徒然なるままに・・・

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【映画感想・ラ行】 ランド・オブ・プレンティ ★★★

2005-11-05 | 【映画感想・ラ行】
ストーリー:
アフリカ、イスラエルで育ったラナは10年ぶりにアメリカに帰ってきた。
彼女は心の中で叫んでいた。「神様、アメリカに返してくれて感謝します」。
ラナは、亡き母から、伯父のポールに手紙を渡すよう託されていたのだった。
しかし、ロサンゼルスに降り立ち、
飢えで苦しむホームレスの人々を見ると、
ラナはホームレスの支援活動を始める。
父が宣教師であるラナは、ダウンタウンの伝道所に住み、
ボランティアをしながら、一方で、ポールを探した。
ポールは、母国警備員と偽り、友達や家族と連絡を絶っていたのだった。
(goo映画より引用)

出演:
ミシェル・ウイリアムズ、ジョン・ディール、ウェンデル・ピアース、
リチャード・エドソン

監督:
ヴィム・ヴェンダース

9・11以降のアメリカの姿。ありのままのアメリカ。
ヴェンダースが描こうとしたのは、生のアメリカの姿だ。
原題の『豊かな国』。映画を観ていると何たる皮肉と思わされる。

主人公の2人は、各々が抱いているアメリカのイメージに大きなギャップを抱く。
ベトナム戦争の後遺症に苦しめられているポールは、
自由がなくなったと思っている。
彼の暮らすロサンジェルスは、
自由どころかアメリカのイメージを覆す姿を見せている。
街には、多種多彩な人種が住み、明るい太陽の日差しとは異なり、
暮らす人々は、職もなく食べるものもないホームレスの姿ばかりだ。
そして、人々はあのテロの再発するのではないかと、
アラブ系人種を警戒している。
ポールも実際には、アラブ人の周辺を追跡し、
テロの根源がないか探しているのだ。

一方、おじであるポールを探しにイスラエルから戻ってくるラナ。
アメリカから遠く離れていたのだが、
アメリカへのイメージは僕らと一緒だと思う。
即ち、自由で豊かで人々に活気があるというものだと思う。
しかし、彼女が目にするのは、ポールと同様の光景である。
ラナが暮らしてきたアフリカ、
イスラエルの混沌とした街のそれと何ら変わりないと思う。
マス・メディアでさえ、アメリカの現実を映し出さないだけに、
ラナが直面したアメリカの真の姿は、衝撃を受けているに違いない。

ラナが接するホームレスの人々たち。彼女はボランティアとして活動する。
その中で、食事配給の場でフレンドリーに接していると、
ある黒人から「友人でもないのに」、
「お前が名前を知ってどうする」と言われてしまう。
これも今のアメリカの姿ではないか。即ち、他者を受容しない姿勢だ。
協調しない、独善的にことを進めてしまう。己のことしか考えない。
マイケル・ムーアが、
『華氏911』や『ボウリング・コロンバイン』
で描いてきた内容そのものだ。

では、今のアメリカに何が必要か。それは受け入れるという心。
ポールとラナが、中東人殺人事件の理由を得るため、
テロの可能性を探るための旅を続けるのだが、
結局、中東人殺人はゆきずりであり、テロの可能性も結局なかった。
ポールが血眼で追跡したのは、
彼も他人を受け入れられない恐怖心からの行動だったのだ。
アメリカを守りたい。それは、他者を排除することだと考えている。
典型的なアメリカ人であるポールを海外で暮らしていたラナが諭す言葉が象徴的。
「報復を犠牲者は喜ばない。犠牲者達の声を聞くこと」だと。
そして、NYのグラウンド・ゼロへ向かうで彼らはどんな声を聞いたのだろうか。
ポールの心の傷は癒されるに違いない。必要なことを知ったから。

ドイツ人のヴィム・ヴェンダース変化の必要性を訴える映画だと語る。
正にその通りで、世界の番人であるアメリカは、変化が必要だ。
変化が必要なことをポールとラナのようにアメリカが気づく日は来るのだろうか?
ラストで流れる『ランド・オブ・プレンティー』の歌詞がそのまま物語っている。

『ザ・ランド・オブ・プレンティー』
作詞・作曲:レナード・コーエン、シャロン・ロビンソン
ぼくが立っていなければいけないところに

立つ勇気がない。

救いの手を差し伸べる気質も

もち合わせていない

誰がぼくをここに遣わしたのか分からない

声をあげて祈るように

この豊かな国の光がいつの日か

真実を照らし出しますように


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2 コメント

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いまだに (あかん隊)
2005-11-10 00:38:21
この映画を思い出し、サントラ盤を聴き…。

胸が締め付けられるような思いになります。どうしても涙ぐんでしまう。「人」も「国」も、哀しい、と。

それでも、この「憎しみの連鎖」をどこかで、なんからの方法で断ち切らなければ、だれも救われない…ヴェンダース監督は、おっしゃっていたように思います。(たまたま舞台挨拶に臨場できたのです)

マイケル・ムーア監督のように、自分は「器用じゃない」から…と。TBありがとうございました。
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コメントありがとうございます。 (kazuki-kt)
2005-11-27 10:09:16
あかん隊さん、コメントありがとうございます。



映画内の音楽の使い方がとても上手いですね。

ポイントになる歌には、字幕がちゃんと付いてますし。

逆に『エリザベスタウン』には、それがなく、

歌でストーリーを語る映画なのに何事だ!と思った次第です。



「憎しみの連鎖」を断ち切ること。

それはアメリカ自身が断ち切ることへの必要性を知ることだと思います。

出来るのか否かが、鍵ですよね。



マイケル・ムーアと違うジワジワと印象付けられる方が、

心に残ると思いますよ。いい映画でした。 
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