やトラックがそれにあたります。
土木設計では一般的にトラック(25t輪荷重)を想定して構造・安定計算を実施します。
また、設計するモノにもよりますが、
構造計算では上載荷重を平均化(等分布荷重)し、
25t荷重では1m2あたり1.0t/m2として計算します。

「お砂場」に戻ります。
幼稚園児が載ろうとすると、
お山は当然、崩れますが、お父さんが言います、「崩れないようにしてやるよ」と。
お父さんは一旦、近所の自宅に戻り、新聞紙をもってきてお山を水平にスライスしはじめ、
20cmの高さでお砂を盛っては新聞紙を敷き、またお砂を盛っては何層にも敷きました。
そしたらあら不思議、
お山は垂直に近い斜面勾配でたちあがって高く盛げることができるではありませんか!
園児が上に載っても崩れ(壊れ)にくくなりました。
これが土木では小難しい安定計算(スベリ安定解析)をして設計・築造する、
「補強土壁工法」(ジオテキスタイル)です。




この、お父さんが自慢げに作った「お砂のお山」は、
最先端の土木技術で築造された「第二東名高速道路」や静岡空港のエプロン(滑走路)
にも採用されており、土木設計の盛土築造技術ではかなりの実績と信頼があります。
「補強土壁工法」は、東日本大震災でも壊れなかったと聞いています。

土木設計では、
クーロンさんやランキンさん、テルツァギーさんなど、
過去の偉人たちが自然現象を研究してあみだした小難しい公式を用い、
さまざまな計算をします。
パっと見はsinθ、cosθ、tanθをはじめ、ギリシャ記号の数式がズラズラならんで
さっぱりわかりませんが、所詮は「土」と「木」、すべては経験技術です。

土木設計技術者は、すべてにおいて、その答えの根拠・理由を求められます。
それは計算であり、構造基準・指針であり、さまざまな調査結果報告書であり、
そのなかから苦労して探し出します。
若いころは、計算や基準・指針にとらわれ、周りがまったく見えませんでした。
「ああ聞かれたらどうしよう・・、これ聞かれたらなんて説明しよう・・・」

しかし、少しだけ「設計」を分かって大人になった今は、
エリートぶって小難しい計算や理屈にとらわれることなく、
幼稚園児に戻って「お砂場」をイメージすることが大事だとわかってきました。
「あ、こうすれば壊れる(崩れる)な~」、「こうすると大丈夫なんだ~」など、
幼稚園児と同じ視点で、単純に簡単に、
「常識的」に考えることも重要だと気がつきます。

くどいようですが、土木はすべて経験技術、
「土砂崩れ」や「洪水氾濫」など、自然災害の事象をヒントに
「次は壊れないようにする」という精神から生まれた
「あと付け」理論で確立してきた技術です。

日本人は昔から災害が起きるたび、「なぜ壊れたか」を考えて
「こうすればいいんじゃないか?」をノートに記し、それを蓄積してきました。
その真面目さと勤勉さで土木技術世界一になった(なれた)のです・・・・

日本の誇れる技術はハイブリッド車だけではありません。
土木(建築)技術も最先端、世界一なんです!!

そう、土木技術のすべては「お砂場」を考えることから始まっている
といっても過言ではない(と思います)