タバコ想定問答集8

2007-10-24 23:19:32 | Weblog
「一人当たりの喫煙本数」と「肺がん死亡率」の関係




JTを斬る。(2006-04-15)
「日本における喫煙者率と肺がん死亡率の推移」(JTのページにリンクしています)のまやかしを暴く。

■発端
JTによれば、「肺がん死亡率の動向は喫煙者率の推移とは多くの点で一致しません」とのことだ。

なるほど、一見正当性があるようにみえる。この比較はJTが持ち出したものである。



■疑問
しかし「喫煙率」と「肺がん死亡率」を直接比較して果たして意味があるのだろうか?
まやかしではなかろうか?何か変である。
通常、毒物の摂取率(摂取した人口率)とそれによる死亡率は直接の関係がない(間接的にはある)。
直接関係するのは「毒物の摂取量」と「死亡率」である。
毒物においては「致死量」が知られており、「毒物の摂取量」が多ければ多いほど、病気あるいは死につながる。
これは誰もが知るところであり一般常識である。
どんなに「毒物の摂取率」が高くても(ほとんどの人が摂取していても)、「毒物の摂取量」が致死量よりはるかに微量であれば「死亡率」は低い。
逆にたとえ喫煙率が低くとも、「一人当たりの喫煙本数」
つまりは「一人当たりのタバコ毒物摂取量(喫煙量)」が増えれば、「肺がん死亡率」は増えるはずだ。
放射線に例えるなら、100%の人が自然界から微量の放射線を浴びているが(自然放射線被曝率=100%)、一生浴びても問題ない(自然放射線死亡率=0%)。
ところが致死量の放射線を浴びれば、当然死に至る。JTの理論に従うなら、死因の100%が放射線でなければならない。
自然放射線被曝率(喫煙率に相当)と自然放射線死亡率(肺がん死亡率に相当)の表をみれば、比較に意味がないことがわかるであろう。

「喫煙率」と「肺がん死亡率」に因果関係はない。比較しても意味がない。因果関係がないので、関係性が見られないのは当然のことである。

タバコの煙に毒の「即効性」はない。今日喫煙したら、今日死ぬといったことはない。
これも重要な点だ。「原因」と「結果」には時間差がある。
このタイムラグを考慮に入れなければならない。

結局、「喫煙率(毒物の摂取率)」と「肺がん死亡率」を比較すること自体が誤りであり、
本来は「一人当たりの喫煙本数(毒物の摂取量)」と「肺がん死亡率」を比較しなければならない。

「一人当たりの喫煙本数」と「肺がん死亡率」にこそ因果関係がある。

「致死量」の観点からみれば生涯にタバコの毒物をどれだけ摂取したか、その総量が問題である。
そんな疑問から、調査してみた。


■比較調査
「一人当たりの年間喫煙本数(Per capita cigarette consumption)」
を厚生労働省で見つけることができた。

ただ、この数値はかなり大雑把である。
「年間販売総本数」を単純に「15歳以上の人口」で割っているが、本来は「20歳以上」の「喫煙者」に絞るべきである。
なぜなら非喫煙者はタバコを消費しない。非喫煙者である約7割(2000年度)が計算に含まれており、誤差が大きすぎる。
しかも統計上、肺がん患者の約9割が喫煙者(元喫煙者を含む)である。喫煙者に絞らなければ正確ではない。
そこで、「喫煙率」を考慮して再計算することにした。

  • 本来は男女別に比較すべきであるが、そもそも販売本数が男女別の統計ではないため区別できない。

  • 残念ながら、年齢別の人口統計を入手できないため、20歳以上の人口に絞りこむことができない。

  • しかし、15歳以上の人口データを用いても大きな誤差にはならないであろう。

  • この15歳以上という人口統計は本来「労働人口」という目的で収集されている。

  • 幸いなことに男女の人口比はほぼ半分であるため、男女平均喫煙率は計算できる。



引用したデータは次の通りである。
















肺がん死亡率(人口十万人あたり)年間販売総本数一人当たりの消費本数15歳以上人口喫煙率
昭和/平成(億本)(年間)(1000人)男%女%男女平均%
19502541652.98-53,767---
19553082976.46-59,476---
1960351441227.60-65,352---
1965401861714.49478573,10982.315.749
1970452282221.32604878,89777.515.646.55
1975502792898.42749884,67276.215.145.65
19805535113039.74803089,48270.214.442.3
19856042123032.00815494,97464.613.739.15
1990245133220.008541100,79960.514.337.4
1995747143347.008580105,42658.815.237
20001246133245.008923108,22553.513.733.6



  • 2000年度の一日当たりの喫煙本数は8923本/365日=24.4本である。厚生労働省、平成15年国民健康・栄養調査報告によれば、男性の喫煙本数は平均22.5本/日、女性は14.8本/日であり、妥当な値といえる。

  • 正確な喫煙率の統計が取られ始めたのは昭和40年からである。

  • 2000年度は35年前より約2倍の喫煙本数に増えていることがわかる。

  • もっとも重要なことは喫煙本数は年々減どころか増えている。



喫煙率は減っていても喫煙本数は増えている。


これをグラフにした。

このままのデータで相関係数を計算してみた。非常に高い値を示している。
※相関係数は関係ない事象でも計算できる。しかし喫煙者の肺からタバコ物質が検出され、明らかに関係ある事象である。

  • 93%(男)

  • 95%(女)



JTによれば、「喫煙の影響が現れるには20-30年程度のタイムラグ」があるそうだ。
確かに時差が見られるが、JTの言っているような長期間ではなく10年程度のようだ。
そこで10年のタイムラグを考慮してグラフにした。

2つのデータ系列はレンジが異なるにも関わらず、みごとな一致が見られる。
そこで相関係数を計算してみた。

  • 99%(男)

  • 96%(女)


異なるタイムラグで相関係数を計算してみたが、やはり10年でもっとも高い値を示す。(補正しなくとも90%以上の高い値を示す。)
データからは10年というタイムラグが浮かび上がってきた。
天気予報に例えるなら、99%の降水確率と考えればよい。99% 関係があるといってよい。
平均寿命が伸びるということは、人口が横ばい、タバコ販売量(ほぼ消費量)が横ばい、喫煙率が下がっている状況では、
一人当たりの「生涯(年間ではない)」喫煙本数が増えることを意味する。



消費量番付によれば日本のタバコ消費量は世界的にみても高く、トップ10に入る。なおこのグラフは喫煙率を考慮されていない。












順位一人当たりの年間消費本数
#1ギリシャ4313
#2ハンガリー3265
#3クウェート3062
#4日本3023
#5スペイン2779
#6マルタ2668
#7ブルガリア2574
#8ベラルーシ2571
#9ベルギー2428
#10トルコ2394

日本では喫煙率にばかりとらわれていて、もっとも重要なタバコ消費量削減に失敗している。



■結論
一人当たりの喫煙本数が増えているので、肺がん死亡率が増える。
毒物の摂取量が増えれば死亡率は増える。当たり前の結果である。


■考察
昭和初期は、現在より平均寿命(50歳)が短く、結核など国民病とも呼ばれる病気が深刻であったため、
潜在的にあった、タバコによる肺がん死亡率はあまり表面化することがなかった。簡単に言えば、肺がんになる前に結核で死亡した。
一人当たりの喫煙本数も少なく、個人差はあるものの、肺がん発病にいたるまでの摂取量にはなかなか到達できなかった。
ところが現在においては、平均寿命が延び、結核の対策もなされたため、潜在的にあった
発病までに時間のかかるタバコによる肺がん死亡率が表面化してきたとみてよかろう。
一人当たりの喫煙本数が増え、平均寿命が延びたことにより、肺がん発病にいたるまでの摂取量に達する機会が増えてきたといえよう。


■日本人の死因
日本人は毎年約100万人死亡する。死因はがんが約30%、心疾患が約15%、脳血管疾患が約10%、肺炎が約10%、その他である。
がんのうち肺がん死亡率がもっとも高い。
そして男性の肺がん死亡率は女性の肺がん死亡率の3倍も高い。これが意味することは大きい。
男女の肺に大きな違いはない。男性だけに肺があって、女性に肺がないということもない。


  • 大気汚染が肺がんの「主な」原因ではない。もし大気汚染が主な原因なら、男女の肺がん死亡率は同じはずである。
    男性の肺が大気汚染に弱く、女性の肺が大気汚染に強いということはない。

  • 自然発生的ながんが肺がんの「主な」原因ではない。もし自然発生的ながんが主な原因なら、男女の肺がん死亡率は同じはずである。
    男性の自然発生がんが多く、女性の自然発生がんが少ないということはない。



喫煙をしなくても自然にがんは発生するが、男女でこれほど肺がん死亡率に差が見られるということは人工的な原因がある。
賢明な方ならそれが何かわかるであろう。



■タバコと肺がんの関係性に疑問を感じない姿勢
未だに、タバコと肺がんの関係性を疑おうとしない意見をみかける。(認めようとしなくてもよい、疑おうとしない姿勢そのものが問題である)
路上に人が倒れ、引きずられたあとや、車の破片が散らばっていたら、皆さんはまず何を疑うであろうか?
確かに心筋梗塞や脳梗塞で倒れた可能性もあるが、これらの状況証拠からまずはじめに交通事故を疑うのが一般的であろう。
まずは交通事故の可能性を疑い、その可能性がないと判明してから他の可能性を考えるはずである。
喫煙者の肺がん患者の肺からは必ずといっていいほどタバコの煙物質が見つかる。タバコの煙が肺に状況証拠として残されている。
この状況証拠からまず疑うべき原因はタバコであろう。
これを否定する方は先の交通事故の状況証拠をみても、まずはじめに交通事故を疑わない特異な人である。


■備考
[肺がんの原因]
なお、大気汚染、アスベストなども肺がんの原因の一部である。それを否定するつもりはない。
さまざまな原因が総合的に関わって肺がんを発病するのであって、タバコの原因割合が非常に大きいということである。
相関係数がそれを示している。(統計によれば肺がん患者の9割が喫煙者である。)
もし、大気汚染の原因割合が大きいのであれば、男性と女性の肺がん割合はあまり変わらないはずである。
しかし、実際には大きな差が見受けられる。
女性の肺だけが、大気汚染に強いなどということは聞いたことがない。
賢明な方ならこの差が何からもたらされるものか判断できるであろう。

[タイムラグ]
喫煙の害に即効性はない。今日喫煙したからといって今日死ぬものではない。
したがって今「喫煙率」が下がったのに、今の「肺がん死亡率」が下がらないから関係がないというのは浅はかな考えである。
タイムラグを考慮しなければならない。
花粉アレルギーやハウスシック症候群のように、長い間、原因物質にさらされ続け、ある量を越えると発症する。
そもそも「喫煙率」ではなく「喫煙量」と比較しなければならない。


[公衆衛生の基本]
また、男女の喫煙率の差がみごとに肺がん死亡率の差に現れており、関係がないわけがない。
喫煙者の肺からはタバコの煙物質がみつかっており、交通事故でいえば衝突事故の痕跡が残っている。
公衆衛生の基本は原因が明確(確実に)にわからずとも、疑いがあれば予防(規制)するのが基本である。
疑いのあるものを避けようとするのは、「人間の本能」であり、憲法以前に人間に与えられた「自然権」である。
逆に、関係がないことが証明されない限り、規制すべきである。


[自由の権利]
たとえ、個人の自由の権利であっても、憲法上、公衆衛生に反する権利の濫用は許されていない。
個人の嗜好であっても公衆衛生に反すれば、個人の自由は制限される。
考えてもみてほしい。車を運転するのも個人の自由だからといって、他人を怪我させるような自由の権利濫用まで許していない。

憲法第十二条「自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止」
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。
又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

憲法第十三条「個人の尊重・幸福の追求権・公共の福祉」
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、
公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。



[60歳以上の喫煙率]
JTでは60歳を越えると喫煙率が下がるのは、定年と関係あるのではと思わせるような記述があるが、それも変である。
そもそも、喫煙者の寿命は非喫煙者にくらべて5年から15年短いことが知られている。
それはデータにもあらわれている。
厚生労働省、「肺がんの年齢階級別死亡率の推移」(PDF)

男性の平均寿命は78歳前後であり、60歳以上の喫煙者は生きながらえることができず、喫煙者が減ることから喫煙率が小さくなる。
自然淘汰されるため、60歳以上の喫煙率が小さいと考えるのがもっとも自然であろう。








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