Vol.1 Vol.2 Vol.3 Vol.4
*****
月白の光が、驚いた健一郎さんの顔を照らした。その光に照らされた髪は青というより碧く、美しいなぁなんてぼんやり考えていた。
「自分が何を言っているか、分かってる?」
一呼吸の間をおいて、彼が言葉をのせた。
私はただ頷く。
「吸血鬼になるつもり?」
「……はい」
もう一度頷いた。あなたと同じものになりたいから。
健一郎さんが溜息を一つ、深く吐いた。
「元には戻れないんだよ」
「分かってます」
「じゃ、何で?」
「貴方と生きていたいから」
私は答えを迷わなかった。
「それが永遠に続くんだ。君は、それがどういうことなのかわかってない」
彼が私を見つめる。その瞳は、突飛なことを言い出した私への驚きと同情と……懇願だった。
「ううん、分かってるよ」
私は彼のこめかみに触れ、その碧い髪に指を絡ませる。
「……私には別れを悲しむような人もいない。私は、今まで一人だったの。ううん、一人ですらいなかった。私は生きていなかった。今、貴方のおかげで私は生きているの」
彼は俯いて、私が紡ぐ言葉を聞いていた。私は彼の頭をそのまま引き寄せ、胸に彼を抱く。
「……もう一人はいや。貴方を一人にするのもいやなの。これで貴方の孤独を終わらせてあげられる」
彼は目を瞑り、おでこを私の胸に委ねてしばらくそのままにしていた。その重みが心地よくて、私はそのまま彼の髪を撫でていた。
「ねえ」
健一郎さんが私を見上げる。背の高い彼に見上げられるのは初めてのことで、甘えた声と合わさって、なんだかとても彼が可愛らしかった。
「ん?」
「知ってる? 吸血鬼にも性欲はあるんだ」
目尻に皺を寄せた、私の大好きな彼の微笑み。
「ふふ。さっき聞いたわ」
自然と体勢が変わり、もう私は彼の下に。今度は彼が私の髪を撫でる。彼が私を見つめる瞳にはもう先ほどの混乱や懇願はなく、あるのはただ濡れかかる妖艶。
「ずっとこうしたかったんだ。我慢できなくなるから、なるべく会わないようにしてたのに」
彼はゆっくりとそう言いながら、私のブラウスのボタンを一番下まで丁寧に外していった。
「私がしたかったの」
わざと軽い言い方をした私に、彼は愛おしそうな視線を向け、頬を撫でる。それがくすぐったくて堪らなかった。
「ねぇ、吸血鬼でもキスはできるの?」
「どうだろ、試してみようか?」
おどけて聞く私に向かって、彼は片方の口角を上げた。そこには牙は見えなかった。便利な牙だな、なんて考えてると、そのまま健一郎さんの顔が近づいてきて、私たちははじめてのキスをした。
食料としてではなく、私自身を求めてくれる彼の舌の動きに、私はすぐに夢中になった。
月夜に照らされ、重なる二人の影。
彼が私の名前を何度も呼ぶ。その度に私の子宮が収縮し、彼が苦しそうな声を上げた。
「けんちっ、ろっ、さんっ」
私が彼の名前を呼ぶ、その度に彼が大きく脈打ち、私の中を支配した。
何度目かの絶頂の後、彼が果てるとき、私は同時に意識を手放した。
*****
「……じょ……ぶ? 大丈夫?」
彼の声が遠くで聞こえる。うっすら目を開けると彼の残像がぼやけ歪む。それは私がガタガタと震えているからだった。
「うっ」
声が出せない。喉が焼けるように熱い。
「落ち着いて」
健一郎さんに抱き締められた。
「ううっ」
頭が割れるように痛く、身体中の全ての血液が脳と視神経に向かって逆流していく。口の中でなにかが動き回っていて言葉を発することができない。口元に手をやると、牙が飛び出しているのが分かった。
「落ち着くんだ。大丈夫だから」
私を抱き締める健一郎さんの腕の力が強まる。
苦しい、苦しいよ、助けて、健一郎さん。その声が出ない。
そのとき、彼が私の後頭部を支え、自分の首元にあてがった。
「そのまま牙を立てろ」
何を言っているかわからなかった。
「大丈夫だから」
彼が私の背中をさすりながら言う。
「深呼吸して。そのまま牙を立てろ。楽になる」
遠退きそうな意識の中、私はその彼の言葉に素直に従った。未知の世界の中、私には彼だけが全てで、彼に縋ることしかできなかった。
というより、ただ本能で、血を欲していたのかもしれない。
無我夢中で彼の血を吸っていた……らしい。もう、記憶がなかったから……
気が付くと、身体の苦しみも熱さもなく、ただ、目の前には彼が倒れていて……無意識に口元を拭うと、手がべったりと緋色に染まった。
……彼の……血。
「キャーーーーッ!」
何が起こっているか、わからなかった。
「……だ、い、じょうぶって、言った、ろ」
真っ青な顔の彼が私に手を差し伸べた。私は駆け寄り、その彼の手を取った。
「健一郎さん! 健一郎さんっ! やだ! 私、何を!」
どうして彼が倒れているの? 一体何が起きているの? 私は何をしたの?
「……いいんだ。……僕が……そうさせたんだから」
私の頬を撫でる彼の力が段々と弱まる。
「独りにしないで。二人で生きていこうって……永遠に続くって……お願いだから」
「……ごめん。君を手放してあげることも、君と一緒に生きていくこともできなかった。僕は弱いから……君に、なれるなら、僕は、幸せだ」
彼は最後の力を振り絞り、目尻に皺を寄せた。
お願い、今、ここで私の大好きな笑顔を向けないで。
「……これで……彼女のところに……ありがとう」
最後にその言葉を残し、彼は消えた。跡形もなく。屍すら残してはくれなかった。
私は、ただ茫然と立ち尽くすだけだった。
*****
こうして私は吸血鬼となった。独りきりの、哀れで滑稽な吸血鬼。
私は今すぐに彼のところに行きたかった。彼以外、何も受け入れたくなかった。誰も襲わなければ飢えで死ぬことができる。でもそれは想像以上に辛かった。
何日も我慢を重ね、最後には「これで彼のところにいける」と考えながら意識を手放すのに、次に目にするのは首から壊死が始まった屍なのだ。そう、今日のように……
珍しい色のスカビオサが風に揺れている。青や紫ではなく、綺麗なスカーレット。まるで、隣に転がっている屍から流れ落ちる血を吸って生き生きと咲いているような、大きくまるっとして少しくすんだ赤色の花。
私はその花を無造作に引きちぎった。血まみれの指に赤い花。私はその花をぼんやりと見つめる。ポタリと落ちるのは屍血なのか花びらなのか。
そして、また私は一人で彷徨う。碧い髪を探しながら。
あなたはこうやって一人で生きてきたのね。ずっと一人でこうやって彷徨って耐えてきたのね。
あの最後の言葉は私を絶望の淵に落とした。彼は初めからそのつもりで私を選んだのだ。優しすぎるヴァンパイアはただ弱くてずるい人だった。
それでも、それが、私の生きる本当の意味だったのかもしれない。
スカビオサの花言葉は”I have lost all." ――私は全てを失った。
衝動的に私はその真っ赤な花びらを口にした。むしゃむしゃ貪った。全てを私の中に入れた。私の中に貴方がいる。貴方の孤独も私の孤独も、この私の中にいる。私は貴方を決して一人にしない。
でも、でもね……辛いよ。一人は辛いよ、健一郎さん。
誰か、誰か私を助けて。
End
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「大丈夫?」
目黒川沿いにある古いアパート。青い髪の彼が、ドアに背をもたれて仕事帰りの私を待っていた。
私のその問いに答える様子もなく、俯いたままの彼。その長い前髪が顔を隠し、表情が読み取れない。ただ、その下からのぞく頬は血の気がなく、今にも消えていなくなってしまいそうだ。
「……冷たい」
彼の頬に手をあてる。
「……暖かい」
彼が自分の手を添えた。
「すぐ開けるから」
鞄からアパートの鍵を取り出し、ドアを開ける。
「……ごめん」
彼は、立っているのがやっとといった様子で私の肩に頭を預けた。そのまま彼を支えながら部屋に入り、リビングのソファに座らせる。
ソファに沈みこみ、深くため息をつく愛おしい人。
「……綺麗だ」
ふと、彼がローテーブルの上に置いている花瓶を指差した。花瓶に生けていた数本の薔薇。青みがかった薄紫。
「珍しい色だね」
「BLUE MOONっていうの」
「青い月……か。君を見つけた時も今夜と同じ青い月だった」
この薔薇を見て、私と同じことを思い出してくれたのがとても嬉しかった。私が彼に囚われた、あの瞬間の青白い月の光を。そして、今夜の月も同じ光で彼を照らしている。
「でもこの薔薇は青というより薄紫だね」
目尻に皺を寄せてそこまで言うと、彼はまた深く息を吐いた。数回の呼吸とともに肩が上下する。
「そんなに辛くなる前に、もっと早く来てくれたらいいのに」
私は、彼がだらんと力なく膝に投げている腕にそっと触れた。
彼は私の言葉に顔を上げた。そして、そのオリエンタルなアーモンド型の目に宿る艶やかな琥珀色の瞳で、真っ直ぐに私を見る。
「……でも、僕のタガが外れて、君を失う訳にはいかない」
確かに、彼が私を食し続けたら、私はすぐに死んでしまうであろう。彼のその言葉は、私を喜ばせ、そして悲しませる。私を大事にすることは、私を欲しないことであるから。
それでも、私は、もっと私を求めてほしかった。最後まで私を貪って欲しかった。
そう、私は彼に見つけてもらって救われたのだ。あの日から、私はもうただの物体ではない。俯瞰から見ている私はもういない。私には血を通わせて生きていく意味がある。「彼の食糧」という大切な存在意義。私が彼の血となり、肉となる悦び。
それなのに……優しすぎる吸血鬼。
「私は大丈夫だから」
そう呟きながら、ブラウスのボタンを何個か外し、露わになった肩を彼の前に差し出した。
「……ありがとう」
彼は、壊れ物を扱うようにそっと柔らかく私の肩に手を置いた。青い髪が私の頬を掠めていく。そして、ゆっくりと首に口をつけ、牙を立てた。
琥珀色だった彼の瞳が、緋色に変わり、妖しく光る。
私は、その鈍い痛みに集中するために、目を閉じた。彼は、味わうようにゆっくりと私の血液を吸っていく。首に感じる彼の唇は柔らかく、徐々に暖かくなり、それに呼応して私の身体は少しずつ温度を失っていく。遠退きそうになる意識で、私はまた、まだ生きているんだと実感するのだ。
「……ごめん」
また謝る彼。その言葉と痛みを感じなくなった私の首が、恍惚の時間の終わりを告げる。彼の瞳はもういつもの奥深い琥珀色だった。
私は無言で首を横に振った。
「……冷たくなった」
彼は私の頬に右手を添え、悲しそうに呟く。
「……暖かくなった」
私は彼の手に自分の手を重ね、笑顔を見せた。
彼の白いシャツから覗く綺麗な彼の鎖骨。その上には細身のゴールドチェーンのクロスペンダント。そのチェーンからクロスにかけてそっと右手でなぞってみる。
「あぁ、これ? 魔除け」
彼は軽く微笑みながら答えた。左手でそのクロスを触るのは、無意識なのであろう、いつもの彼の癖だ。それと同時に少し寂しそうな顔をするのも。
「吸血鬼なのに?」
私はわざと可笑しそうに笑った。
「可笑しいよね、吸血鬼にこんなものを」
彼もクスリと笑った。またクロスを触りながら。
「その、『こんなもの』を送ってくれた人は、今どこに?」
外していたブラウスのボタンをかけながら、努めてさりげなく尋ねる私。彼は一瞬目を大きく見開いたが、すぐにまた微笑に戻った。
「あぁ。聞いて楽しいものじゃないよ」
困ったように笑う彼。
「愛してたの?」
「そう……なのかな」
「死んでしまったの?」
彼と私たちは寿命が違うから、単純にそう思った。
「うん……僕が殺した」
それは思ってもない答えだった。
「殺した? 吸い付くしたの?」
「半分正解」
彼はおどけたように両肩を上げた。
「なぜ? そんなに独りになるのが苦手な貴方が?」
眩暈のするくらい長い間独りでいた彼が一度寄り添ってくれるものを見つけたら、自分から絶対に離すことはないだろう。それは、私を大切に扱ってくれることからも想像するに容易いことだった。
一瞬だけ彼の片眉が上がったかと思うと、すぐに自嘲的な笑みに変わった。
「僕が欲望に任せて抱いたからね」
「抱いた?」
「あぁ。吸血鬼にも性欲というものはあるらしいよ。 それが彼女にどんな末路をもたらすかわかっていたのにね」
彼の透き通る琥珀色の瞳が濁った。
「末路って?」
「……僕の体液を受けた彼女の身体は……吸血鬼になった」
吸血鬼になる?
「え? 死ぬんじゃなくて? あなたと同じ吸血鬼に?」
「あぁ」
「じゃ、ずっと、永遠に、あなたと一緒に過ごせるってことじゃないの?」
私の少し上ずった声がおかしかったのか、彼が不思議そうな顔をした。
「そうだね。そのつもりだった。でも……」
「でも?」
「でも、その永遠が彼女には耐えられなくなったんだ。親や愛していた人が先に死んでいく。自分が生きていくには、誰かを犠牲にしていかなければならない。それは、彼女が想像していたよりもずっと苦痛だった」
「それで?」
「……死を選んだよ」
彼が目を伏せる。クロスを触る手が震えた。
彼を独り残して逝くなんて。自分が苦しいと思っていることをずっと耐えて生きている彼を。会ったことのない女性が猛烈に憎かった。
それと同時に、単純に彼女に嫉妬した。彼に愛され、彼のために死に、彼の心で生き続ける彼女。
いや、それは憧れだったのかもしれない。彼とひとつになれたら彼と同じものになれる……彼を独りにしなくても済む……思いもよらなかった、そんな素敵なこと。
テーブルには大きく咲き零れているBLUE MOON。花言葉は「不可能を可能に」
私はその薔薇を花瓶から一輪を手に取り、自身の左手首にあてがった。
何をしているのかと、片眉をあげて訝しげに私を見る彼。
棘のある茎を支え、少し力を入れると手首に鈍い痛みを覚える。声を上げることなくそのまま手前に引くと、血が滲んできた。
彼の瞳と同じ緋色の線が伸びていく。
私はその手をそのまま彼に差し出した。緋色だった雫が空気に触れ色を変え、薄紫の花弁に零れ落ちていく。
彼は動かず、真紅に染まっていく薔薇をただ見つめているだけだった。
「……私を、抱いてくれませんか? 健一郎さん……」
私は貴方を独りにはしない。
End
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――私は、人を愛するという感覚がわからない。
いつも私とは別の人間が俯瞰で見ている感覚。いや、俯瞰で見ている方が私自身であり、動いてる人間はどこか違う。何かが違う。それは人というより動く物体。
だからと言って感情がないわけではない。痛いし、悲しいし、寂しいし、嬉しい。子どもや子犬はちゃんとかわいい。
――こうして、満開の桜を見て綺麗と感じる感覚も持っているのに。
それでも……自分に対する実感がない。愛が分からない。きっとこの感覚は誰にも分かってもらえないであろう。私は半ば人生を諦めていた。
――貴方に会うまでは。
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4月。桜も満開を過ぎようとしており、はらはらと川面に花びらを落としていく目黒川。この季節、日中は辟易としてしまうような人込みだが、さすがに日付も変わりそうな時間だと歩いている人もいない。
私は、この時間帯にここを歩くのが好きだ。ライトアップもされていない暗い通りだが、花自身が持つ白い輝きと月明かり、それを映す水面で仄かに桜が浮きだっている。
そのぼんやりとした美しい白を眺めながら、私はゆっくりと歩を進めていた。愛でていたのは桜なのか、それとも桜を愛でている私なのか。そんな答えのない、出す必要もないことを考えながら、「私」という物体を動かしていた。
暫く歩いていると、私の目線の少し先、ひときわ大きな桜の下にある人影が見えた。
長身でスタイルのよい男性。白いシャツ、黒いロングジャケット、黒い細身のパンツというシンプルな服装が、シルエットの美しさを更に強調させる。
モノクロの世界の中、その人の髪だけが青という「色」を放つ。
枝から零れ落ちるように垂れて咲いている桜を手に取るその人影の男性は、そのまま、桜の花にそっと口づけた。それが貴方だった。
――夜半の嵐が吹き、散り始めた花びらたちが貴方の周りに纏わると、私の中の時間(とき)が止まる。
桜を手に取ったまま、貴方はゆっくりとこちらに顔を向けた。私を見て、なぜか笑顔を浮かべている。知らない人間がじっと自分を見ているなんて気持ち悪いはずなのに、そんなことにはお構いなしのよう。それとも、こんなに麗しい容姿を持っている人間は、他人から見つめられているのに慣れているのだろうか。
目尻に刻まれた皺をそのままにして、貴方はゆっくりとこちらに近づいてくる。
「……見つけた」
いつの間にか私の目の前に来ていた貴方。今度は真顔になって私の顔を見つめた。血が通っていないような真っ白な顔で、黙って私の左頬に優しく手を添える。その細くて長い指は驚くほど冷たくて、私の肩は心臓とともに少し跳ねた。
そんな私の小さな驚きに、貴方は少し困ったようにまた微笑んで、
「ごめん」
と小さく謝った。でも、私は何故謝られているのかが分からない。見知らぬ男性に触られている、という恐怖は全くなかった。
――私は、もうすでに貴方に囚われていたから。
漆黒の闇の中。見上げると、背の高い貴方の美しい顔越しに蒼白い月の光。舞い落ちる薄桜。貴方は苦しそうな息遣いになり、私に段々と近づいて来て……
そして、貴方の右手から力が抜け落ち、青髪が頬を掠め、私の肩に頭がのせられた。
「ごめん」
もう一度貴方が言う。呼吸とともに肩が大きく上下している。
「このまま朽ちようとも思ったけど……見つけてしまった……君を……道連れにしてごめん」
貴方の右手が私の肩を撫で上げると、ブラウスの襟に手をかけた。一番上に留まっていたボタンが千切れ、露わになった首元にひとひらの花びらが舞い降りる。
冷たくなった貴方の唇がそこに押し付けられたとき、私はそっと目を閉じた。
そのとき微かに感じた肌を抉るような痛みには気づかない振りをした。というより、寧ろそれを喜んで受け入れた。
それは私がようやく感じることのできた「生きている証」だったから。
――これが、私が美しくて優しすぎる吸血鬼に囚われた瞬間。
End
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